レジリエント・ヘルスケアによる医療の質向上・安全推進に資する研究

文献情報

文献番号
202122048A
報告書区分
総括
研究課題名
レジリエント・ヘルスケアによる医療の質向上・安全推進に資する研究
課題番号
21IA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中島 和江(国立大学法人 大阪大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 京太(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部)
  • 北村 温美(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部)
  • 徳永 あゆみ(大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部)
  • 田中 晃司(大阪大学大学院 外科学講座 消化器外科学)
  • 中川 慧(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 後藤 隆久(横浜市立大学 医学部)
  • 伊藤 英樹(滋賀医科大学 呼吸循環器内科)
  • 滝沢 牧子(群馬大学大学院 医学系研究科 医療の質安全学講座)
  • 安部 猛(横浜市立大学 附属市民総合医療センター)
  • 岡田 浩(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
  • 桑田 成規(国立循環器病研究センター)
  • 佐藤 仁(横浜市立大学附属市民総合医療センター 麻酔科)
  • 櫻井 淳(日本大学 医学部救急医学系救急集中治療医学分野)
  • 竹屋 泰(大阪大学 医学部)
  • 中島 伸(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 総合診療部)
  • 谷浦 葉子(大阪大学医学部附属病院 看護部)
  • 小野 和代(東京医科歯科大学 統合診療機構)
  • 上間 あおい(大阪大学 医学部附属病院)
  • 木下 徳康(大阪大学医学部附属病院 薬剤部)
  • 佐々木 一樹(大阪大学 医学部)
  • 波多 豪(大阪大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来型の安全マネジメント(Safety-I)は、インシデントへの「分析的アプローチとリニアモデル」による事故説明を特徴としているが、これに基づく対策は複雑適応系であるヘルスケアシステムにおける実効性に限界があることが指摘されている。近年、レジリエンス・エンジニアニリング理論とその医療版であるレジリエント・ヘルスケア(RHC)理論が提唱され、「統合的アプローチとノンリニアモデル」に基づく新しい安全マネジメント(Safety-II)が発展しつつある。これは擾乱と制約のある環境を前提として、人々のパフォーマンスの調整とそれらの相互作用から生ずるシステム全体のパフォーマンスを理解し、先行的安全マネジメントを行うものである。しかし、本アプローチを医療現場で実践する手法を医療者が学習するための教育リソースは未整備である。そこで本研究では、RHC理論に基づく医療安全への統合的アプローチを実践するための教育リソース「RHC教育・実践ガイド」を開発することを目的とし、これらを用いて全国の医療機関で先行的安全マネジメントが展開できるようにすることを目指すものである。
研究方法
研究1年目である今年度は全8回の研究班会議を開催し、これまでのRHCに関係する国際学会や研究会議での知見、RHCに関連する論文、諸外国のRHC関連教材、および研究班メンバーの臨床医学における統合的アプローチ例、RHC実践例、教育例等を集約し、ディスカッションを通じて「RHC教育・実践ガイド」に盛り込むべき内容を抽出し、解説つきスライドや動画などを教材として作成した。
結果と考察
「RHC教育・実践ガイド」に盛り込むべき内容として、RHC理論のキーコンセプト(15用語)、先行的安全マネジメントの実践例(8例)、ノンリニア分析手法(2例)、IV. 統合的アプローチを踏まえた教育手法(2例)を抽出した。
15のキーコンセプトは次のとおりである。①レジリエンス・エンジニアリング(レジリエント・ヘルスケア)理論、②Safety-I & Safety-II、③レジリエンス、④統合的アプローチ、⑤複雑適応、⑥ETTOの原理、⑦ヒューリスティックス、⑧パフォーマンスの調整/変動、⑨「実際の仕事のやり方(WAD)」と「想像上の仕事のやり方(WAI)」、⑩流暢の法則、⑪分析の原則―日常業務を対象とする、システムを広く見る、⑫非線形モデル、⑬境界を越えた協働、⑭レジリエンス発揮に必要な4つのポテンシャル、⑮優美な拡張性。
12の実践・教育例は次のとおりである。①業務の上流での変動の制御、②WAIとWADのギャップを埋めるためのパフォーマンスの調整と潜在リスクの同定、③日常業務に潜むパフォーマンス変動要因の把握、④チーミングによるチームや組織におけるレジリエンスの発揮、⑤自律分散制御と情報、⑥COVID-19におけるgraceful extensibilityの発揮、⑦患者同士のピアサポートを通じた効果的で効率的なpatient journey支援、⑧手術チームメンバーの術中コミュニケーションに見られる動的特徴、⑨因果ループ図によるシステミック問題と介入ポイントの同定、⑩機能共鳴分析手法を用いた事故分析、⑪柔軟なパフォーマンスを促す新しい教育プログラム、⑫統合的視点の獲得を教育目標とした研修プログラムの開発。キーコンセプトと⑦⑧⑩⑫を除く教材については、今年度にほぼ完成した。また、開発した教材を社会に公開するための専用Webサイトのデザインを検討した。開発した教材に見られる統合的アプローチによる先行的安全マネジメントの主要なドメインは、①動的システムである複雑適応系の制御とリデザイン、②レジリエンス発揮のためのチームや組織マネジメント、③つながりやネットワークの解明であった。
RHC理論のキーコンセプトには複雑系科学の難解な概念が多いことから、イラスト等を用いたわかりやすい解説が必要である。また、Safety-IIの実践上の課題として、①どのように日常業務から教訓を得るのか、②ノンリニアな分析手法にはどのようなものがあり、介入策をどのように同定するのか、③Safety-IIが安全性を向上するという科学的エビデンスはあるのか、④Safety-IとSafety-IIをどのように使い分けるのか等が知られており、「RHC教育・実践ガイド」には、これらの課題を克服できるような情報を盛り込む必要がある。さらに、医療安全施策におけるSafety-IIの具体的な展開方法についても検討を要する。
結論
医療安全への統合的アプローチであるSafety-IIの「RHC教育・実践ガイド」の教育コンテンツの開発を行った。次年度はコンテンツを完成させ、産業安全のエキスパートや医療者等から開発教材に関するフィードバックを得て、内容のブラッシュアップを図る予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-22
更新日
2023-07-19

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,332,274円
人件費・謝金 33,000円
旅費 0円
その他 334,726円
間接経費 800,000円
合計 3,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-06-22
更新日
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