文献情報
文献番号
202122015A
報告書区分
総括
研究課題名
美容医療における合併症実態調査と診療指針の作成及び医療安全の確保に向けたシステム構築への課題探索
課題番号
20IA1011
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大慈弥 裕之(北里大学 医学部形成外科・美容外科)
研究分担者(所属機関)
- 山田 秀和(近畿大学奈良病院 皮膚科)
- 吉村 浩太郎(自治医科大学 形成外科)
- 橋本 一郎(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 石河 晃(東邦大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和3年度研究事業では、美容医療に関わる5学会(日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容皮膚科学会(JSAD)、日本美容外科学会(JSAS)、日本形成外科学会(JSPRS)、日本皮膚科学会(JDA);以下、関連5学会)の協力の下、1)美容医療合併症の実態把握のための前向き調査、2)重大な有害事象を回避するための診療指針の作成、3)調査協力患者に対する美容医療体験談調査、及び再発防止策を検討するシステム構築の課題整理をおこなった。
研究方法
1)美容医療における有害事象の実態に関する全国調査を、2021年1月から同年12月までの1年間実施した。2)美容医療診療指針作成は、特別研究での美容医療診療指針の内容を追加・修正・更新することにし、緊急性と重要性の高いものを中心にCQ(クリニカルクエスチョン)を設定した。3)美容医療患者体験談調査では、患者から意見を収集するためのWEBサイト(美容医療目安箱)を作成し、これを協力学会のホームページ等に掲載して意見を収集した。
結果と考察
有害事象調査実態調査では、調査対象3,093施設中、82施設から回答を得た。回答率は特別研究と同様、低率(2.7%)であった。しかし、JSPRS会員所属医療機関の大学病院形成外科だけみると、回答率は82.8%と高率であった。美容医療に起因する合併症に対する治療を、大学病院形成外科が主に担っている可能性が示唆された。死亡例の報告はなかった。重度合併症では「異物肉芽腫、しこり形成」が最も多く(49件)、重度後遺症では「ケロイド・肥厚性瘢痕、重度瘢痕」が最も多かった(13件)。原因と考えられた美容施術については、非外科的手技では「注入剤―ヒアルロン酸(言及されていない全ての商品を含む)」が最も多かった(20件)。自由記載を集計した結果、有害事象の起因となったもので最も多かったのはアクアフィリング(8件)であった。本調査は回答バイアスが存在する可能性が否定できず、回答率の低さからも全体像を把握できるものではなかった。美容医療に関連する有害事象の全体像を把握することは困難であるが、継続的に調査を実施することは重要と考えた。
美容医療診療指針では、シミ・イボ・ホクロ(ADM、脂漏性角化症、母斑細胞母斑)に対するレーザー治療、顔のシワ治療に対するヒアルロン酸製剤注入治療、顔のシワ・タルミに対するPRP療法及びスレッドリフト治療、ヒアルロン酸製剤注入による乳房増大術、及びレーザー等機器による腋窩多汗症治療及び脱毛治療。以上の8項目について追加・修正した。それぞれ基礎知識とCQと推奨文を作成した。加えて美容医療における医療安全に関するCQと回答を作成した。診療指針案最終案は班会議での合意を得て最終版を作成し、さらに関連学会のパブリックコメントやガイドライン委員会での意見を反映させた最終版について、関連5学会の全理事会から承認を得た。
美容医療患者体験談調査は、11日間の短い登録期間であったにもかかわらず、69件の体験談が集まった。回答者は全て女性で20代から40代で85%を占めた。美容医療の満足度では、中間的評価が少なく、高評価と低評価が同等であった。高評価群の治療は、多くが非外科治療の顔面若返り治療や脱毛であった。一方、低評価群は二重瞼や眼瞼下垂の眼瞼の外科治療が6割を占めた。低評価を選択した理由としては、インフォームド・コンセント(医師の説明等)に関する要因が多かった。その他、アップセル(料金追加)や未承認の医療機器の使用などの体験談も報告された。高評価群では9割近くが「定期通院あり」であったのに対し、低評価群では「定期通院無し」が半数近くになっていた。記述意見では、高評価群、低評価群ともに眼瞼手術に関してインフォームド・コンセントや術後の機能障害、形態の不満足に関する内容が多かった。低評価群では、細胞成長因子(bFGF)添加PRP治療に関する合併症や後遺症を疑う事案が複数投稿された。豊胸術では医学的に認知されていない不明な用語を用いた施術や医療倫理に反する行為が疑われるものもあった。
美容医療診療指針では、シミ・イボ・ホクロ(ADM、脂漏性角化症、母斑細胞母斑)に対するレーザー治療、顔のシワ治療に対するヒアルロン酸製剤注入治療、顔のシワ・タルミに対するPRP療法及びスレッドリフト治療、ヒアルロン酸製剤注入による乳房増大術、及びレーザー等機器による腋窩多汗症治療及び脱毛治療。以上の8項目について追加・修正した。それぞれ基礎知識とCQと推奨文を作成した。加えて美容医療における医療安全に関するCQと回答を作成した。診療指針案最終案は班会議での合意を得て最終版を作成し、さらに関連学会のパブリックコメントやガイドライン委員会での意見を反映させた最終版について、関連5学会の全理事会から承認を得た。
美容医療患者体験談調査は、11日間の短い登録期間であったにもかかわらず、69件の体験談が集まった。回答者は全て女性で20代から40代で85%を占めた。美容医療の満足度では、中間的評価が少なく、高評価と低評価が同等であった。高評価群の治療は、多くが非外科治療の顔面若返り治療や脱毛であった。一方、低評価群は二重瞼や眼瞼下垂の眼瞼の外科治療が6割を占めた。低評価を選択した理由としては、インフォームド・コンセント(医師の説明等)に関する要因が多かった。その他、アップセル(料金追加)や未承認の医療機器の使用などの体験談も報告された。高評価群では9割近くが「定期通院あり」であったのに対し、低評価群では「定期通院無し」が半数近くになっていた。記述意見では、高評価群、低評価群ともに眼瞼手術に関してインフォームド・コンセントや術後の機能障害、形態の不満足に関する内容が多かった。低評価群では、細胞成長因子(bFGF)添加PRP治療に関する合併症や後遺症を疑う事案が複数投稿された。豊胸術では医学的に認知されていない不明な用語を用いた施術や医療倫理に反する行為が疑われるものもあった。
結論
インフォームド・コンセントが不十分な施設があることが示唆された。今後は、美容医療機関にむけて、あらためてインフォームド・コンセントの徹底や高難度新規医療技術・未承認新規医薬品等を含む医学的に適正に使用するための手続きの周知が必要と考える。また、美容医療機関での医療安全管理体制の整備や事故情報の報告、美容医療患者が相談可能な公的な窓口の周知など、既存の医療安全施策の周知と医療機関の参加を推進するための方策を検討していく必要がある。そして公的な窓口に集積された患者の意見を分析することで再発防止システムの構築につなげることも可能になると考える。
公開日・更新日
公開日
2022-07-01
更新日
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