輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性と安定供給を確保するための新興・再興感染症の研究

文献情報

文献番号
202125009A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性と安定供給を確保するための新興・再興感染症の研究
課題番号
20KC1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第1部第3室)
  • 大隈 和(関西医科大学)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 比嘉 由紀子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 前野 英毅(一般社団法人日本血液製剤機構 研究開発本部 中央研究所 感染性病原体研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,285,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトや物資の国際的な移動の急速な増加や地球温暖化のためにデング熱やジカ熱などの蚊媒介ウイルス感染症が東南アジアや中南米諸国で流行し、毎年輸入感染例が報告されている。これらのウイルスを媒介する蚊が国内に存在しているため国内でも発生する可能性がある。また、E型肝炎ウイルスに加えて重症熱性血小板減少症やダニ媒介脳炎などダニ媒介のウイルス感染症も広く国内に存在していることも明らかになっている。これらの病原体は、いずれもウイルス血症を起こすことから血液製剤を介して感染する可能性がある。また、令和2年度は国内外で新型コロナウイルスのパンデミックが発生した。血液中からウイルスが検出されることは少ないが血液製剤で実施されている不活化法に対する反応性を評価することにした。一方、血液製剤の安全性確保上で重要なB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、パルボウイルスは、未だ培養系がないので動物由来のモデルウイルスが不活化法の評価に使用されている。本研究班では、これらの病原体を検出する検査診断法の開発と標準化、スクリーニング法の標準化、さらにHBV、HCV、E型肝炎ウイルス(HEV)、パルボウイルスの効率良い培養系の開発を実施し、不活化の効果についても検討した。これらを実施することによって血液製剤の安全性の向上と安定供給を目指した。
研究方法
蚊媒介性ウイルスのウイルス学的特性の解析では、デングウイルス、ウエストナイルウイルスを含むフラビウイルス共通プライマーを作成し、デングウイルス 、チクングニアウイルス、ウスツウイルスの検出を検討した。SFTSウイルスの検出法確立に関する研究では、SFTSVのデータベースを基に大規模スクリーニング用のプライマーとプローブのセットをデザイン・作製し、検出法を評価した。B型肝炎ウイルスの研究では、昨年度に得られた高感受性株とHBV陽性血漿を用いて液状加熱による不活化法の効果と抗HBs免疫グロブリン製剤による中和活性を評価した。また、HEVの不活化に関する研究では、リバースジェネティクス法を用いて得られた高濃度HEVを用いて液状加熱による不活化効率を解析した。ダニ媒介感染症の予防の研究では、マダニの吸血源動物種の高感度な同定方法を開発し、渡り鳥の渡来地で解析に用いた。また、実ウイルスを用いたウイルス除去・不活化の研究では新型コロナウイルスの60℃液状化熱に対する感受性を武漢株や変異株を用いて解析した。
結果と考察
フラビウイルス共通プライマーを用いた核酸増幅検査では、デング熱患者検体からデング1型から4型までのウイルス遺伝子を検出ですることが可能であった。また、アフリカ型とアジア型のチクングニアウイルスも検出でぃた、さらに南アフリカ株やスロベニア株等の複数のウスツウイルスの検出も可能であった。また、血液からのSFTSの検出法の開発では、プライマー350セットから最終的に3セットのプライマー・プローブセットを選定でき、感度や特異性に問題がないことが確認できた。HBVの抗感受性株は、HBV陽性血漿を直接用いて不活化効率や中和活性を測定することができた。アルブミン 製剤の液状加熱では4Log以上不活化でき、200単位の抗HBs免疫グロブリン製剤によって6.7X104の感染価を有するHBVが中和できた。HEVの不活化の解析ではアンチトロンビン製剤やグロブリン製剤における液状加熱では有効な不活化効果は得られなかった。また、ダニ媒介感染症の予防の研究では、RLB(Reverse Line Blot法)とNGS(Next Generation Sequencing)を併用することでマダニの吸血源動物種を高感度で特定可能になった。この成果によってヒトに嗜好性があるダニの特定などダニ媒介の感染症予防に有用な情報が得られた。また、渡り鳥飛来地で複数分離されたKabuto mountain virus (KAMV)に対してはリアルタイムPCR法を確立し、高感度に検出できるようにした。。実ウイルスによる研究では、新型コロナウイルスは変異株を含めて60℃液状化熱によって速やかに不活化されることを証明した。さらにSec14L2を高発現させた細胞株を用いることで初めてHCV陽性血漿から細胞への感染が得られた。
結論
これら成果は血液製剤の安全性確保と安定供給のために大いに役立つと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2022-08-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
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倫理審査等報告書の写し
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公開日・更新日

