食品及び食品用容器包装に使用される新規素材の安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
202124016A
報告書区分
総括
研究課題名
食品及び食品用容器包装に使用される新規素材の安全性評価に関する研究
課題番号
20KA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
14,065,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、食品及び食品用容器包装用途に使用され、経口及び経皮等から暴露されるナノマテリアル等の新規素材について、安全性評価に資するデータの蓄積、評価方法の検討並びにその暴露状況やリスク評価に関する国際動向の把握を目的としている。
研究方法
F344ラットを用いた一次粒径6 nmのナノ酸化チタンの90日間反復経口投与毒性試験においては、令和2年度の用量設定試験結果を基に、投与量を100、300、1000 mg/kg bw/dayとし、強制経口投与を行った。投与期間中は一般状態、体重変化、摂餌量を観察し、投与終了時は血液検査、血液生化学検査、臓器重量測定及び全身諸臓器の病理組織学的検査、主要臓器のチタン濃度定量および病理組織学的検査を実施した。
また、ナノ酸化チタン等の同時暴露がアレルゲンによる感作やその後のアレルギー症状惹起に与える影響の検討では、雌性BALB/cマウスの片側背面の剃毛皮膚にOVAを3日間連続貼付/週にて4週間経皮感作し、感作終了の翌週から、OVAの複数回経口投与による追加免疫を実施し、最後にOVAを経口投与してアレルギー症状を惹起する系を用いた。OVA特異的抗体の血中濃度や経口投与後の体温低下・下痢症状等を指標とし、粒子径15 nm・アナターゼ型のナノ酸化チタンのOVA経皮感作後の経口追加免疫時の共存、及び、粒子径15 nm・ルチル型のナノ酸化チタンの追加免疫後の症状惹起の影響を検討した。
更に、国際動向調査においては、EFS等のナノテクノロジーに関するネットワーク会議の活動とEFSA食品添加物・香料に関するパネルが再評価した二酸化チタン(E171)の安全性評価に関する科学的意見等を調査した。
結果と考察
F344ラットを用いた一次粒径6 nmのナノ酸化チタンの90日間反復経口投与毒性試験において、いずれの群にも毒性学的に有意な変化は見られなかったことから、本試験における無毒性量は1000 mg/kg bw/dayと判断した。また、主要臓器のTi量を測定したところ、肝臓、腎臓および脾臓中のTi含量に対照群との差異は見られなかった。90日間の反復投与では、28日間投与時確認されなかった回腸パイエル板等のリンパ組織に被験物質と考えられる黄褐色粒子の沈着が見られ、経口暴露によって消化管から生体内にTiO2が微量ながら取り込まれることが示唆された。一方、28日間投与試験検体と比較しても、肝臓、腎臓、脾臓におけるTiの蓄積は見られず、炎症反応や組織障害等の生体反応も伴っていないことから、微量のTiO2の毒性学的意義は乏しいと考えられたが、生体への取込と粒子サイズの関係は更なる検討が必要と考えられた。
また、ナノ酸化チタン等の同時暴露がアレルゲンによる感作やその後のアレルギー症状惹起に与える影響を検討したところ、粒子径15 nm・アナターゼ型のナノ酸化チタンについて、経口投与時の共存により経口追加免疫を増強する傾向が見られた。一方、これまでの検討で、粒子径30-50 nm・ルチル型、及び粒子径15 nm・ルチル型のナノ酸化チタンでは、このような経口追加免疫の増強効果や増強傾向は見られていない。今後、ナノマテリアルの経皮/経口暴露が免疫応答に与える影響について、さらなる科学的知見を集積することが必要と考えられた。
国際動向調査においては、ネットワークでは、二つのEFSAガイダンス文章(粒子に関するガイダンス、ナノに関するリスクアセスメントガイダンス)について議論された。さらに、最近、欧州委員会の要請を受けてEFSA FAFパネル(EFSA食品添加物・香料に関するパネル)が再評価した食品添加物としての二酸化チタン(E171)の安全性評価に関する科学的意見を新たに発表した内容についての紹介があった。一方、OECDナノマテリアル作業グループの先端的ナノ材料についてのAd-Hoc Working Groupに関する調査では、先端的材料(アドバンスドマテリアル:AdMa)と呼ぶ革新的な材料について、現行の化学物質の法規制やリスク評価ツールが、規制への備えを強化するなどの潜在的リスクに適切に対処しているかを評価する必要性についての議論が行われた。
結論
投与に関連した毒性学的に有意な変化は見られなかったことから、F344ラットを用いた、一次粒径6 nmのナノ酸化チタンの90日間反復経口投与毒性試験における無毒性量は1000 mg/kg bw/dayと結論した。また、粒子径15 nm・アナターゼ型のナノ酸化チタンについて、経口投与時の共存により経口追加免疫を増強する傾向が見られた。さらに、国際動向調査においては、EFSA, OECD等においてナノマテリアル及びAdMaのリスク評価への対応が議論されていることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2022-09-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-09-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,065,000円
(2)補助金確定額
14,065,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,470,751円
人件費・謝金 4,204,187円
旅費 138,980円
その他 4,251,587円
間接経費 0円
合計 14,065,505円

備考

備考
超過分は自己負担させていただきました。

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-