建設現場における建設工事従事者を対象とする新たな安全衛生確保のための制度構築に資する研究

文献情報

文献番号
202123012A
報告書区分
総括
研究課題名
建設現場における建設工事従事者を対象とする新たな安全衛生確保のための制度構築に資する研究
課題番号
21JA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
平岡 伸隆(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 吉川 直孝(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 大幢 勝利(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,706,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では,一人親方等は労働安全衛生法上の労働者には当たらないため,同法の直接の保護対象には当たらないが,建設工事の現場では,他の関係請負人の労働者と同じような作業に従事しており,その業務の実情,災害の発生状況等からみて,技能を持った建設工事の担い手である一人親方等の安全及び健康の確保について,特段の対応が必要であると考えられる。一人親方等の労働安全衛生に関する行政施策が記載された「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(以下,建設職人基本法という)」が平成29年3月16日に施行された。さらに建設職人基本法に基づく基本計画(平成29年6月閣議決定)に「一人親方等の安全及び健康の確保」が掲げられ,厚生労働省では,平成30年度から,一人親方等に対する研修や指導にかかる事業を実施している。こうした背景を踏まえ,本研究では,次期災防計画(令和5年度開始)の策定作業等において,一人親方等の安全及び健康の確保対策に活用するための基礎的知見を得ることを目標とする。
一人親方等の労働安全衛生の行政施策のモデルとして既にこうした法令・施策が採られている可能性のある諸外国の法制度,運用方法およびその実態について調査することが有効であると考えられる。
そこで本分担研究では,一人親方等に対する労働安全衛生施策を既に実行している可能性が高く,なおかつ災害件数の少ない英国をはじめとして,その他欧州各国の建設現場における建設工事従事者に関する法制度とその運用の実情を把握することを目的とする。
研究方法
一人親方等の労働安全衛生の行政施策のモデルとして既にこうした法令・施策が採られている可能性のある諸外国の法制度,運用方法およびその実態について調査することが有効であると考えられる。
一人親方等に対する労働安全衛生施策を既に実行している可能性が高く,なおかつ災害件数の少ない英国をはじめとして,その他欧州各国の建設現場における建設工事従事者に関する法制度とその運用の実情を把握する。
さらに,建設職人基本法に基づく一人親方等に対する指導・支援の実情を把握し,日本における課題を明らかにするとともに,欧州の取組等で日本でも効果が見込まれる対策,事項等について明らかにする。
結果と考察
英国では自営業者の義務について労働安全衛生法に記載されており,それによると,自営業者自身および他人に健康および安全に危険を及ばないようにする義務がある。他人にリスクを生じさせるかどうかが,労働安全衛生法が免除されるか否かの判断基準になり,周囲にリスクを生じさせる建設業においては,適用されることになる。
このように日本の労働安全衛生法とは大きく法の建て付けが異なることから,英国の行政政策を直接的に参考にすることはできないが,建設業の自営業者の死亡率の低さなどは,学ぶべき箇所があると思われ,引き続き調査を進めていく。
また文献調査からは,英国の建設業に従事する自営業者に対する安全衛生教育について,その具体的な方法はわからなかった。業界団体が立ち上げたCSCSカードによって各個人の技能および安全衛生知識が担保されているようだが,日本における新規入場者教育の実態などについて,ヒアリング調査等によって明らかにする必要がある。

日本における一人親方の労働安全衛生について述べる。土木事業者,設計コンサルタント,ハウスメーカー,設備事業者にヒアリング調査を実施した結果,建設業において一人親方等の作業内容は労働者とほとんど同等であり,建築・土木事業の両方で一人親方等と労働者の区別はしていない現状にあった。安全衛生への教育については,全ての事業者が新規入場者教育時に実施しており,これは労働者と一人親方の区別なく実施していた。
厚生労働省や国土交通省では,労災保険の特別加入制度への加入を促進しており,建設現場によっては加入が義務化されている現場があり,未加入の場合は働けないという環境に変化しつつある。
また,国土交通省はCCUSへの登録を推進しており,土木事業者はこれに則り導入を勧めている。ただし,戸建住宅建設工事など小規模の工事現場では導入への技術的な問題,経済的な負担,各社が開発した類似の既存システムがあることから,導入が遅れている。
結論
本年度は,英国の自営業者および日本の事業者の一人親方等に対する安全衛生教育方法について調査した。
英国について文献調査で得られた知識をもとに,ヒアリング調査によってその実態を把握する必要がある。またその他の欧州各国や,シンガポール,韓国といったアジア諸国についても,自営業者(一人親方等)に対する行政政策について調査していく。

国内においては,ヒアリング調査対象の事業者を拡大し,一人親方を対象とした労働安全衛生教育の方法やその実態について調査する。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202123012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,817,000円
(2)補助金確定額
4,492,000円
差引額 [(1)-(2)]
325,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,269,000円
人件費・謝金 1,266,000円
旅費 217,000円
その他 629,000円
間接経費 1,111,000円
合計 4,492,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
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