輸入食品における食中毒菌サーベイランス及びモニタリングシステム構築に関する研究

文献情報

文献番号
200837015A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入食品における食中毒菌サーベイランス及びモニタリングシステム構築に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 武士甲一(帯広畜産大学獣医学部)
  • 森田幸雄(群馬県衛生環境研究所)
  • 豊福肇(国立保健医療科学院 研修企画部)
  • 鈴木穂高(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 岡田由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国において統合的な輸入食品の微生物モニタリングシステムについて検討する
研究方法
国内外での畜水産食品における食中毒菌汚染実態を文献的および検査により調査し、また、輸入食品による食中毒事例を調査した
結果と考察
1.輸入食品による食中毒の発生状況調査
赤痢菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌、サルモネラ属菌、ボツリヌス菌、ノロウイルス、A型肝炎ウイルスを原因とした食中毒が発生している。
2.海外でのモニタリングシステム調査
欧州連合は過去数年のトレンドを解析するため、米農務省はHACCP規則として実施するサルモネラ検査のように特定のリスク管理措置の効果をモニターするため、及びハイリスク食品のサーベイランス(しかし、特定の輸出国の特定の食品の検査を強化する目的ではない)のため、モニタリングを行っていた
3.輸入食品の汚染実態調査
平成20年度においては,輸入鶏肉及び輸入豚肉200検体についてサルモネラ属菌,カンピロバクター属菌及びリステリア属菌による汚染実態を調査をし,その結果,当該輸入食品は食中毒菌によって高率に汚染されていることが確認された。カンピロバクターについては国産鶏肉も高率に汚染を受けていた。
4.文献調査による汚染実態
鶏卵のサルモネラ汚染実態について日本国内と海外の比較をした。その結果、鶏卵の汚染率は国内外ともに非常に低いこと、液卵では汚染率が高いことが明らかになった。
5.東南アジアにおける食中毒菌汚染実態調査
畜産業が盛んな中国、タイ等ではニューキノロン系抗生物質をはじめとした多くの抗生物質耐性サルモネラやカンピロバクターの分布が問題となっている。
6.分離菌の薬剤感受性プロファイル
国内産食品由来リステリアにエンロフロキサシン耐性株が見出された。文献から南北アメリカ及びアジアからの分離株において薬剤耐性菌の出現頻度が高く、ヨーロッパ諸国からの分離株には薬剤耐性獲得株が少ない傾向が見られた
結論
国内流通食品における食中毒菌の汚染を総合的に把握するためのモニタリングは系統立てて行われていないため、正確に把握されていない状況にある。輸入食品においても同様で輸出国での食品の汚染実態把握に加え、輸入された後の食品における食中毒菌の汚染実態をモニタリングすることは食中毒予防対策上重要である。

公開日・更新日

公開日
2009-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200837015B
報告書区分
総合
研究課題名
輸入食品における食中毒菌サーベイランス及びモニタリングシステム構築に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 武士 甲一(帯広畜産大学 畜産学部)
  • 森田 幸雄(群馬県衛生環境研究所)
  • 豊福 肇(国立保健医療科学院)
  • 鈴木 穂高(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における総合的な輸入食品の微生物モニタリングシステムについて検討する
研究方法
国内外での畜水産食品における食中毒菌汚染実態を文献的および検査により調査し、また、食中毒事例を精査する
結果と考察
1.海外サーベイランスシステムの調査
微生物の検査として、ECのように過去数年のトレンドを解析するための微生物モニタリング、USDAのHACCP規則の一部として実施するSalmonella検査のようにHACCP等、特定のリスク管理措置の効果をモニターするための微生物モニタリング、及び国産または輸入のハイリスク食品のサーベイランス的な色彩の強いモニタリングが行われていた
2.文献調査
日本のサーベイランスは年末一斉、夏期一斉の取り締まり及び食中毒菌汚染実態調査であった、サーベイランスとしての意義は限定的であった。
カンピロバクターについては海外及び国内の鶏肉で約60%が汚染されていた。鶏卵のサルモネラ汚染はわが国では非常に低かった。
3.東南アジアでの食品汚染実態
タイや中国では比較的報告があり、カンピロバクターでは日本と同様の薬剤耐性菌が出現していた。タイの鶏肉はサルモネラやカンピロバクターに高率に汚染していた。
4.リステリア・モノサイトゲネスの汚染実態
輸入生ハム、生サラミで汚染が見つかった。
5.輸入食品による食中毒
輸入食品が原因であることが明らかとなる食中毒は少ないが、生カキによる赤痢、牛肉による腸管出血性大腸菌O157、アサリによるノロウイルスやA型肝炎ウイルス感染が報告されている
結論
我が国の流通食品による食中毒菌の汚染実態を把握し、輸入食品の食中毒菌モニタリングを実施することにより、傾向を把握できるシステムが必要である

