抗原応答ゲート膜を用いた超高速イムノクロマト法の開発

文献情報

文献番号
200837055A
報告書区分
総括
研究課題名
抗原応答ゲート膜を用いた超高速イムノクロマト法の開発
課題番号
H20-食品・若手-018
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 大知(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 安心・安全な食品を社会に供給するためには、極低濃度で食品に含まれる有害タンパク質、微生物、農薬などの低分子化合物を、簡便に高速でかつ感度良く検出する手法の開発が必須である。申請者は特定のイオン濃度に選択的にかつ敏感に応答して自律的に、膜細孔径を200nmから0nmまで閉める膜の開発に成功している。この膜は厚さ20?200μm、200nmの細孔径を持つ多孔基材の細孔表面に特定サイズのイオンを捕捉するクラウンエーテルと、この分子刺激に応答して体積を変化させるpoly-NIPAM (N-isopropylacrylamide)をグラフト共重合したものである。本研究ではクラウンエーテルの代わりに抗体を固定して、抗原を抗体によって選択的に捕捉して細孔が閉まる抗原ゲート膜を新たに作製し、イムノクロマト法に応用する。
研究方法
 抗体固定金コロイドで標識抗原が抗原ゲート膜を通過するように配置すると、抗原はゲート膜に捕捉され、膜細孔が閉まるので透過側に通過できない。一方抗原がない場合はゲート膜細孔が開いたままなので、金コロイドが膜を通過し透過側が着色する。イムノクロマト法では金コロイドが長距離を移動するのに対し、本方法では厚さ20μm程度の膜を透過するだけで判定ができるので、測定時間の大幅な短縮が可能な上に、キットの大幅な小型化が期待できる。さらに金コロイドが保持する水和量を制御することにより、NIPAMの抗原に対する応答感度を向上させられる可能性がある。
結果と考察
 平成20年度の現在は、単分散金ナノコロイドの合成に成功し、さらにこれへの物理吸着による抗体の固定と末端にチオール基を持つポリエチレングリコール鎖の固定に成功した。また温度応答性を持つpoly-NIPAM鎖と抗体をFabのコンジュゲイトにもほぼ成功している。さらに抗体ゲート膜作製に備え、ビオチン固定NIPAMグラフト膜の作製、NIPAMグラフト膜からのグラフト鎖の単離と解析にも成功した。
結論
 平成21年度は、抗原をブリッジにしたサンドイッチ抗原抗体反応によるリニアチェーンNIPAMと親水化金コロイドの相互作用を詳細に明らかにし、膜細孔中でのナノ構造設計指針を確立する。さらに、抗原応答ゲート膜の作製と金コロイドの透過特性に重点的に取り組み、新規イムノクロマト法の設計指針確立し、実際の性能をデモンストレーションする。

公開日・更新日

公開日
2009-04-14
更新日
-