食品用器具・容器包装等の安全性確保に資する研究

文献情報

文献番号
202124003A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等の安全性確保に資する研究
課題番号
19KA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 片岡 洋平(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,625,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、新規材質の開発、再生材料の使用、諸外国からの輸入品の増加等により製品が多様化しており、規格試験法の信頼性や市販製品の安全性確保の面で課題が生じている。さらに、令和2年6月より器具・容器包装のポジティブリスト(PL)制度が施行されたが、物質の同定や品質確認等を目的とした分析法の整備が不十分である。そこで本研究では、規格試験法の性能に関する研究として、ジフェニルカーボネート(DPC)、アミン類、メタクリル酸メチル(MMA)試験法の改良分析法に関する検討、並びに総乳酸試験法の性能評価、市販製品に残存する化学物質に関する研究として、合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質(NIAS)の探索、乳幼児用玩具における過マンガン酸カリウム(KMnO4)消費量と総有機炭素(TOC)量の関係性の検証、PVC製乳幼児用おもちゃに使用される可塑剤の実態調査、容器の材質、内容物等の違いによる電子レンジ加温時の温度の確認、PL制度施行に伴う分析法の開発として、PL収載物質を対象とした分析情報を収集した。
研究方法
規格試験の性能に関する研究では、食品衛生法における規格試験法について、民間の登録検査機関及び公的な衛生研究所による試験室間共同実験による性能評価、協力研究者による規格試験法の改良及び代替試験法の開発を行った。市販製品に残存する化学物質に関する研究では、協力研究者より研究課題を募り、市販製品を用いた基礎的研究及び実態調査を行った。ポジティブリスト制度施行に伴う分析法の開発では、国内の主要分析機器メーカーと共同でGC-MS及びLC-MS/MS分析を行うための情報を収集した。
結果と考察
規格試験法の性能に関する研究では、総乳酸試験法の性能評価、DPC、アミン類、MMA試験法の改良分析法に関する検討を実施した。総乳酸試験法の性能評価では、26試験所が参加する共同実験を実施し、RSDRとHorRat値を指標として評価した結果、規格の判定を行う分析法であることを確認した。DPC試験法については、ビスフェノールA等も同時に分析可能な改良分析法を構築した。その性能を評価した結果、真度、精度ともに良好な結果が得られた。アミン類試験法については選択性が高い質量分析計及びタンデム型質量分析計を利用した改良分析法を構築した。その性能を評価した結果、規格の適否判定を行うための分析法として利用可能で有用であると考えられた。ただし、充分な性能が得られない試験所もあった。HPLCを用いたMMA分析法については、試験溶液を調製後速やかにエタノールで10倍以上希釈することとし、MMA標準溶液は20%エタノール溶液からエタノール溶液に変更した。
市販製品に残存する化学物質に関する研究では、合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質の探索、乳幼児用玩具におけるKMnO4消費量とTOC量の関係性の検証、PVC製乳幼児用おもちゃに使用される可塑剤の実態調査、容器の材質、内容物等の違いによる電子レンジ加温時の温度の確認を実施した。合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質の探索では、5種類の汎用添加剤を練りこんだ試験片の作製工程における含有化合物の変化を確認した結果、種々の化合物が確認された。乳幼児用おもちゃについては、KMnO4消費量及びTOC量の相関について検討した。その結果、KMnO4消費量とTOC量には正の相関がみられ、KMnO4消費量とTOC量の比は最大で約3倍であった。市販ポリ塩化ビニル製おもちゃに使用される可塑剤を調査では、テレフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)が主要な可塑剤として使用されており、その他の可塑剤は使用頻度が減少していた。その他、アセチルクエン酸トリブチルからクエン酸トリブチルへの切り替え、アジピン酸エステル系可塑剤の使用の減少等が確認された。電子レンジ加熱時の液体または液状食品を電子レンジ加熱する際の適切な加熱時間を検証した。出力数と加熱時間は理論通り反比例の関係にあった。また、材質の違いが加熱対象物の温度に与える影響も小さいく、加熱対象物の形状や量を変える場合は、加熱時間は対象物の表面積を考慮する必要があった。
PL制度施行に伴う分析法の開発では、PL制度施行に伴う物質の同定や確認を目的として、PL収載物質(候補物質も含む)約220物質を対象に、GC-MS及びLC-MS/MS分析を行うための情報収集し、マススペクトル、定量イオン、確認イオン、測定限界、保持指標等の公開データベースを作成した。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2022-09-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-09-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202124003B
