貝毒を含む食品の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
200837025A
報告書区分
総括
研究課題名
貝毒を含む食品の安全性確保に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
安元 健(財団法人 日本食品分析センター多摩研究所 試験研究部分析化学課)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 泰克(北里大学海洋生命科学部)
  • 関口 礼司(財団法人 日本食品分析センター東京本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 有毒プランクトンの発生により二枚貝に蓄積される貝毒は、麻痺性貝毒、下痢性貝毒、神経性貝毒、記憶喪失性貝毒、アザスピロ酸貝毒等に区分され、モニタリングが実施される。現在、規制の根拠となる基準値の適性化が世界的に進められており、その実現には簡便、高精度、高信頼性の測定法が求められている。本研究の目的は主要な有機溶媒可溶毒群の14成分と主要麻痺性貝毒10成分について、それぞれLC-MS及びポストカラム蛍光化HPLCによる一斉分析法を完成し、さらに標準毒を作製することにある。
研究方法
 標準毒作成:有機溶媒可溶毒は、添加回収試験と分析外部標準に必要な国内出現毒10成分と海外出現毒4成分を調製する。麻痺性貝毒は,分析に必要な主要10成分と標準毒のセットを調製する。

 分析条件の検討:有機溶媒可溶毒一斉分析法は次の3方針で行った。①国内の公定法に従い中腸腺を抽出試料とする,②迅速・簡便性を目指し抽出液の前処理等を行わない,③エステル型下痢性貝毒の測定は合成標準品を用いるので加水分解は行わない。
麻痺性貝毒ポストカラム蛍光化HPLC分析法では、従来法に加えて単一カラム一斉分析法を開発する。
結果と考察
標準毒作成:
 DTX1は低純度試料の処理・エステル合成方法を検討し,精製技術を開発した。また,金属塩形成によるNMR異常スペクトルを解決した。
 麻痺性貝毒は主要標準毒混合液と二枚貝抽出液試料を調製した。
分析条件の検討:
 二枚貝の採取地と採取季節を従来と変えて添加回収試験を行った。規制値の十分の一に相当する低濃度での回収率はホタテガイでは良好であったが,ムラサキイガイではOAとDTX1が150%を超えることがあり,今後の検討が必要と判断された。
 麻痺性貝毒のポストカラム蛍光化HPLC従来法に加えて、単一カラムによる一斉分析法を開発した。
結論
1)低品質原料から標準毒を確保する道を開いた。
2)わが国の下痢性貝毒監視に最も重要なDTX1,DTX3を含めた主要14成分の標準毒を確保した。
3)1H-NMRに於ける異常スペクトルの問題を解決した。
4)新たにhomoYTXの標品を調製した。
5)マトリックス妨害の大きくなる冬季二枚貝の抽出液でもLC-MS適用の見通しを得た。
6)麻痺性貝毒の一斉分析法に最適の資材を見出し、標準毒及び二枚貝抽出液からなる分析試料を
  調製した。また,ベースラインの乱れの原因となる不純物を発見し,問題を解決した。
7)溶離液、カラム、プログラムを工夫し、単一カラムによる麻痺性貝毒一斉分析を可能にした。

公開日・更新日

公開日
2009-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200837025B
報告書区分
総合
研究課題名
貝毒を含む食品の安全性確保に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
安元 健(財団法人 日本食品分析センター多摩研究所 試験研究部分析化学課)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 泰克(北里大学海洋生命科学部)
  • 関口 礼司(財団法人 日本食品分析センター東京本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 有毒プランクトンの発生により二枚貝に蓄積される貝毒は、麻痺性貝毒、下痢性貝毒、神経性貝毒、記憶喪失性貝毒、アザスピロ酸貝毒等に区分され、モニタリングが実施される。現在、規制の根拠となる基準値の適性化が世界的に進められており、その実現には簡便、高精度、高信頼性の測定法が求められている。本研究の目的は主要な有機溶媒可溶毒群の14成分と主要麻痺性貝毒10成分について、それぞれLC-MS及びポストカラム蛍光化HPLCによる一斉分析法を完成し、さらに標準毒を作製することにある。
研究方法
標準毒作成:有機溶媒可溶毒は、添加回収試験と分析外部標準に必要な国内出現毒10成分と海外出現毒4成分を調製する。麻痺性貝毒は,分析に必要な主要10成分と標準毒のセットを調製する。

