文献情報
文献番号
202124007A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究
課題番号
19KA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
- 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部)
- 岡 明(埼玉県立小児医療センター)
- 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
40,807,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品を介したダイオキシン類(DXNs)、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)、有害元素、ハロゲン系難燃剤等の有害物質の摂取量を調査する。DXNsについては、乳児にとって主要な食品となる母乳中のDXNs濃度についても調査する。また、DXNsや有機フッ素化合物(PFCs)については、食品を対象にした分析法を検討する。その他、各種有害物質の暴露マージン(MOE)についての情報を収集し整理する。
研究方法
マーケットバスケット方式によるトータルダイエット(TD)試料を分析し、DXNs、PCBs、及び元素類である総ヒ素(As)、無機ヒ素 (iAs)、カドミウム(Cd)、総水銀(Hg)、メチル水銀 (Me-Hg)、鉛(Pb)等について国民平均の一日摂取量(一歳以上)を推定した。As、iAs、Cd、Hg、Pbの摂取量評価においては、ベイズ法を併用した二次元モンテカルロシミュレーション(2D-MCS)による確率論的摂取量評価についても検討を試みた。初産婦(出産1か月後)の母乳中のDXNs濃度を調査した。また、今までの調査結果を用いて、母乳中のDXNs濃度と児の身体発育や発達との関連を検討した。国内で市販されている魚介類を主菜とする一食分試料(弁当類)及び魚油を原料とする健康食品からのPCBs及びハロゲン系難燃剤の摂取量を調査した。分析法の開発として、肉類・卵類を対象に自動前処理装置を用いたDXNs分析法の性能を評価した。PFCsについては固相抽出カラムを用いた前処理方法を検討し、TD試料の分析を試みた。リスク管理の優先順位付けに必要となる各種有害物質のMOEについての情報を世界の食品安全担当機関等より収集し整理した。
結果と考察
TD試料の分析結果から全国平均摂取量はDXNsが0.44 pg TEQ/kg bw/day、PCBsが6.7 ng/kg bw/dayと推定された。DNXsは耐容一日摂取量(TDI)の約11%、PCBsは暫定TDIの0約.1%であった。DXNs摂取量は1998年度以降、緩やかな減少傾向を示していた。主要な元素類の全国平均摂取量については、Asが322 、iAsが22.8、Cdが16.7、Hgが8.21、Me-Hgが7.02、鉛が5.60 (単位は全てμg/person/day)と推定された。摂取量推定値と健康影響に基づく指標値(HBGV)の比(ハザード比)を求めた結果、iAsのハザード比(1.36)が最も高かった。また、これまでの調査と比較し経年変動を解析したところ、Cd、Hg、Pbは減少傾向であったが、Asは近年上昇傾向に転じていた。ベイズ法を併用した2D-MCSによる有害元素の確率論的摂取量評価について検討した結果、TD試料においても2D-MCSを用いた確率論的摂取量の推定は有用であると考えられた。母乳中のDXNs濃度の平均値は5.60 pg TEQ/g-fatであり、漸減傾向が継続していた。母乳中のDXNs濃度と出生時の頭囲には負の相関がみられた。これは妊娠中の母体内でのDXNs曝露の影響が推測されるが、母乳中のDXNs濃度と生後の発達については、明らかな影響は認められなかった。弁当類からの一食当たりのPCBs摂取量は最大で暫定TDIの0.73%、ハロゲン系難燃剤摂取量は最大でHBGVの5.3%であった。健康食品からの一日当たりのPCBs摂取量は最大で暫定TDIの0.02%、ハロゲン系難燃剤摂取量は最大でHBGVの0.2%であった。自動前処理装置を用いて牛肉と鶏卵を分析した結果、従来法のDXNs分析値と良く一致し、標準試料の分析結果も良好であった。検討した分析法によりTD試料中のPFCsを分析した結果、一部のPFCsでは夾雑物の影響が認められた。これまで収集したMOEをエンドポイントの違いに基づき整理した。がんがエンドポイントとなる優先順位の高い物質は、iAs、アクリルアミド、ピロリジジンアルカロイド、アフラトキシン等であった。がん以外のエンドポイントでは鉛が最も安全側に余裕がなかった。
結論
食品からのDXNs摂取量や母乳中のDXNs濃度は、行政施策の効果等もあり経時的な減少傾向が示唆されている。iAsはハザード比が高く摂取量の減少傾向も認められないことから、継続調査の必要性が高いと考えられる。調査した一食分試料や健康食品から摂取するPCBsやハロゲン系難燃剤による人の健康リスクは小さいと考えられた。ただし、PCBsの暫定TDIについては根拠となった長期毒性研究が古いため留意を要する。自動前処理装置は肉類及び卵類のDXNs分析の迅速化・省力化に有効であると考えられた。TD試料中のPFCsを分析するためには、夾雑物の影響を防ぐため、更なる分析法の改良が必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2022-09-22
更新日
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