身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関する研究

文献情報

文献番号
202122017A
報告書区分
総括
研究課題名
身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20IA1013
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 然太朗(山梨大学 大学院総合研究部 医学域 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
  • 橋本 有生(早稲田大学法学部)
  • 山﨑 さやか(健康科学大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、令和元年に発出した「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(以下ガイドライン)」の活用状況や活用状況を踏まえた改善点を検討し、ガイドラインを補足する事例集を作成することを目的とした。
研究方法
 令和2年度の質問票調査の困難事例の集約をして、ガイドラインでは対応が困難であると思われる事例を作成した。これら事例に対して、医療面の課題、事例に関する法律的・倫理的懸念事項を整理し、法律の観点を踏まえた対応案と倫理の観点を踏まえた対応案、対応案について留意すべき事項を検討した。また、令和2年度に実施したガイドライン活用状況の調査において、特に質問が多かった事項である身寄りがない人の金銭管理の支援と制度の活用についても検討し、対応案を考えた。
(倫理面的配慮)調査は山梨大学医学部倫理委員会の承認(2281)を得た。
結果と考察
 調査結果から抽出された課題を網羅するために5事例を作成した。事例は、1.患者本人の意思が確認できない状況での対応、2.患者本人の意思決定を尊重した上での対応(本人の意思を尊重した退院)、3.患者本人と疎遠な家族との関わり方(家族の役割)、4.絶縁状態の家族の意見の尊重(延命治療の決定プロセス)、5.退院後の住まいを確保し生活を支援するための対応の5事例であった。
 課題には法律的懸念事項と倫理的懸念事項が混在していたため、課題の対応方法は、法律的な観点を踏まえた対応策、倫理の観点を踏まえた対応策に分けて整理し、両方の観点から対応案について留意すべき事項を示した。法的課題と倫理的課題が相反する場合もあるが、両方の視点をふまえた対応策を検討できた。特に質問が多かった事項(身寄りがない人の金銭管理の支援と制度の活用)についてはQ&Aにまとめた。現段階で明らかとなった課題と対応策については、事例集の中に記載することができた。今後は事例集の活用状況を踏まえて、さらなる補足をしていくことが望まれる。
結論
 令和2年度の調査で抽出された、身寄りがない人の医療面の課題を基に、ガイドラインを補足する事例集を作成することができた。
 地域や病院の機能によって、活用できる資源が異なるため、ガイドラインと事例集の周知に加えて、自治体毎、病院毎に、身寄りがない人の医療に係る支援についてのガイドラインやマニュアルを作成することが望まれる。家族の存在に関わらず、誰もが「身寄りのない人」になる可能性があるため、「身寄りのない人」に限定した医療の体制づくりに留まらず、本人の意思に基づき医療を受けることができる体制づくりが必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-03-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202122017B
報告書区分
総合
研究課題名
身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20IA1013
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 然太朗(山梨大学 大学院総合研究部 医学域 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
  • 橋本 有生(早稲田大学法学部)
  • 山﨑 さやか(健康科学大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 令和元年に「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(以下ガイドライン)」を発出して1年が経過した時点での身寄りがない人への対応の実態、ガイドライン活用状況や活用状況を踏まえた改善点を検討し、ガイドラインを補足する事例集を作成することを目的とした。
研究方法
 令和2年度は、身寄りがない人の支援に係る各関係機関(医療機関、自治体、社会福祉協議会、日本介護支援専門員協会員、日本相談支援専門員協会員)を対象としたアンケート調査とヒアリング調査を実施した。
 令和3年度は、令和2年度調査結果から困難事例の集約をして、ガイドラインでは対応が困難であると思われる事例を作成した。これら事例に対して、医療面の課題、事例に関する法律的・倫理的懸念事項を整理し、法律の観点を踏まえた対応案と倫理の観点を踏まえた対応案、対応案について留意すべき事項を検討した。また、令和2年度の調査において、特に質問が多かった事項である身寄りがない人の金銭管理の支援と制度の活用についても検討し、対応案を考えた。事例集を作成するにあたっては、厚生労働省医政局と情報共有し、関連部署および日本医師会等の関連団体との意見交換をした。
(倫理面的配慮) 調査は山梨大学医学部倫理委員会の承認(2281)を得た。
結果と考察
