文献情報
文献番号
202122012A
報告書区分
総括
研究課題名
病院薬剤師へのタスク・シフティングの実態と効果、推進方策に関する研究
課題番号
20IA1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
外山 聡(国立大学法人 新潟大学 医歯学総合病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
- 眞野 成康(東北大学病院)
- 橋田 亨(地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
働き方改革における医師の業務負担軽減策の1つとして、病院薬剤師へのタスク・シフティングの重要性が指摘されている。本研究の目的は、「1. タスク・シフティング実態調査」、「2. プロトコールに基づく院外処方箋の問い合わせ簡素化業務に関する調査」、「3. タスク・シフティング取組事例の解析」の3つの研究より、病院薬剤師へのタスク・シフティングの実態と効果を明らかにし、病院薬剤師へのタスク・シフティングを推進する方策を提言することである。
研究方法
タスク・シフティング実態調査では、令和3年6月時点の8,219病院を対象とした。令和3年8月より、調査票の返送またはオンライン入力により回答を求めた。プロトコールに基づく院外処方箋の問い合わせ簡素化業務に関する調査は、実態調査で簡素化業務を実施していると回答した223施設を対象に、令和4年1月にオンラインで回答を求めた。タスク・シフティング取組事例の解析は、日本病院薬剤師会が実施しているタスク・シフティングに関連する取り組み事例収集事業でWeb公開された45事例を解析した。
結果と考察
タスク・シフティング実態調査:1,878施設から2,971の取組が集積できた。病院をDPC特定、DPC、一般、ケアミックス、療養、精神の6種別に、取組を、1 入退院、2 周術期、3 病棟等における薬剤関連業務(対物業務)、4 プロトコールに基づく院内処方の設計支援、5 プロトコールに基づく院外処方箋の問い合わせ簡素化、6 入院患者に対する薬学的管理、7 外来支援業務、の7分類に区分して集計し、中央値等より、タスク・シフティングの典型例の把握を行った。
分類4、5のプロトコールに基づくタスク・シフティングでは、薬剤師の業務時間増加より他職種の業務時間の減少が大きく、総業務時間が減少した。患者説明、指導を薬剤師にタスク・シフティングすると総業務時間は増加した。他の分類・業務では、薬剤師と他職種も合わせた総業務時間の変化はほぼ同じであったが、患者情報の把握に基づく処方提案のような薬学的専門性が高い業務では、総業務時間が減少すると考えられた。
大半の取組ではタスク・シフティングの業務量は週に数時間程度とそれほど大きくないため、薬剤師が充足している施設でタスク・シフティングが進んでいるという傾向は見いだせなかった。ただし、DPC病院の周術期、入退院業務は、薬剤師の充足度が高いほど実施されていた。手術室などに薬剤師を配置する必要があるためと考えられる。
プロトコールに基づく院外処方箋の問い合わせ簡素化業務に関する調査:薬局対応型(個別に合意を交わした保険薬局の薬剤師がプロトコールに基づき処方変更を行う)と院内対応型(病院薬剤師が薬局からの問い合わせにプロトコールに基づき対応する)のいずれの方法で実施しているかを尋ねたところ、回答が得られた132施設中、薬局対応型77、院内対応型54と双方が活用されていた。施設の規模や機能はプロトコール導入の有無に大きな影響を与えていなかった。プロトコールで簡略化可能とする問い合わせ内容については、各施設の判断で決められており、現在統一された指標は存在しない。しかし、一包化に関する項目、規格変更、剤形変更、成分名が同一の銘柄変更、残薬日数による処方日数の適正化などの項目は多くの施設で共通して採用されていた。医師の評価についてはプロトコール導入施設の72%で負担軽減が認められたことから、広く病院薬剤師が取り組めるタスク・シフティングの例と考えられた。また、医師の負担軽減をもたらすだけでなく、処方箋応需薬局の業務負担の軽減や患者の待ち時間短縮にもつながっていた。
タスク・シフティング取組事例の解析:全45事例のうち、医師は31事例で「とても良い」、13事例が「良い」と評価は高かった。看護師も「とても良い」と「良い」をあわせて73%であった。負担は、医師は41事例91%で、看護師も半数以上で軽減しており、薬剤師の取組が大きな効果もたらした。また、不適切な内服指示等がなくなり、医療安全面の効果が大きいことが判明した事例、周術期インスリンスライディングスケール使用日数は介入群で術後在院日数が4日間短縮するなど、医療の質向上に大きく貢献していた事例など、他職種の負担軽減以外の効果が示された取組事例も見られた。
分類4、5のプロトコールに基づくタスク・シフティングでは、薬剤師の業務時間増加より他職種の業務時間の減少が大きく、総業務時間が減少した。患者説明、指導を薬剤師にタスク・シフティングすると総業務時間は増加した。他の分類・業務では、薬剤師と他職種も合わせた総業務時間の変化はほぼ同じであったが、患者情報の把握に基づく処方提案のような薬学的専門性が高い業務では、総業務時間が減少すると考えられた。
大半の取組ではタスク・シフティングの業務量は週に数時間程度とそれほど大きくないため、薬剤師が充足している施設でタスク・シフティングが進んでいるという傾向は見いだせなかった。ただし、DPC病院の周術期、入退院業務は、薬剤師の充足度が高いほど実施されていた。手術室などに薬剤師を配置する必要があるためと考えられる。
プロトコールに基づく院外処方箋の問い合わせ簡素化業務に関する調査:薬局対応型(個別に合意を交わした保険薬局の薬剤師がプロトコールに基づき処方変更を行う)と院内対応型(病院薬剤師が薬局からの問い合わせにプロトコールに基づき対応する)のいずれの方法で実施しているかを尋ねたところ、回答が得られた132施設中、薬局対応型77、院内対応型54と双方が活用されていた。施設の規模や機能はプロトコール導入の有無に大きな影響を与えていなかった。プロトコールで簡略化可能とする問い合わせ内容については、各施設の判断で決められており、現在統一された指標は存在しない。しかし、一包化に関する項目、規格変更、剤形変更、成分名が同一の銘柄変更、残薬日数による処方日数の適正化などの項目は多くの施設で共通して採用されていた。医師の評価についてはプロトコール導入施設の72%で負担軽減が認められたことから、広く病院薬剤師が取り組めるタスク・シフティングの例と考えられた。また、医師の負担軽減をもたらすだけでなく、処方箋応需薬局の業務負担の軽減や患者の待ち時間短縮にもつながっていた。
タスク・シフティング取組事例の解析:全45事例のうち、医師は31事例で「とても良い」、13事例が「良い」と評価は高かった。看護師も「とても良い」と「良い」をあわせて73%であった。負担は、医師は41事例91%で、看護師も半数以上で軽減しており、薬剤師の取組が大きな効果もたらした。また、不適切な内服指示等がなくなり、医療安全面の効果が大きいことが判明した事例、周術期インスリンスライディングスケール使用日数は介入群で術後在院日数が4日間短縮するなど、医療の質向上に大きく貢献していた事例など、他職種の負担軽減以外の効果が示された取組事例も見られた。
結論
病院薬剤師へのタスク・シフティングの取組は、幅広い場面で行われ、得られる効果もさまざまであるが、典型例において、タスク・シフティングの取組を実施した時、患者人数に対する薬剤師の業務時間と他職種の負担軽減の程度を、本研究成果より推定可能となった。特にプロトコールに基づく取組において効率化が図られ、医師だけでなく、看護師等の関連する他の医療関係職種の負担も軽減し、さらに医療安全面の向上も見られることが明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2022-08-16
更新日
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