輸血医療の安全性向上のためのデータ構築研究

文献情報

文献番号
202125003A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血医療の安全性向上のためのデータ構築研究
課題番号
19KC2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 栄史(愛知医科大学病院 輸血部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学分野)
  • 米村 雄士(熊本大学医学部附属病院)
  • 紀野 修一(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター)
  • 岡崎 仁(東京大学 輸血部)
  • 後藤 直子(日本赤十字社 血液事業本部 技術部 安全管理課)
  • 北澤 淳一(福島県立医科大学医学部)
  • 大谷 慎一(北里大学 医学部 輸血・細胞移植学)
  • 松岡 佐保子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 宮作 麻子(日本赤十字社 血液事業本部 技術部)
  • 上野 志貴子(熊本大学病院 輸血・細胞治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血の安全性向上と適正使用をさらに高い次元で実現するため、トレーサビリティが確保された輸血情報収集システムの構築と活用を目指す。多施設共同研究(パイロットスタディ)を実施し、献血における採血から医療施設における輸血実施までをトレースした輸血情報を収集し、輸血製剤の使用実態、輸血後副作用の発生状況を解析する。共同研究の解析結果から、システムで収集する情報の内容や方法について評価し、構築したシステムを改良する。将来的に収集したデータを日本輸血・細胞治療学会、日本赤十字社、厚生労働省のみならず全国の医療従事者の各種調査に活用できるよう、全国規模での情報収集を目指し、システム普及を推進する。
研究方法
令和1-2年度の本研究で、トレーサビリティの確保された輸血情報収集システムの構築のために、医療機関と日本赤十字社の情報管理端末から正確な輸血情報を可能な限り簡易に抽出できる仕組みを確立した。本年度は①医療機関が抽出した輸血情報をオンラインで提出できるように改良し、提出された情報を安全に保管・管理できる情報集積環境を構築してその稼働性を確認し(分担研究報告書参照)、②構築したシステムを用いて多施設共同研究(パイロットスタディ)を実施し、収集したトレース可能な輸血情報を解析・評価することで、システムの機能性や得られた情報の有効性を評価した。
パイロットスタディには、12の医療機関と日本赤十字社が参加した。参加医療機関と日本赤十字社は、2018年4月から2019年3月までの1年間に医療機関で使用された赤血球製剤(RBC)、濃厚血小板製剤(PC)、新鮮凍結血漿製剤(FFP)の全輸血バッグデータを提出した。すべての輸血製剤は製造時にフィルターにより白血球を除去しており、日本赤十字社から提供された。日本赤十字社は、ドナーの年代、性別、血液型、提供日、血液製剤名と製剤番号の情報を提供した。医療機関は、レシピエントの年齢、性別、血液型、輸血日、輸血関連副反応の有無と有の場合その臨床症状と診断、血液製剤名と製剤番号の情報を提供した。日赤からのドナー情報と病院からのレシピエント情報は、血液製剤名と製剤番号を用いて結び付けられた。すべてのデータ解析は,国立感染症研究所で行った。
輸血関連副反応は、以前の報告同様に、参加医療機関によって臨床症状を17のカテゴリーに分類し、非溶血性副反応,溶血性副反応,輸血感染症に分類して診断した。非溶血性輸血反応は、重症アレルギー性副反応(allergic transfusion reaction; ATR)、輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連循環過負荷(TACO)、輸血関連移植片対宿主病(TA-GVHD)、輸血後紫斑病(PTP)、その他に分類した。
結果と考察
研究班参加医療施設を含めた12の医療施設が1年間に実施した全ての輸血データ132,340件の輸血副反応情報のうち129,297件を日本赤十字社の情報と結びつけ解析した。最近の研究では、輸血副反応はドナーまたはレシピエントの性別と密接な関係があることが示唆されている。そこで、性別に分類して副反応割合を評価した。RBCでは男性ドナー由来の輸血における副反応報告割合が高かった(p=0.043)が、PCとFFPでは女性ドナーからの輸血による副反応報告割合が有意に高い傾向を認めた(PC: p=0.016, FFP: p=0.00236)。ドナーとレシピエントの両方の性別で分類したデータを再解析したところ、FFPにおいては、男性のレシピエントへの輸血での副反応報告割合が高く、特に女性ドナーから男性レシピエントへの輸血における副反応の頻度は3.03%と有意に高い結果となった。次に、レシピエントの年代別に副反応の報告割合を検討した。RBCの輸血ではレシピエントの年齢が11-20歳での副反応報告割合が1.70%と最も高かった。PCの輸血では1-60歳での副反応報告割合が非常に高かった(3.88-5.71%)。FFPでは11-70歳での副反応報告割合が2%以上と高く、特に11-20歳では6.78%と非常に高かった。特に11−20歳の男性レシピエントでは、7.83%と高い副反応報告割合であった。本研究課題で構築したシステムによりtransfusion chainがシームレスにつながることで、輸血に関連する様々なイベントを新たな評価方法で解析可能となった。