公開日
2022-08-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202125009B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性と安定供給を確保するための新興・再興感染症の研究
課題番号
20KC1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第1部第3室)
  • 大隈 和(関西医科大学)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 比嘉 由紀子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 前野 英毅(一般社団法人日本血液製剤機構 研究開発本部 中央研究所 感染性病原体研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトや物資の国際的な移動の急速な増加や地球温暖化のためにデング熱やジカ熱などの蚊媒介ウイルス感染症が東南アジアや中南米諸国で流行し、毎年輸入感染例が報告されている。これらのウイルスを媒介する蚊が国内に存在しているため国内でも発生する可能性がある。また、E型肝炎ウイルスに加えて重症熱性血小板減少症やダニ媒介脳炎などダニ媒介のウイルス感染症も広く国内に存在していることも明らかになっている。これらの病原体は、いずれもウイルス血症を起こすことから血液製剤を介して感染する可能性がある。また、令和2年にアウトブレークした新型コロナウイルスのパンデミックは世界中で発生し、終息は見えてこない。新興・再興感染症が発生した時に情報を収集し、血液製剤へのリスクを評価し、必要に応じて病原体の検査診断法やスクリーニング法の開発を行う。また、媒介する蚊やダニの生態を解析することで供血者への啓発に役立てる。一方、血液製剤の安全性確保上で重要なB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、パルボウイルスは、未だ有用な培養系がないので動物由来のモデルウイルスが不活化法の評価に使用されている。実ウイルスとモデルウイルスの不活化法に対する抵抗性の相違はあまり解析されていない。本研究班では、B型、C型、E型肝炎ウイルス、パルボウイルスの効率良い培養系の開発を実施し、不活化法効果についても検討することにした。また、クロロフィル誘導体によって赤血球液の不活化を行なったが、その毒性についても検討する。これらを実施することによって血液製剤の安全性の向上と安定供給を目指した。
研究方法
蚊媒介性ウイルスのウイルス学的特性の解析では、デングウイルス、ウエストナイルウイルスを含むフラビウイルス共通プライマーを作成し、デングウイルス、チクングニアウイルス、日本脳炎ウイルス、ウスツウイルスの検出を検討した。SFTSウイルスの検出では、SFTSVのデータベースを基に大規模スクリーニング用のプライマーとプローブのセットをデザイン・作製し、検出感度を評価した。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、「Pheophorbide a」の細胞への毒性を解析した。また、分子生物学的手法を用いてB型肝炎ウイルスの産生株を作成した。また、HBV陽性血漿を感染させHBVの高感受性株の分離を目指した。また、HEVの不活化に関する研究では、リバースジェネティクス法を用いて得られた高濃度HEVを用いて、エルコール分画法、乾燥加熱法、液状加熱による不活化効果を解析した。ダニ媒介感染症の予防の研究では、マダニの吸血源動物種の嗜好性を解析するために高感度同定法を開発し、同時にウイルスの検出も行なった。HCVの培養では、宿主蛋白質Sec14L2を高発現させた細胞株を作成し、感染の有無を解析した。また、実ウイルスを用いたウイルス除去・不活化の研究では多数の変異型ウイルスを含む新型コロナウイルスの60℃液状化熱に対する感受性を解析した。また、新型コロナウイルスの血清中での感染性の安定性についても検討した。
結果と考察
フラビウイルス共通プライマーを用いた核酸増幅検査では、1型から4型までのウデングイルス、チクングニアウイルス、日本脳炎ウイルス、ウスツウイルスなどのウイルス遺伝子を検出できた。また、血液からのSFTSの検出法の開発では、プライマー350セットから最終的に1セットのプライマー・プローブセットを選定でき、感度や特異性に問題がないことが確認できた。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、「Pheophorbide a」がB細胞に毒性を与える可能性が示唆された。HBVの培養系ではHBV陽性血漿に高感受性を示す2つの細胞株を得ることができた。HBV陽性血漿を用いて直接HBVの液状加熱による不活化を評価でき 4Log以上不活化できることを明らかにした。モデルウイルスに類似した不活化効果が確認出来た。また抗HBs免疫グロブリン製剤による中和活性も評価できた。これまでS抗原との結合でS抗体の力価が評価されていたが、初めてHBVの中和によって力価が評価出来るようになった。HEVの培養では、リバースジェネティクス法を用いて高濃度のHEVが得られ、血漿由来のHEVに類似した性状を有していることが確認出来た。得られたHEVを用いてエタノール分画法、乾燥加熱、液状加熱による不活化効果を解析できた。ダニ媒介感染症の予防の研究では、マダニの嗜好性を解析するために高感度の吸血源動物種の検出法を開発し、キマチダニが重要なダニであることを明らかとした。実ウイルスによる研究では、新型コロナウイルスは変異株を含めて60℃液状化熱によって容易に不活化出来ることを明らかにした。
結論
これら成果は血液製剤の安全性確保と安定供給のために大いに役立つと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2022-08-10
更新日
-

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公開日
2022-08-10
更新日
-

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文献番号
202125009C

収支報告書

文献番号
202125009Z