第8次医療計画に向けた周産期センターの集約化・重点化と周産期医療を担当する医師の確保・専門教育に関する研究

文献情報

文献番号
202122036A
報告書区分
総括
研究課題名
第8次医療計画に向けた周産期センターの集約化・重点化と周産期医療を担当する医師の確保・専門教育に関する研究
課題番号
21IA1011
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 第8次医療計画策定のため、(1)周産期医療施設の集約化・重点化の必要性、(2)周産期医療を担う人材育成と周産期専門医の位置づけ、(3)一次施設と周産期センターのより有機的な連携、の3点を重点的に進めていくことが重要と考える。さらに、周産期医療関連施設を退院した児は、乳幼児期に呼吸器疾患などに罹患しやすいことが 知られている。障害児が生活の場で療養・療育できる体制の確保についても充分ではない。
 本研究の目的は、周産期医療施設の集約、重点化を図るとともに、周産期医療体制のソフト面とくに周産期医療を担当する医師の確保と専門教育を充実させ、さらに周産期医療から小児医療を切れ目なく行う体制作りを構築することである。
研究方法
 日本周産期・新生児医学会の周産期専門医制度規定の2015-19年の5年間の専門医研修施設診療実績報告から、総合周産期、地域周産期センターの診療実績スコアを作成した。また、2021年4月1日時点での産婦人科医師数、産婦人科専門医数、周産期専門医(母体・胎児領域)、J-CIMELS、NCPRのインストラクター数、災害時小児周産期リエゾン数、助産師数、アドバンス助産師数、助産師J-CIMELS、NCPRインストラクター数をアンケート調査し、産科医療人材スコアを作成した。診療実績スコアと産科医療人材スコアと比較し、相関を分析した。周産期専門医(母体・胎児)の人数毎の周産期診療実績スコアの変化について検討した。 
 また、診療実績評価、産科・新生児医療人材評価と分娩数、新生児搬送距離60分圏内、許可NICU病床数を参考にして、ArcGISPro(Esri CA, USA)、MANDARA(谷謙二)ソフトを用いて、全国の周産期センターをマッピングし、地域性を考慮した地図を作成した。
 周産期医療から小児医療へのスムーズな連携に関する研究では、2014年から2021年までに埼玉医大総合医療センターで出生後6か月以上の入院加療を受けた患児を見出し、診療体制、病態、転帰、小児医療への連携の課題について検討した。
結果と考察
 地域周産期センターの診療実績および産科人材は、双方ともに総合周産期センターの約半分であり、施設毎の差はあるものの、平均値としては妥当な結果と考えらえた。産科人材スコアについては、診療実績スコアと異なり、大学病院と大学病院以外で大きな差が見られ、資格取得や、教育の観点から、大学病院の重要性が改めて浮き彫りとなった。また、診療実績スコアと産科人材スコアについて、有意な相関が見られたことから、地域周産期センターの施設毎の機能評価を行う上で、本研究で用いた総合周産期センターを基準とした診療実績スコアおよび産科人材スコアは集約化を行う際の指標として有用であると考えられた。加えて、周産期専門医(母体・胎児)が2人以上いる地域周産期センターの診療実績スコアの平均値は、1人以下の施設より、診療実績が多かったことから、さらなる周産期専門医の養成および各施設への適切な配置は重要な課題である。また、都道府県別の検討において、地域差は大きく、地域格差を是正するような取り組み、制度の確立が求められる。
 NICU6床以上またはスコア合計平均以上の条件を満たす地域周産期センターは181/298施設だった。全国の主要分娩施設は、北海道、岐阜、京都の一部地域、離島を除き、総合周産期センターならびに条件を満たす地域周産期センターから新生児搬送救急車60分以内でカバーできている。
 周産期医療から小児医療への連携では、周産期医療の進歩により重症新生児の救命例は年々増加傾向にあり、超早産児の長期入院が増えていた。これらの長期入院患児は急性期を乗り切った後、いずれかの時点で新生児病棟から小児病棟に移ることが望ましいが、小児病棟へ移せた患児はいまだ6名に過ぎない。転棟を妨げている要因の一つは、新生児病床と小児病床の診療報酬の差にもあると考えられる。この差を無くし、さらに病棟間の連携を促すためにインセンティブをつけるような診療報酬の改定が望まれる。
結論
 総合周産期センターを基準とした診療実績スコアおよび周産科人材スコアは集約化を行う際の指標として有用である。また、周産期専門医の養成および適切な配置が重要であり、地域格差を是正するような取り組み、制度の確立が求められる。 
 最新の医療実績調査を加味した条件を満たす地域周産期センターの適正な検討が、周産期医療施設の集約化、周産期医療従事者の「働き方改革」に貢献できる可能性がある。
 また、出生後6か月以上にわたって入院加療を受けた患児の療養環境に配慮して、新生児病床を有効に利用する、という観点から、これらの長期入院患児の診療の場を新生児病棟から小児病棟へ移すことを考慮すべきである。

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
2023-11-15

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122036Z