 アンケート調査の回収率は、医療機関32%(配布枚数8000、回収枚数1271)、自治体54%(配布自治体数500、回収自治体数270)、社会福祉協議会54%(配布枚数800、回収枚数405)、日本介護支援専門員協会52%(配布枚数92、回収枚数48)であった。ヒアリング調査の対象者は、地域医療支援病院の医療ソーシャルワーカー2名、自治体の成年後見利用促進・高齢福祉担当者1名、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業専門員1名であった。
 身寄りがない人の入院は地域によって偏在しており、三大都市圏での事例が多かった。身寄りがない人の入院に関する病院、自治体、社会福祉協議会の役割分担はある程度なされていた。「ガイドライン」は各関係機関で活用されている一方で、「ガイドライン」が広く周知されていない現状も明らかとなった。回答者は、身寄りがない人へ必要な医療が提供できるようにするために「医療機関や施設等への啓発」を望んでいた。「ガイドライン」を補足する事項としては、「身寄りがない人」の家族関係の整理と対応方法、患者の預金をおろす等の代理行為や金融機関との連携方法、親族調査の際の個人情報の取り扱い方が抽出された。 「ガイドライン」が発出されても、周知が不十分であり、「ガイドライン」では対応できないことも多くあるため、対応する機関や人によって身寄りのない人への対応が異なる現状がうかがえる。今後、「ガイドライン」をさらに周知するとともに、「ガイドライン」を部分的に補足・修正をして、身寄りがない人への対応をある程度標準化することが望まれていた。
 調査結果から抽出された課題を網羅するために5事例を作成した。事例は、1.患者本人の意思が確認できない状況での対応、2.患者本人の意思決定を尊重した上での対応(本人の意思を尊重した退院)、3.患者本人と疎遠な家族との関わり方(家族の役割)、4.絶縁状態の家族の意見の尊重(延命治療の決定プロセス)、5.退院後の住まいを確保し生活を支援するための対応の5事例であった。
 課題には法律的懸念事項と倫理的懸念事項が混在していたため、課題の対応方法は、法律的な観点を踏まえた対応策、倫理の観点を踏まえた対応策に分けて整理し、両方の観点から対応案について留意すべき事項を示した。法的課題と倫理的課題が相反する場合もあるが、両方の視点をふまえた対応策を検討できた。特に質問が多かった事項(身寄りがない人の金銭管理の支援と制度の活用)についてはQ&Aにまとめた。現段階で明らかとなった課題と対応策については、事例集の中に記載することができた。今後は事例集の活用状況を踏まえて、さらなる補足をしていくことが望まれる。
結論
 令和2年度の調査で抽出された、身寄りがない人の医療面の課題を基に、ガイドラインを補足する事例集を作成することができた。
 地域や病院の機能によって、活用できる資源が異なるため、ガイドラインと事例集の周知に加えて、自治体毎、病院毎に、身寄りがない人の医療に係る支援についてのガイドラインやマニュアルを作成することが望まれる。家族の存在に関わらず、誰もが「身寄りのない人」になる可能性があるため、「身寄りのない人」に限定した医療の体制づくりに留まらず、本人の意思に基づき医療を受けることができる体制づくりが必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-03-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202122017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
身寄りのない人の医療受診に関して、個別事例について法的倫理的側面の見解を示した。また、成果を英文原著で出版した。
臨床的観点からの成果
臨床現場の身寄りのない人の対応について事例集を発出してその対応を円滑にできる方法を示した。
ガイドライン等の開発
2022年に研究班で作成した「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドラインに事例集」が厚生労働省医政局から事務連絡として、都道府県、保健所設置市、特別区に発出された。
その他行政的観点からの成果
市町村セミナーで「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドラインに事例集」の説明をした。
その他のインパクト
月刊老健の取材を受けて、掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドラインに基づく事例集1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
厚労省の市町村セミナーでの講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sayaka Yamazaki, Zentaro Yamagata, et. al.
Current situation of the hospitalization of persons without family in Japan and related medical challenges
PLoS ONE  (2023)
doi: 10.1371/journal.pone.0276090.

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202122017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,810,000円
(2)補助金確定額
4,810,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 844,304円
人件費・謝金 1,089,109円
旅費 0円
その他 1,770,580円
間接経費 1,110,000円
合計 4,813,993円

備考

備考
自己負担金3,993円

公開日・更新日

公開日
2022-12-08
更新日
-