公開日・更新日

公開日
2009-06-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200837015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
輸入食品の食中毒菌による汚染は輸出国でのモニタリングと輸入時の検査、および国内で流通している輸入食品の検査を通じて汚染実態を把握しつつ監視していくことが重要である。
これまでに食肉製品におけるリステリアモノサイトゲネス、サルモネラ属菌、カンピロバクター属菌の汚染が確認されている。特に鶏肉におけるカンピロバクター属菌の汚染は世界中で問題となっている。また、赤痢は今後さらに検討していく必要があることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
地方自治体が行っている夏期一斉及び年末一斉の調査において一般流通食品の食中毒汚染実態を調査しているが、食品衛生法六条違反として報告されるだけで,どのような食品がどのような食中毒菌に汚染されているかが不明であることから、今後は全国統一したデータ収集が必要であることを提言した
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hodaka Suzuki, Shigeki Yamamoto
Campylobacter Contamination in Retail Poultry Meats and By-Products in Japan: A Literature Survey
Food Control , 20 (6) , 531-537  (2009)
原著論文2
H. Suzuki, S. Yamamoto
Campylobacter contamination in retail poultry meats and by-products in the world: a literature survey.
J. Vet. Med. Sci. , 71 (3) , 255-261  (2009)
原著論文3
Boonmar S, Markvichitr K, Chaunchom S, Chanda C, et al
Salmonella   prevalence in slaughtered buffaloes and pigs and antimicrobial susceptibility of isolates in Vientiane, Lao People's Democratic Republic.
J. Vet. Med. Sci. , 70 (12) , 1345-1348  (2008)
原著論文4
Nguyen Thuy, K. Takeshi, K. Kawamoto, S. Makino.
Characterization of Salmonella spp. isolates from Pig Slaughter Pigs in Hokkaido, Japan and Potential Transfer of antimicrobial resistance.
J. Vet. Med. Sci. , 72 (3)  (2009)
原著論文5
K. Takeshi, M. Kitagawa, M. Kadohira, S. Igimi, et al.
Hazard Analysis of Listeria monocytogenes Contaminations in Processing of Salted Roe from Walleye Pollock (Theragra chalcogramma) in Hokkaido, Japan
J. Vet. Med. Sci. , 71 (1) , 1-3  (2009)
原著論文6
Okada Y, Makino S, Okada N, Asakura H,et al.
Identification and analysis of the osmotolerance associated genes in Listeria monocytogenes.
Food Additives and Contaminants , 15 , 1-6  (2008)
原著論文7
Jae-Chul Lee, T. Yokoyama, Hyun-Jung Hwang, H. Arimitsu,et al.
Clinical application of Clostridium botulinum type A neurotoxin purified by a simple procedure for patients with urinary incontinence caused by refractory destrusor overactivity.
FEMS Immunology & Medical Microbiology , 51 , 201-211  (2007)
原著論文8
牧野壮一,川本恵子,武士甲一.
土壌中の強毒病原菌について
感染症 , 37 (6) , 16-27  (2007)
原著論文9
Sumalee BOONMAR, Yukio MORITA, Masahiro FUJITA, et al.
antimicrobial susceptibility, and gyr A gene mutation of Campylobacter jejuni isolates from humans and chickens in Thailand.
Microbiology and Immunology , 51 (5) , 531-537  (2007)
原著論文10
Sumalee BOONMAR, Chantha CHANDA, Khanchana MARKVICHITR, et al.
Prevalence of Campylobacter spp. in Slaughtered Cattle and Buffaloes in Vientiane, Lao People’s Democratic Republic
J. Vet. Med. Sci. , 69 (8) , 819-825  (2007)

公開日・更新日

公開日
2014-05-30
更新日
-