今後の社会情勢や助産師の活躍の場の発展を見据えた技術教育の内容及び方法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202122059A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の社会情勢や助産師の活躍の場の発展を見据えた技術教育の内容及び方法の確立のための研究
課題番号
21IA2012
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
村上 明美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 千絵(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 渡邊 典子(新潟青陵大学 看護学部)
  • 渡邊 浩子(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 眞鍋 えみ子(同志社女子大学 看護学部)
  • 和泉 美枝(同志社女子大学 看護学部)
  • 松崎 政代(大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻)
  • 浅見 恵梨子(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部)
  • 野原 留美(香川大学 医学部看護学科)
  • 宮川 幸代(同志社女子大学 看護学部)
  • 藤井 宏子(岡山大学 学術研究院保健学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,369,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健師助産師看護師学校養成所指定規則において、助産学実習では学生1人につき分べん介助を10回程度行わせることが規定されているが、社会情勢の変化や新興感染症の影響により分べん介助の機会を得ることが難しく、学内演習に代えて必要な知識・技術を修得している。
本研究は、上記背景から実習施設や分べん件数の確保が困難である等の教育環境において、助産師教育の充実を図る教育内容・体制を提案することを目的に実施する3年計画の1年目に当たる。
(1)助産師養成課程における助産師の実践能力を育成する教育方法と得られる能力、評価に関する文献検討、(2)「助産師学校養成所における分べん介助能力修得に関する実態調査、(3)分べん介助技術能力修得に関する助産師学校養成所のインタビュー調査から、国内外の助産師の技術教育の内容と方法、効果を把握する。
研究方法
(1) 国内外の主要なデータベースを用いて、2000年以降に発表された量的・質的研究を対象に文献レビューを行った。また、検討資料となる諸外国の分べん介助基準・指針等の情報を各国の助産師関係団体・機関のWEB等から収集した。
(2) 横断的にインターネット調査を実施した。全国の助産師学校養成217課程の教務主任/教育責任者に回答を求めた。神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(保大第 5-21-20)。
(3) 全国助産師学校養成所の中で分べん期のケア実践能力修得教育のgood practiceとされる10校を対象にインタビューガイドに沿って半構成的インタビューを行い、質的に分析した。新潟青陵大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(202102号)。
結果と考察
(1)採択された10件の海外文献では、高機能シミュレーターは主として異常分娩事例の技術修得に活用されていた。シミュレーション教育はトレーニングを重ねることでスキルを達成するまの時間を短縮できるが、臨床実習の代替とはならないことが示された。
採択された10件の国内文献では、正常経過の産婦に対する助産実践能力の評価としてOSCEが活用され、効果的なOSCEには学生の準備性の把握,実施後の振り返りが必要であることが指摘された。
海外では患者体験型のVR教材や、仮想環境内のアバターを用いた技術修得のシミュレーション教育等が始まっている。日本ではシミュレーション教育の取り組みは始まったばかりで教育効果は十分に明らかになっていない。
日本においても、学生がいつでもどこでも活用でき、的確な技術修得に繋がる教材の活用が期待される。
(2)回答を得た100校(有効回答率46.1%)のうち85校(85.0%)がCovid-19感染拡大により臨地実習に影響があり、学内における学習活動の強化や、臨地と学内をオンラインでつないだ事例検討等の工夫が報告された。
学生の分べん介助技術の到達度は、2019年度と2020年度でほぼ変わらず、両年度とも学生の分べん介助技術の到達度が低い項目は、「分べんの進行状態を診断する」「分べんの進行に伴う産婦と家族のケアを行う」等であった。具体的な分べん介助技術に関しては、「肩甲娩出」「最小周囲経での児頭娩出」等で到達度が低かった。
今後は、臨地でなければ学べない内容、臨地でなくても学べる内容を整理し、DX等を活用した分べん介助技術の修得に最適な教育プログラム開発が必要である。
(3)学内演習では、分べん介助技術を中心とするテクニカル・スキルの育成において多様な臨床との協働による効果が示された。しかし、学内演習では個別性や状況に合わせた診断や技術、態度、コミュニケーション力、専門職としての自覚、倫理観等の育成は難しいと認識され、最大の課題はリアリティの再現であった。また、分べん直接介助以外の実習からも、分べん介助技術の修得に繋がる多くの学びが得られていた。
今後は分べん期ケア実践能力修得に向け、経腟分べん介助実習以外の学びの可視化や、リアリティの再現性が高いシミュレーターの開発や、模擬産婦養成によるOSCEの充実等への期待が高まると考える。
結論
次年度に取り組む「教育プログラム(案)の作成」に向けて、以下の示唆を得た。
1) 教育プログラム作成(案)の時点から、学生の知識や技術の準備性を把握し、実施後の振り返りを組み入れた内容にすること、評価指標を明示したうえで教育効果の評価を行うこと。
2) 学内実習でも分べん介助技術の修得がある程度期待できることから、分べん介助技術の到達度の低い内容を意識し、かつ、学内において「肩甲娩出」「最小周囲経での児頭娩出」等の技術教育を強化すること。
3) 学内での技術修得に当たっては、リアリティの再現性を考慮した教材を活用し、経腟分べん介助以外の実習でも修得できる分べん介助技術を明確にして、多様な場面で分べん介助技術教育を強化すること。

公開日・更新日

公開日
2023-07-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122059Z