結論
今回トレーサビリティが確保された輸血情報収集システムを新たに構築することができた。このシステムの稼働により、これまで出来なかった輸血関連の解析が可能となった。システムによる恒常的な情報収集により、さらなる日本における輸血の安全性向上と適正使用につながる情報の収集と活用が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2022-08-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-08-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202125003B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血医療の安全性向上のためのデータ構築研究
課題番号
19KC2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松岡 佐保子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 加藤 栄史(愛知医科大学病院 輸血部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学分野)
  • 米村 雄士(熊本大学医学部附属病院)
  • 上野 志貴子(熊本大学病院 輸血・細胞治療部)
  • 紀野 修一(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター)
  • 岡崎 仁(東京大学 輸血部)
  • 宮作 麻子(日本赤十字社 血液事業本部 技術部)
  • 後藤 直子(日本赤十字社 血液事業本部 技術部 安全管理課)
  • 北澤 淳一(福島県立医科大学医学部)
  • 大谷 慎一(北里大学 医学部 輸血・細胞移植学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血のトレーサビリティ実現を目指し、献血における採血から医療施設における輸血実施までを期間限定でトレースし、輸血製剤の使用実態、輸血後副作用の発生状況を解析する。トレース結果の解析から、輸血の安全性と適正使用をさらに高い次元で実現するための基盤の整備を行う。さらにこれらのデータを日本輸血・細胞治療学会、日本赤十字社、厚生労働省の各種調査に活用できるよう、全国規模で情報を収集する仕組みを構築する。
研究方法
日本赤十字社と7医療施設(愛知医科大学、北里大学病院、県立青森中央病院、東京大学、東京医科大学八王子医療センター、熊本大学、山口大学)において、輸血/輸血副反応データを収集するにあたり必要な項目の検討を行った。パイロットスタディのデータ解析結果の検討から、全国に展開する場合に、標準化すべき項目を決定するとともに、日本輸血・細胞治療学会誌を通じて全国の医療機関に項目の提示を行った。
また、トレーサビリティに関するデータを恒常的に収集するためにデータシートの改良や普及のための活動、輸血管理システムとの互換性の検討等を行った。
結果と考察
研究班参加医療施設を含めた12の医療施設が1年間に実施した全ての輸血データ132,340件の輸血副反応情報のうち129,297件を日本赤十字社の情報と結びつけ解析した。最近の研究では、輸血副反応はドナーまたはレシピエントの性別と密接な関係があることが示唆されている。そこで、性別に分類して副反応割合を評価した。RBCでは男性ドナー由来の輸血における副反応報告割合が高かった(p=0.043)が、PCとFFPでは女性ドナーからの輸血による副反応報告割合が有意に高い傾向を認めた(PC: p=0.016, FFP: p=0.00236)。ドナーとレシピエントの両方の性別で分類したデータを再解析したところ、FFPにおいては、男性のレシピエントへの輸血での副反応報告割合が高く、特に女性ドナーから男性レシピエントへの輸血における副反応の頻度は3.03%と有意に高い結果となった。次に、レシピエントの年代別に副反応の報告割合を検討した。RBCの輸血ではレシピエントの年齢が11-20歳での副反応報告割合が1.70%と最も高かった。PCの輸血では1-60歳での副反応報告割合が非常に高かった(3.88-5.71%)。FFPでは11-70歳での副反応報告割合が2%以上と高く、特に11-20歳では6.78%と非常に高かった。特に11−20歳の男性レシピエントでは、7.83%と高い副反応報告割合であった。本研究課題で構築したシステムによりtransfusion chainがシームレスにつながることで、輸血に関連する様々なイベントを新たな評価方法で解析可能となった。トレーサビリティが確保された輸血情報収集システムの稼働により、日本における輸血の安全性向上と適正使用につながる情報の収集と活用が期待できる。
結論
トレーサビリティが確保された輸血情報収集システムを新たに構築することができた。このシステムの稼働により、これまで出来なかった輸血関連の解析が可能となった。今後、全国の医療施設を対象とした輸血情報収集を目指し、構築したシステムの普及と活用を推進していく。

公開日・更新日

公開日
2022-08-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202125003C

収支報告書

文献番号
202125003Z