データ駆動で地域の実情に応じて医療提供体制構築を推進するための政策研究

文献情報

文献番号
202122030A
報告書区分
総括
研究課題名
データ駆動で地域の実情に応じて医療提供体制構築を推進するための政策研究
課題番号
21IA1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 進(京都大学 医学研究科)
  • 原 広司(横浜市立大学 国際商学部)
  • 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
  • 猪飼 宏(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 廣瀬 昌博(島根大学 医学部)
  • 佐々木 典子(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,777,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域医療計画・地域医療構想の協議・立案に資するべく、地域の病床機能の分布と機能間の連携を把握する方法を研究開発し(以下1、2)、さらに、地域レベルの医療の質指標を開発した(以下3、4)。
1.病床機能報告より二次医療圏ごとの病棟の医療機能を評価する指標値、高度急性期と急性期の病棟数及び病床数の変化が把握できるツールを開発する。
2.レセプトデータを用い、脳梗塞入院患者の患者共有のネットワーク分析を行う。
3.レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用い、急性心筋梗塞(AMI)と脳梗塞に対する地域医療システムの質指標を二次医療圏ごとに算出する。
4.二次医療圏ごとに心筋梗塞患者のリスク調整死亡率を算出し、地域レベルの人口・経済学的因子、医療資源、PCI診療の集約化の指標との関連を調べる。
研究方法
1.2019年の病床機能報告(病棟票)より選択した項目を各病棟の稼働病床数で除し、その計を指標値とした。また、入院基本料における指標値の分布を可視化して閾値を設定し、高度急性期(指標値が閾値以上)の病棟数及び病床機能報告による高度急性期の病棟数を表示することで、その増減がシミュレーションできるツールを開発した。
2.某県の2013~2019年度の国保・後期高齢者医療制度のレセプトデータより急性期脳梗塞入院を同定し、それに連続する入院を脳梗塞による転院とみなしてネットワークを構築し、コミュニティ検出、中心性解析を行った。
3.NDBから2014~2020年度のAMIと脳梗塞入院症例を抽出し、二次医療圏ごとの地域医療システムの質指標を算出した。二次医療圏の症例数のばらつきによる指標値の不安定を改善するため、縮小推定量を算出した。
4.(1)多施設DPCデータ、厚労省の(2)DPC集計データと(3)NDBを使用した。(1)の2010~2018年度のAMI症例から作成したKillip分類などを用いた院内死亡予測モデルを用い、(2)より二次医療圏ごとのリスク調整死亡数を算出した。(3)より、集約化の指標として2016~2018年度の二次医療圏ごとの緊急PCI症例数に対するハイボリュームセンターで実施された症例数の比(ハイボリュームセンターへのアクセスの指標)を算出した。この指標と、二次医療圏の人口・経済的、医療資源関連因子を説明変数、リスク調整死亡率を目的変数とした部分的最小二乗(PLS)回帰分析を行った。
結果と考察
1.高度急性期病棟と報告していながら指標値が低い病棟、逆に急性期と報告していながら指標値の高い病棟があること、また指標値0となる病棟が存在した。本指標値を活用し、医療計画や地域の医療実態を鑑み、必要に応じて指標値の項目を変更することで、より適した指標値が作成できると期待される。
2.脳梗塞の転院ネットワークより、急性・回復・療養期の機能を持つ医療機関から構成されているコミュニティが特定された。急性期脳梗塞入院数は増加していない一方で転院数が増加しており医療機関間の連携が促進されていることが示された。
3.2014~2020年度の各指標の平均は、AMIに対する緊急PCI実施割合が65.7%から70.6%、1か月以内の心大血管リハビリテーション実施割合が44.4%から61.8%、脳梗塞に対するt-PA投与割合が4.9%から6.4%、2日以内の脳血管リハビリテーション実施割合が40.4%から55.1%に変化した。4つの指標において、二次医療圏の差が年々縮まっていたが、まだ大きいばらつきが存在した。
4.二次医療圏毎AMIのリスク調整死亡率は0.6から1.4までで、PLS回帰分析よりリスク調整死亡率と正の相関がある2つの成分が同定された。成分1は、高齢者の割合など、地方部の特徴と考えられる因子の負荷量がプラスで、成分2は、病院の密度が正、人口当たりの医師数が負であった。アクセスの指標の負荷量は2つの成分にて負であった。病院数が多くとも、高度診療へのアクセスが円滑ではない地域があり、集約化や連携などによる効率性もAMI死亡率と関連がある可能性が示唆された。
結論
地域医療計画・地域医療構想の協議・立案に資するべく下記の研究成果を挙げた。
1.病床機能報告を用い、二次医療圏ごとの病棟の医療機能(高度急性期、急性期など)を客観的に評価し機能ごとの病床数分布の把握を可能とした。
2.レセプトデータのネットワーク分析を活用し、地域医療の連携の実態をネットワークとして可視化し、数量化することを可能とした。
3.NDBを用い全国の二次医療圏の医療の質指標の算出を可能とした。
4.二次医療圏のAMIのリスク調整死亡率の算出を開発し、その死亡率に関連するものとして、医療資源量のほかに、一種の効率性を示唆する因子を定量的に示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202122030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,500,000円
(2)補助金確定額
7,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,148,129円
人件費・謝金 1,855,631円
旅費 85,490円
その他 2,687,750円
間接経費 1,723,000円
合計 7,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-01-10
更新日
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