労働災害防止対策の推進とESG投資の活用に資する調査研究

文献情報

文献番号
202123010A
報告書区分
総括
研究課題名
労働災害防止対策の推進とESG投資の活用に資する調査研究
課題番号
20JA1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
永田 智久(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 金藤 正直(法政大学 人間環境学部)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,459,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は労働安全衛生活動に関するESG情報開示のエビデンス・良好事例集、および、行政の関与方法に関する提言を作成することを目的とする。研究目的を達成するために、以下の研究を実施した。
(1)ESG情報開示制度調査
1.ESG評価インデックスプロバイダーおよびESG評価会社の労働安全衛生に関する評価項目の情報収集およびインタビュー調査
2.ビジネスと人権に関する指導原則の全体像と安全衛生の関連調査
3.欧米と日本における企業の労働安全衛生活動の歴史的背景と現状
(2)ESG実態調査
4.サプライヤー管理に関する安全衛生に関する優良企業事例インタビュー調査
5.健康経営優良法人認定企業(中小規模法人部門)における情報開示の現状
6.CSR関連報告書から見たESG活動と産業保健活動の実態(台湾での調査)
7.ESG における労働安全衛生開示の良好事例に関するインタビュー調査(大企業)
(3)ESGニーズ調査
8.機関投資家に対するESGニーズ調査
研究方法
既存の資料の文献レビュー、関係者へのインタビュー調査、ホームページで社外に公開されているCSR関連報告書等の調査、および、機関投資家へのアンケート調査を行った。
結果と考察
(1)ESG情報開示制度調査では、ESG評価インデックスプロバイダーは、産業セクターごとにリスクに応じて評価を行っており、活動拠点と合わせて適用されるESGの指標の数や内容を変えていた。企業はそのことを認識する必要がある。日本企業の情報開示の特徴は、開示が弱く、関連の情報が外部に伝わりにくいことである。特に経営層の関与についての開示が弱点である。この点は、改善が必要である。労働安全衛生は、「ビジネスと人権に関する指導原則」や人的資本の情報開示等、関連する分野が多い。2022年度の研究では、この全体像を表現する資料を作成する。
(2)ESGに関連する実態調査では、アパレル企業で、取引先の労働安全衛生をSAQを使用して調査し、また、調達方針を定めて管理していた。このような良好事例は、通常の労働安全衛生でも応用できるものである。中小企業においても、情報開示における工夫では、わかりやすい表現をする、絵文字や写真を利用する、ページをカラフルにする等がみられた。取組みや情報発信の効果では、ホームページやSNSへの反応やコメントが増加している等の社外の反応とともに、社内では健康意識があがることが実感されており、中小企業のおける情報開示のインセンティブとなる。台湾の上場企業調査では、労働安全衛生の開示率が高かった。これは、取引市場が指針を示し、徹底していることが大きな要因であった。日本の開示の優良企業(大企業)であっても、取締役会で報告・審議されていることについて、「労働安全衛生」と「健康経営」の開示をしている企業はなく、取締役会における報告・審議の透明性が図れていない状況である。これは先の指摘と整合的であり、日本が改善すべきポイントである。
(3)ESGニーズ調査のためのアンケートに回答した機関は、24機関(回答率9.9%)であった。 ESGのS(social)のなかに、①労働安全衛生、②健康経営(働く人の健康)、③取引先企業(サプライチェーン)の労働安全衛生が含まれることについては、60%以上の機関が認識していた。ESG投資のおける労働安全衛生および健康経営の重要度について、労働安全衛生および健康経営については、中期(3~5年)、長期(5~30年)ともに半数以上の機関で重視していた。次に、投資判断やエンゲージメントで重視する項目について尋ねた。労働安全衛生において、非常に重要であると認識していた機関は、労働災害件数(死傷者数も含む)が最多で14機関、次いで労働安全衛生の基本方針の制定11機関、労働安全衛生の担当者への教育・研修(11機関)、労働安全衛生に関する労働者研修(10機関)であった。健康経営では、長時間労働等の働き方に関する状況(15機関)、メンタルヘルス対策に関すること(15機関)であり、経営上のリスクとなりうる、あるいは現状課題となっている健康リスクを重視している投資家が多かった。取引先企業の労働安全衛生については、調達/取引に関する基本方針と労働災害への改善策とその進捗・結果を重視していた(11機関)。労働安全衛生・健康経営に関する情報の入手先は、ホームページ(14機関)、報告書(アニュアルレポートやCSR/ESG報告書等)(13機関)であった。
結論
ESG、SDGsの観点から労働安全衛生に関する情報を集約することができた。2022年度では、現時点で不足している諸外国の情報を補完しつつ、3年間の研究結果を統合し、ESG情報開示のエビデンス・良好事例集、および、行政の関与方法に関する提言を行う。

公開日・更新日

公開日
2022-10-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-10-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202123010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,332,000円
(2)補助金確定額
6,646,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,686,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 409,321円
人件費・謝金 1,116,920円
旅費 0円
その他 3,247,232円
間接経費 1,873,000円
合計 6,646,473円

備考

備考
差額の473円は研究代表者が負担した。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-