報告書区分
総合
研究課題名
食品用器具・容器包装等の安全性確保に資する研究
課題番号
19KA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 片岡 洋平(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、新規材質の開発、再生材料の使用、諸外国からの輸入品の増加等により製品が多様化しており、規格試験法の信頼性や市販製品の安全性確保の面で課題が生じている。さらに、令和2年6月より器具・容器包装のポジティブリスト(PL)制度が施行されたが、物質の同定や確認等を行うための分析法の整備が不十分である。そこで本研究では、器具・容器包装等の安全性に対する信頼性確保及び向上を目的として、規格試験法の性能に関する研究、市販製品に残存する化学物質に関する研究、ポジティブリスト制度施行に伴う分析法の開発を実施した。
研究方法
規格試験の性能に関する研究では、食品衛生法における規格試験法について、民間の登録検査機関及び公的な衛生研究所による試験室間共同実験による性能評価、協力研究者による規格試験法の改良及び代替試験法の開発を行った。市販製品に残存する化学物質に関する研究では、協力研究者より研究課題を募り、市販製品を用いた基礎的研究及び実態調査を行った。ポジティブリスト制度施行に伴う分析法の開発では、国内の主要分析機器メーカーと共同で機器分析を行うための情報を収集した。
結果と考察
規格試験法の性能に関する研究では、器具・容器包装のビスフェノールA溶出試験法、ジブチルスズ化合物試験法、フタル酸エステル試験法、ジフェニルカーボネート試験法、アミン類試験法、メタクリル酸メチル試験法の改良法の開発、ビスフェノールA溶出試験法、改良ビスフェノールA溶出試験法、総乳酸試験法、並びに洗浄剤におけるメタノール分析法の性能評価を実施した。その結果、規格試験法の性能把握や問題点の抽出を行うことができた。また、開発した改良法を規格試験として採用することにより、試験精度の向上、試験時間の短縮、試験経費の削減などの効果が見込まれる。この成果は及び試験検体数の増加にもつながるため厚生労働行政に大きく貢献できるほか、消費者の市販製品の安全性に対する信頼性の確保に貢献できる。
市販製品に残存する化学物質に関する研究では、食品衛生法における酸性食品の食品区分とその擬似溶媒に関する検討、合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質の探索、食品用器具・容器包装製品に使用される添加剤に対する電子レンジ使用時のマイクロ波の影響、電子レンジ対応PETボトルの安全性に関する検証、容器の材質、内容物等の違いによる電子レンジ加温時の温度の違い、乳幼児用玩具における溶出液中の過マンガン酸カリウム消費量と総有機炭素量の関係性の確認、PVC製乳幼児用おもちゃに使用される可塑剤の実態調査を実施した。その結果、規格基準が設定されていない物質等について、製品中の残存量や食品等への移行量の実態を明らかにした。これらの結果は、器具・容器包装等の安全性を確保及び向上させるための規格基準の改正や製品の検査・監視等に有用である。
ポジティブリスト制度施行に伴う分析法の開発では、GC-MS、ヘッドスペース(HS)-GC/MS、LC-MS/MSによる分析を試み、保持時間、マススペクトル、測定限界等の分析に関する情報を収集した。これらの情報に、化合物情報(化合物名、CAS No.、組成式、分子量、構造等)、ポジティブリスト収載情報および各化合物の紫外可視吸収スペクトルを加えたデータベースを作成した。本データベースはPL制度における物質の同定や確認等の分析を行う際の参考情報となりうる。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2022-09-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202124003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現行の試験法について、試験室間共同試験および改良法の検討を実施した。さらに、市販製品の安全性を確認・確保するための分析法開発や実態調査を行った。関連研究について、令和元年度から3年度末ま元の3年間に,7報の論文報告と8件の学会発表等を行った。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
講習会または講演会において研究成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
9件
講演9件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202124003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,625,000円
(2)補助金確定額
15,625,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,467,146円
人件費・謝金 0円
旅費 33,988円
その他 4,123,866円
間接経費 0円
合計 15,625,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-