文献情報
文献番号
202126006A
報告書区分
総括
研究課題名
化審法における監視化学物質・優先評価化学物質の長期毒性評価スキームの創出に関する研究
課題番号
20KD1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
鰐渕 英機(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 周五(大阪市立大学大学院医学研究科)
- 豊田 武士(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
- 魏 民(大阪市立大学 大学院医学研究科)
- 横平 政直(香川大学 医学部 医学教育学講座)
- 加藤 寛之(名古屋市立大学 大学院医学研究科実験病態病理学)
- 戸塚 ゆ加里(日本大学薬学部 環境衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化審法の規制区分「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」には、スクリーニング毒性試験の結果から健康影響の懸念を評価されているものの、慢性毒性や発がん性が不明の物質が多く存在する。しかし、それらの物質を全て長期試験により検討することは、莫大な費用や時間等を必要とするため困難である。そこで、化学物質の発がん性を迅速に、かつ高精度に評価できる試験法及び試験スキームの確立は、社会的にも経済的にも非常に重要であり、国民生活の安全・安心を保証する。
本研究では化学物質の標的となる臓器の大半は肝臓であることに着目し、肝発がん性を短期で高精度に検証できるシステムを確立するとともに、問題となる「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」について発がん性評価を行う。5研究施設の協同体制にて下記の研究を実施する。我々が以前に開発した「遺伝子セットを用いた遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法」及び「DNAアダクトーム解析による遺伝毒性評価」はいずれも正答率が9割を超える高精度試験系であるが、「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」を含め化学物質数を増やし、より信頼性の高い評価法へと発展させる。加えて、「遺伝子セットを用いた非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法」を確立する。最終的に、これら3つの試験法を基に、短期肝発がん性総合評価スキームの確立を目指す。
本研究では化学物質の標的となる臓器の大半は肝臓であることに着目し、肝発がん性を短期で高精度に検証できるシステムを確立するとともに、問題となる「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」について発がん性評価を行う。5研究施設の協同体制にて下記の研究を実施する。我々が以前に開発した「遺伝子セットを用いた遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法」及び「DNAアダクトーム解析による遺伝毒性評価」はいずれも正答率が9割を超える高精度試験系であるが、「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」を含め化学物質数を増やし、より信頼性の高い評価法へと発展させる。加えて、「遺伝子セットを用いた非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法」を確立する。最終的に、これら3つの試験法を基に、短期肝発がん性総合評価スキームの確立を目指す。
研究方法
非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法の検証は、OECDテストガイドラインのTG407:げっ歯類における28日間反復経口投与毒性試験法に則って、ラットに被験物質投与を行い、肝臓における遺伝子発現をマイクロアレイにより取得した。今年度は、被検物質として優先評価化学物質を5物質含む、非遺伝毒性肝発がん物質19種及び非発がん物質1種の合計20物質を用いた。発がん物質は、28日間における最大投与用量で投与した。肝発がん性の予測において、これまでに構築した非遺伝毒性肝発がん物質検出法の検出感度をさらに高めるため、遺伝子セットについて再選定し、新たな検出法を構築し判定を行った。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法の検証試験では、ラットに被験物質の単回強制胃内投与試験を行った。これまでの検討において、陰性と判定された遺伝毒性陽性であるが発がん性不明の「監視化学物質」1種類及び偽陰性となった遺伝毒性肝発がん物質の3種類の合計4物質について投与用量を上げて検討した。投与24時間後の肝臓におけるマーカー遺伝子の発現データを取得し、我々が構築した遺伝毒性肝発がん物質検出法に入力し、判定を行った。
高分解能精密質量分析装置を用いたDNA付加体の網羅的解析(DNAアダクトーム)を用いて、遺伝毒性および肝発がん性の異なる物質の肝臓におけるDNA損傷の詳細な評価を行なった。得られたデータを線形判別分析(LDA)により分類し、さらに、Leave-One-Out交差検証を適用した毒性予測モデルの予測精度評価を実施した。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法の検証試験では、ラットに被験物質の単回強制胃内投与試験を行った。これまでの検討において、陰性と判定された遺伝毒性陽性であるが発がん性不明の「監視化学物質」1種類及び偽陰性となった遺伝毒性肝発がん物質の3種類の合計4物質について投与用量を上げて検討した。投与24時間後の肝臓におけるマーカー遺伝子の発現データを取得し、我々が構築した遺伝毒性肝発がん物質検出法に入力し、判定を行った。
高分解能精密質量分析装置を用いたDNA付加体の網羅的解析(DNAアダクトーム)を用いて、遺伝毒性および肝発がん性の異なる物質の肝臓におけるDNA損傷の詳細な評価を行なった。得られたデータを線形判別分析(LDA)により分類し、さらに、Leave-One-Out交差検証を適用した毒性予測モデルの予測精度評価を実施した。
結果と考察
非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法の検証において、本年度の20物質について、従来モデルでは感度42%、特異度100%と判定された。感度の改善のため、低用量でも発がん物質を陽性と判定する予測モデルとして、新規・高感受性モデルで検討した結果、感度84%(16/19物質)と感度の改善を認めた。高感受性モデルは、これまでの検討した化学物質79物質において、感度69%(22/32物質)、特異度85%(40/47物質)、正答率が79%(62/79物質)と高い精度で検出できる可能性が示唆された。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法の検証試験において、検討した4物質は投与用量を上げて検討したもののすべて「陰性」と判定された。これまでに取得した69物質に対して、我々が構築した遺伝子セットを用いた検出法は遺伝毒性肝発がん物質を、感度83%(24/29)、特異度95%(38/40)、正答率が90%(62/69)と、高い精度で検出できる可能性が示唆された。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法で得られた肝組織を用いたDNAアダクトーム解析による評価ではLDAにより、非遺伝毒性非肝発がん物質、遺伝毒性非発がん物質、非遺伝毒性肝発がん物質、遺伝毒性肝発がん物質の4つのグループに分離されることが判明した。また、学習アルゴリズムを従来のランダムフォレストからLDAに変更しモデル作成を行った結果、正答率が改善された。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法の検証試験において、検討した4物質は投与用量を上げて検討したもののすべて「陰性」と判定された。これまでに取得した69物質に対して、我々が構築した遺伝子セットを用いた検出法は遺伝毒性肝発がん物質を、感度83%(24/29)、特異度95%(38/40)、正答率が90%(62/69)と、高い精度で検出できる可能性が示唆された。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法で得られた肝組織を用いたDNAアダクトーム解析による評価ではLDAにより、非遺伝毒性非肝発がん物質、遺伝毒性非発がん物質、非遺伝毒性肝発がん物質、遺伝毒性肝発がん物質の4つのグループに分離されることが判明した。また、学習アルゴリズムを従来のランダムフォレストからLDAに変更しモデル作成を行った結果、正答率が改善された。
結論
遺伝子セットを用いた非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法では、感度69%、特異度85%、正答率が79%、遺伝子セットを用いた遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法では、感度83%、特異度95%、正答率が90%と、いずれも高い精度で検出できる可能性が示唆された。DNAアダクトーム解析及び線形判別分析により、遺伝毒性や肝発がん性の有無を分別できる可能性を示した。
公開日・更新日
公開日
2022-07-13
更新日
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