分析条件の検討:有機溶媒可溶毒一斉分析法は次の3方針で行った。①国内の公定法に従い中腸腺を抽出試料とする,②迅速・簡便性を目指し抽出液の前処理等を行わない,③エステル型下痢性貝毒の測定は合成標準品を用いるので加水分解は行わない。
麻痺性貝毒ポストカラム蛍光化HPLC分析法では、従来法に加えて単一カラム一斉分析法を開発する。
結果と考察
標準毒作成:
 DTX1は低純度試料の処理・エステル合成方法を検討し,精製技術を開発した。また,金属塩形成によるNMR異常スペクトルを解決した。
 麻痺性貝毒は主要標準毒混合液と二枚貝抽出液試料を調製した。
分析条件の検討:
 二枚貝の採取地と採取季節を従来と変えて添加回収試験を行った。規制値の十分の一に相当する低濃度での回収率はホタテガイでは良好であったが,ムラサキイガイではOAとDTX1が150%を超えることがあり,今後の検討が必要と判断された。
 麻痺性貝毒のポストカラム蛍光化HPLC従来法に加えて、単一カラムによる一斉分析法を開発した。
結論
1)低品質原料から標準毒を確保する道を開いた。
2)わが国の下痢性貝毒監視に最も重要なDTX1,DTX3を含めた主要14成分の標準毒を確保した。
3)1H-NMRに於ける異常スペクトルの問題を解決した。
4)新たにhomoYTXの標品を調製した。
5)マトリックス妨害の大きくなる冬季二枚貝の抽出液でもLC-MS適用の見通しを得た。
6)麻痺性貝毒の一斉分析法に最適の資材を見出し、標準毒及び二枚貝抽出液からなる分析試料を
  調製した。また,ベースラインの乱れの原因となる不純物を発見し,問題を解決した。
7)溶離液、カラム、プログラムを工夫し、単一カラムによる麻痺性貝毒一斉分析を可能にした。

公開日・更新日

公開日
2009-04-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200837025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 わが国で出現する主要毒を含め14成分の脂溶性標準毒を作製し、新たにLC-MSによる脂溶性毒群の一斉分析法を開発した。さらに本法の実用性を検証し、再現性、検量線の直線性、回収率について良好な結果を得た。
 麻痺性貝毒は入手が困難だったGTX6及びGTX5を含め主要毒10成分を精製した。tert-ブタノールを内部標準とする定量的NMR法により高精度の新しい濃度決定法を開発した。また蛍光HPLC法による一斉分析法を確立した。これまで正確なデータが無かったGTX6及びGTX5のマウス毒性値を決定した。
臨床的観点からの成果
 二枚貝に蓄積される貝毒は、毒成分の種類により麻痺性貝毒、下痢性貝毒、神経性貝毒、記憶喪失性貝毒、アザスピロ酸貝毒に区分されている。いずれもマウス腹腔内注射による致死毒性を指標として定量されている。マウス法は全ての毒を検出し、高価な機器を必要としない利点があるものの、毒の種類を特定できず、試料調製と結果の判定に長時間を要する。また、動物愛護の観点から実施数を最小限とすることが望まれている。
 本研究で開発した方法は、高度化・高精度化された貝毒の測定方法として、マウス法の代替法となる。
ガイドライン等の開発
 本研究で開発されたLC-MS法による脂溶性毒群の一斉分析、蛍光HPLC法による麻痺性貝毒のC群を含めたゴニオトキシン群及びサキシトキシン群の一斉分析法は、CODEXから提案が予想される低い許容値や毒成分に特異的な規制値の設定に対応できる方法である。しかも分析機器の機種による性能差や対象二枚貝の違いに起因するマトリックス効果を補正するのに必要な標準毒も併せて作製したことで注目を浴び、国際的認証を行うAOACなどでの講演依頼が相次いだ。
その他行政的観点からの成果
 分担研究者は,食品安全委員会かび毒・自然毒等専門調査会 の専門委員として、第6回食品安全委員会かび毒・自然毒等専門調査会(平成18年10月30日(月))において、
「海産自然毒―貝毒監視体制の現状と今後の問題-」の演題で話題提供を行った。研究代表者は、21年9月開催のAOAC年会で、Marine Biotoxin Monitoring in Japanと題する講演を依頼されている。
その他のインパクト
 主任研究者及び分担研究者は、2005年11月の第40回有毒微生物専門部会日米合同会議(UJNR)において、また、主任研究者は2005年12月の環太平洋国際化学会主催の PACIFICHEM 2005 における特別シンポジウム「海洋毒:その構造、毒性と検出」、AOAC年会(2007,2008)において、さらに分担研究者は2006年11月の第10回有毒微生物に関するシンポジウムにおいて、いずれも招待講演者として本研究の成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
 平成17年度から20年度日本水産学会において、有機溶媒可溶性貝毒のLC-MS測定用標準品作製、LC-MS法による一斉分析法の開発・改良・応用、麻痺性貝毒標準品調製法及びNMR定量法の開発を発表した。
学会発表(国際学会等)
10件
 2005年から2008年に開催された国際学会において、下痢性貝毒及びその他貝毒標準品の調製、これらを用いた一斉分析法の開発、麻痺性貝毒の定量NMR法及び一斉分析法に関する本研究成果について発表した。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-