文献情報
文献番号
202125022A
報告書区分
総括
研究課題名
東南アジア地域で国際共同治験を計画する際の留意事項に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20KC2010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
頭金 正博(名古屋市立大学大学院薬学研究科 医薬品安全性評価学分野)
研究分担者(所属機関)
- 斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
- 佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 第一室)
- 宇山 佳明(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療情報活用部)
- 熊谷 雄治(北里大学 医学部附属臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
20,579,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、東南アジア諸国における国際共同治験を推進するために、医薬品の有効性と安全性に関する民族差の原因となる内的要因と外的要因を明らかにすることを目的とした。特に、国際共同治験の計画およびデザインに関する一般原則のガイドラインであるICH E17の概念を東南アジア地域へ拡大適用する際の留意点を明らかにすることを最終的な目的とした。東南アジア諸国の具体的な研究対象地域としては、台湾及び東南アジア諸国で治験が活発化している国(タイ、インドネシア、ベトナム、シンガポール等)とし、令和3年度は内的要因としての遺伝子多型、外的要因としての併用薬(用法・用量)、診断基準、臨床・治験環境に関する調査・検討を行い、総合的に東南アジア地域を含む国際共同治験において、日本との国・地域差をもたらしうる要因を明らかにすることにより、最終年度(令和4年度)に予定している東南アジア地域を含む国際共同治験実施する際の留意点をまとめる作業に必要な情報を収集した。
研究方法
データベースを用いた有効性の解析については、2次文献データベース及びPMDAが公表している申請資料概要と審査報告書を利用し、対象医薬品の臨床試験データを網羅的に収集し、システマティックレビューを実施した。用法・用量及び副作用診断基準等調査はインターネット上で公開されている東南アジア諸国での添付文書情報を利用して調査した。副作用報告データベース解析はVigiBaseを用いて各地域での副作用報告を比較した。薬物応答関連遺伝子多型のアレル頻度の比較は主要な薬物応答関連遺伝子を対象に、各国・地域の遺伝子多型・バリアントのアレル頻度の公開情報を用いて比較した。治験状況の実態調査は2018年度及び2019年度に承認された医薬品のうち、国際共同治験のデータが主たる臨床成績であった品目を対象に、PMDAの審査報告書、申請資料、添付文書、インタビューフォーム又はClinicalTrials.gov 等の公表情報をもとに解析を行った。臨床試験と医療実態の調査は東南アジア各国の臨床試験におけるkey opinion leader (KOL)を選定し国民の背景、健康行政、医療環境、臨床試験の実施状況に関する質問紙に基づいてweb面談を行い臨床試験の環境について情報を収集した。
結果と考察
直接経口抗凝固薬(DOAC)およびメトトレキサート(MTX)を対象にして東南アジア地域を含む国際共同治験のデータを用いて有効性・安全性の民族差について検討したところ、アジア地域内で見られた有効性等の違いは投与量の違いに起因する場合が多いのに対して、アジア系民族と欧米系民族の間で見られた違いは、内的要因が影響いていると考えられた。東南アジア諸国での用法・用量の調査から、東南アジア各国・地域における添付文書の記載は、欧米での記載をそのまま導入している例が多かったが、近年の承認品は国際共同治験の割合が高く、その場合、用法・用量に関し、日本との差は生じにくいと考えられた。アジア地域内での副作用プロファイルの比較では、日本を含む東アジア、東南アジア、ならびに米国でも概ね一致しており、東アジア内の地域間差と、東南アジアとの地域間差には重なりがあることから、東アジアと東南アジアを併合した集団においても、東アジア内の地域差の範囲内にある可能性が示唆された。アジア地域での国際共同治験の動向については、日本の国際共同治験への参加の増加とともに東アジアの参加も増加しているものの、東南アジアの参加は増加傾向が認められなかったことから、日本と東南アジア地域とのさらなる連携の可能性が示唆された。東南アジア諸国での臨床試験の実施環境については、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアにおいては臨床試験の体制整備はかなり進んでおり、程度の差はあるものの国際共同試験の参加経験を有していた。臨床試験の規制、審査制度には若干の相違があるものの、基本的な手順は我が国を含む東アジアと同様であり、試験立案の際のバリアーになるものは少ないと思われた。
結論
東南アジア地域あるいはアジア地域での有効性及び安全性の民族差について検討したところ、内的要因が関与する差は認められなかった。一方、東南アジア地域での用法・用量が欧米系の用量を用いている例が多いことが外的要因となり、日本人と東南アジア系民族との応答性の違いになっている例があった。国際共同治験の実施状況についての調査からは、一部の東南アジア諸国では治験の環境整備が行われているものの、日本や東アジア諸国が参加している国際共同治験が増加しているのに対して東南アジアでは増加傾向が見られず、日本と東南アジア諸国とのさらなる連携が期待される。
公開日・更新日
公開日
2022-08-03
更新日
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