ウェルシュ菌芽胞形成調節ネットワークの解析と、調節遺伝子をターゲットとした食中毒予防法の開発

文献情報

文献番号
200837057A
報告書区分
総括
研究課題名
ウェルシュ菌芽胞形成調節ネットワークの解析と、調節遺伝子をターゲットとした食中毒予防法の開発
課題番号
H20-食品・若手-020
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大谷 郁(金沢大学 医薬保健研究域 医学系)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
グラム陽性嫌気性桿菌ウェルシュ菌は、日本において食中毒の主要原因菌の1つとしてあげられる。この食中毒は、本菌が加熱不十分な食べ物とともに人体に入り、胃酸の刺激により芽胞を形成し、芽胞形成中に下痢を引き起こす腸管毒素(エンテロトキシン)を産生することが原因であると報告されている。しかし、その詳細なメカニズム、特に芽胞形成と腸管毒素産生の制御機構については未知のままであり、食物をよく加熱することしかその予防法はなく、大量に食べ物を調理する学校給食や仕出し弁当等での食中毒は未だに回避することが難しい状態である。そこで、遺伝子レベルで芽胞をコントロールし、食中毒予防につなげることを本研究の目的とした。
研究方法
マイクロアレイデータを網羅的に解析し、様々な調節ネットワークを抽出後、そのデータをノザン解析ならびにリアルタイムPCRを用いて検証する。得られたデータをもとに芽胞形成に関わる調節遺伝子を抽出し、変異株を作製して、芽胞形成、腸管毒素産生性などの検討を行う。
結果と考察
マイクロアレイデータの解析により、芽胞調節に関与すると考えられる遺伝子が明らかとなった。この遺伝子変異株を、腸管毒素産生株を用いて作製したところ、野生株と比較して、芽胞形成効率、ならびに腸管毒素産生性が明らかに変化した。また、この新規調節遺伝子は、いくつかの芽胞形成関連遺伝子を転写レベルで調節していることが明らかとなった。これらの結果より、今回同定された新規調節遺伝子は、芽胞形成調節ネットワークに深く関与していることが示唆された。
結論
新規調節遺伝子は芽胞形成に深く関与していることが強く示唆されたこと、また、本菌の食中毒は食品に混入した菌が体内に入る時に芽胞になり、腸管毒素を産生することで食中毒が発生することを考えると、この新規調節ネットワークをさらに解析することは、食中毒予防法開発に新たな側面を与える可能性が考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-