食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
202124020A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究
課題番号
20KA1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 崇裕(近畿大学 原子力研究所)
  • 中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室)
  • 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,437,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の食品への移行は食品衛生上の大きな問題となっている。食品中の放射性物質検査は、原子力災害対策本部で決定したガイドラインに従い、地方自治体において検査計画に基づくモニタリング検査を実施しており、毎年行われているガイドライン改定の影響評価およびその手法の開発が必要となっている。本研究においては、食品中の放射性物質の検査体制の評価、過去の食品中放射性物質濃度データ解析等を実施し、それらのデータを基に検査ガイドラインの改定とモニタリング検査の実効性の関係を明らかにし、ガイドライン改定の影響評価を行うとともに、今後のガイドライン改定案に資することを目的とする。また、現在の流通食品の規制値超過率が極めて低く抑えられているにもかかわらず、依然として国内外の風評被害が存在し、被災地復興の障害となっていることから、消費者への効果的な食品検査及び食品安全性情報の発信の方法についても検討する。
研究方法
①食品中放射性物質の検査体制の評価手法の検討:非破壊式装置を用いた測定法について検討する。形式の異なる複数の装置ごとに、試料中の放射性セシウム分布などの特性を明らかにするとともに、その装置の検出効率への影響、及び形状依存の特徴を把握し、感度変化への影響の程度を評価する手法について検討する。
②食品中放射性物質濃度データの解析:厚生労働省に報告される食品中の放射性セシウム検査データを解析し、検査をより効果的・効率的に実施するための検査計画の検討を行う。
③食品中放射性物質等の実態調査:食品中ポロニウム210の測定を行い、内部被曝線量の推定を行う。
④消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討:消費者の食品検査及び食品検査結果についての理解の状況を明らかにし、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行う。
結果と考察
①同一の実試料を用いて異なる機種の非破壊式装置による測定とGe検出器を用いた公定法による測定結果との比較検討を主体に、本年度は野生キノコ全25種141検体、ネマガリタケ及びモウソウチクのタケノコそれぞれ30検体及び19検体を用いて測定値を比較した。いずれの機種についてもGe検出器の測定結果と比較し、非破壊式装置による測定結果の多くで低めに評価される傾向が見られたが、両者間で良好な相関が得られた。さらに野生キノコの4種及びタケノコについて100 Bq/kgに対するスクリーニング検査への適用性について回帰直線の予測区間による方法を用いて検討し、99 %予測区間の上限値が100 Bq/kgの場合の予想される試料の放射能濃度を評価した。その結果、機種及び品種によって異なるが、野生キノコ3種で30~70 Bq/kg、タケノコで50 Bq/kgを超えるスクリーニングレベルの設定が可能であった。本研究成果により、「非破壊検査法による食品中の放射性セシウムスクリーニング法」の適用試料種に、昨年度のマツタケに続き、ネマガリタケ及びモウソウチクの皮付きタケノコが追加された。
②平成24年度から令和4年度までの検査データのうち、果実類について解析したところ、その多くが未検出であり、生鮮果実類の基準値超過は2017年のクリが最後であった。一方で、果実類の乾燥加工食品では近年も基準値超過の報告があることから、モニタリングを継続していく必要性が示唆された。
③食品からのポロニウム210からの被曝量推定では、食品中濃度、喫食量および実効線量係数が因子となる。食品中の濃度実測においては昨年度同様に魚介類で高く、現在の公称値とされる値(0.7mSv/年)よりも低い可能性が示唆された。
④「食品の安全性」に関する一般的認識を調査した。各種食品中汚染物質基準に関しては、国内基準のないもの以外は概ね現在の基準が支持されていた。食品の安全性については一部の人たちを除き安全だと思っている、あまり心配していないという意見が多かった。現在特に放射性物質を食品安全上の問題だと認識している人は極めて少なく、仮に風評被害があるとしてもそれは消費者が駆動しているものではないと思われる。
結論
非破壊式測定装置を用いる検査法が、今回検討を行った試料および測定条件の範囲内においては、試料の前処理を伴う従来のスクリーニング検査とほぼ同等の性能で可能であると考えられ、これらの成果は検査法に反映された。より効率的な検査体制の構築・維持により適切な食品の流通を保証すること、並びに消費者が適切なリスク管理を行うために必要な情報を提供していくことは、食品の安全・安心に繋がると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2022-09-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-09-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,727,000円
(2)補助金確定額
11,727,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,796,230円
人件費・謝金 2,903,183円
旅費 227,000円
その他 1,510,664円
間接経費 1,290,000円
合計 11,727,077円

備考

備考
自己資金77円

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-