健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発に関する研究

文献情報

文献番号
202124009A
報告書区分
総括
研究課題名
健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発に関する研究
課題番号
19KA3002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 位旨(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 一平(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
  • 東泉 裕子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は健康食品による肝臓への影響を有害性情報も含めた情報をもとに細胞実験または動物実験から検証し、健康食品と被害情報の因果関係を科学的に解析し、一連の研究から健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発することである。本年度の研究目的は、ヒト肝細胞として汎用されているHepG2を用いて、健康食品成分の毒性および薬物代謝酵素(CYP)3A4への影響を評価する系を構築することである。
研究方法
まず、HepG2の毒性対照成分(ジメチルスルホキシド、DMSO)への応答性を検証した。ついで、先の検討結果をもとに試験条件を設定し、健康食品成分の毒性応答を検討した。
健康食品成分の肝臓CYP3A4への影響を解析するため、CYP3A4レポーターベクターを調製した。このレポーターベクターをHepG2にトランスフェクションし、CYP3A4誘導薬などを作用させることで、本ベクターのCYP3A4特異性を検証した。次に、本ベクターを用いて健康食品成分のCYP3A4におよぼす影響を検討した。
結果と考察
HepG2細胞はDMSOに対して毒性応答性を示した。健康食品成分の毒性を検討した結果 ルテオリンでのみ毒性応答が認められた。CYP3A4の近位プロモーター領域および異物応答を含むレポーターベクターを調製した。本レポーターベクターはCYP3A4誘導薬に対して濃度依存的に応答性を示し、CYP3A4に特異的であることが裏付けられた。本レポーターベクターを用いて、健康食品成分のCYP3A4への影響をレポーターアッセイにより検討した。その結果、試験対象とした健康食品成分はいずれもCYP3A4に影響しない結果であった。
HepG2は初代培養肝細胞とは異なり、肝臓での代謝能を失活している。そのため、HepG2では細胞内に取り込まれた試験対象は変化せず細胞内に存在する。昨年の初代培養細胞の試験結果、本研究での毒性応答を比較すると、HepG2での毒性試験は試験対象成分そのものの毒性の有無を意味すると考えられる。これはレポーターアッセイについても同様である。以上から、本報告で示した試験系は試験対象成分そのものの肝毒性およびCYP3A4への影響を検証することが可能であると考えられる。また、肝臓での代謝は細胞内のCYP類によって行われるため、生体位での代謝を踏まえた試験を行うには、試験対象成分にヒトミクロソーム画分を肝臓代謝酵素源として作用させた後に本試験方法の処置成分として用いることで、肝臓代謝を考慮したin vitroの毒性評価が可能であると考えられる。ただし、試験対象成分の代謝物に関しては変化体の同定が必要になる。
結論
一連の研究から、細胞実験による健康食品の安全性評価を開発することが達成された。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202124009B
報告書区分
総合
研究課題名
健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発に関する研究
課題番号
19KA3002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 位旨(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 一平(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
  • 東泉 裕子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでの厚生労働科学研究(厚生労働科学研究;平成27-29年度、梅垣;平成22-24年度、永田)から、健康食品による肝臓への影響が問題として提起されている。これら研究から健康食品の肝機能並びに肝臓薬物代謝に着目した安全性評価は急務と考えられる。そこで、本研究では健康食品による肝臓への影響を、有害性情報も含めた被害情報をもとに細胞実験または動物実験から検証し、健康食品と被害情報の因果関係を科学的に解析する。本研究の最終目的は、一連の研究から健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系を開発することである。
研究方法
1年目:健康食品に関するデータベースから成分および肝機能および肝臓薬物代謝を含めた肝臓への影響に関する情報を抽出し、肝臓への毒性が予測される成分の解析を行った。また、データベース解析から抽出された健康食品成分について、市販の健康食品を買いあげ、対象成分が含まれているのか否かを検討した。2年目:マウス初代培養細胞を用いて毒性および肝臓薬物代謝を評価する細胞実験系の構築を試みた。3年目:HepG2細胞を用いて毒性および肝臓薬物代謝を評価する細胞実験系の構築を試みた。
結果と考察
1年目:健康食品に関するデータベース解析の結果、肝機能指標および肝臓薬物代謝に影響をおよぼす原因物質として18成分が抽出された。その多くはポリフェノールであり、毒物としてピロリリジンアルカロイドなども抽出された。先の成分からLCMSでの分析が可能な10成分を対象に、市販の健康食品の分析を行った結果、製品の種類に関係なく、ルチン、クロロゲン酸、ケンフェロール、ケルセチンおよびロスマリン酸が検出され、多くの各含量は1mg/g(製品粉末)以下であった。2年目:マウス初代培養肝細胞の陽性対照成分への毒性応答および薬物代謝酵素への影響を検討した結果、肝臓を採取したマウスの個体差が大きく、十分な再現性を得ることができなかった。3年目:HepG2細胞を用いて、毒性試験およびCYP3A4レポーターアッセイ系を構築し、試験成分そのものの安全性を評価する系を構築することができた。
結論
健康食品は表示されている機能性を謳う成分だけでなく、研究1年目の結果が示すように表示されていない多くの成分を含んでいる。現在の問題として、国内外で健康食品に関する健康被害が報告されている。この問題に対して、本研究から構築されたin vitro法は有効であると考えられる。一方、安全性評価において、毒性試験を行う前に、健康食品に含まれる成分を十分に解析することが食品の安全性を担保するためには重要である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202124009C

収支報告書

文献番号
202124009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,066,000円
(2)補助金確定額
2,066,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,577,680円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 12,320円
間接経費 476,000円
合計 2,066,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
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