食品によるバイオテロの危険性に関する研究

文献情報

文献番号
200837001A
報告書区分
総括
研究課題名
食品によるバイオテロの危険性に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品管理部)
  • 大野 勉(愛知県衛生研究所)
  • 高谷 幸(社団法人日本食品衛生協会事業部)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、食品テロに対する脆弱性評価手法、食品テロに使用される微生物/化学物質、食品関連企業における食品テロへの危機感の醸成を図るツール、食品テロの早期察知方法及び事後対策について検討する。
研究方法
・食品テロ対策に関する最新情報をウェブサイトから収集、体系化し、米国における食品テロ対策の体系的把握を行った。
・3箇所の食品関連施設を対象に脆弱性評価を実施した。その結果を踏まえ食品製造工場向け及び物流施設向けの食品テロ対策チェックリストを作成した。
・米国の検討を参考に、わが国において使用が想定される化学物質/生物剤を検討した。
・過年度の検討を踏まえ、食品テロの早期察知のための症候群サーベイランスの実施方法を検討した。
・わが国における食品テロの事後対策として、携帯電話を活用した症候群サーベイランスを試行し、市民から収集した情報を全自動で解析するシステムを構築した。
結果と考察
・米国では食品関連事業者が食品テロ対策を実際に実施する主体として位置づけられている。また特に発展途上国の食品防御水準を上げる必要性を感じていると推察される。
・チェックリストの配布にあたっては、その趣旨が見失われないよう、「工場における対策の必要性に関する気づきを得る」ためのものであるという趣旨を明示する必要がある。
・攻撃物質としての生物剤については、増殖性を利用した毒素としての利用が考えられ、毒素は温度変化、酸化等で不活化されない場合があり、効果が高い。一方、食品が置かれる条件から使用可能な微生物は限定される。なお毒性の強い生物剤の入手・製造は相応の設備や知識が必要であり、困難である場合が多い。また、加熱殺菌等の工程管理が有効である。
・攻撃物質としての化学物質については、合成等により利用可能な化学物質は無限に存在するため、化学物質管理面からの対策が困難であり、食品生産・流通・加工・販売での工程管理が必要である。
結論
・脆弱性評価の実施手法を確立した。また、「食品に係る物流施設における人為的な食品汚染防止に関するチェックリスト」を作成した。
・わが国の実情に基づいた、食品テロにおいて想定される生物剤および化学剤を抽出した。
・早期探知システムとしての救急車搬送症候群サーベイランスの実用化可能性を確認した。
・携帯電話を活用した症候群サーベイランスの有効性及び食品購買者に対する市販後調査兼症候群サーベイランス実施の意義を確認した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200837001B
報告書区分
総合
研究課題名
食品によるバイオテロの危険性に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 大野 勉(愛知県衛生研究所)
  • 高谷 幸(社団法人日本食品衛生協会事業部)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国食品テロに対する脆弱性を把握した上で、微生物/化学物質管理のセキュリティ強化や食品テロの早期探知といった事前対策、および被害の最小化といった事後対策のあり方について研究を行うものである。
研究方法
研究は、以下に示す項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、学術論文等既存の公表情報の収集整理と、検討会における生物・化学・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。
1.米国における食品テロ対策の体系的把握
2.化学剤・生物剤管理等セキュリティ強化対策の検討
3.わが国における脆弱性評価の実施
4.食品テロの早期察知のための症候群サーベイランスの可能性の検討
5.わが国における食品テロの事後対策の検討
結果と考察
・攻撃物質としての生物剤については、増殖性を利用した毒素としての利用に注意が必要である。化学物質については物質管理面からの対策は困難であり、食品製造工程での混入防止が重要となる。
・CARVER+Shock手法は多くの専門家が時間をかけて実施する必要があり、簡便に実施するには困難であった。そのため、専門知識が無い者でも食品テロ対策に関する気づきを得ることができる“チェックリスト”が有効である。
・救急車搬送情報を用いた症候群サーベイランスについては、食中毒情報に重症度が含まれない、食中毒の原因場所と症状の発症場所が異なる等の制限の中でも、東京都全体の食中毒事例に対して低度の異常探知は20%の感度を有した。同システムは覚知から数時間後には異常を探知でき、迅速な対応には有効である。
・2008年1月に発覚した冷凍ギョーザ事案においては、軽微な被害情報を活かすことができなかった、発生場所・時期の乖離、商品の違う情報を共有できなかった等の特色が見られ、食品テロの事後対策においても、これらを解決する方策が必要である。
結論
・わが国における対食品テロ脆弱性評価の手法を概ね確立した。また食品工場の現場において簡単に利用することのできる「人為的な食品汚染防止に関するチェックリスト」(食品製造工場向け/物流施設向け)を作成した。
・救急車搬送情報を用いた症候群サーベイランスシステムを構築することができた。
・2008年1月の冷凍ギョーザ事案の振り返りから、食品危害情報の把握・共有に資する、直接市民・消費者から健康状態に係る情報を収集する食品の市販後調査兼症候群サーベイランスの方法論を確立した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200837001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
・わが国における対食品テロ脆弱性評価の手法を概ね確立した。また食品工場の現場において簡単に利用することのできる「人為的な食品汚染防止に関するチェックリスト」(食品製造工場向け/物流施設向け)を作成した。
・救急車搬送情報を用いた症候群サーベイランスシステムを構築することができた。
・2008年1月の冷凍ギョーザ事案の振り返りから、食品危害情報の把握・共有に資する、直接市民・消費者から健康状態に係る情報を収集する食品の市販後調査兼症候群サーベイランスの方法論を確立した。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
・食品工場の現場において簡単に利用することのできる「人為的な食品汚染防止に関するチェックリスト」(食品製造工場向け/物流施設向け)を作成した。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省や農林水産省で全国の担当者を対象に説明会を行った
・厚生労働省 食品安全行政講習会
・農林水産省 消費・安全局・消費安全政策課危機管理講習会
その他のインパクト
TV出演
 NHKスペシャル 「食の安全」をどう守るのか -冷凍ギョーザ事件の波紋-(2008.3.30 NHK総合)

新聞記事掲載
 読売新聞朝刊 2008.4.20
 日本経済新聞夕刊 2008.12.10
 朝日新聞朝刊 2009.2.19

発表件数

原著論文(和文)
1件
書籍「食品テロにどう備えるか? -食品防御の今とチェックリスト」
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
「食品工場における人為的な食品汚染防止に関するチェックリストの作成と有用性について」第67回日本公衆衛生学会総会 「食品防御とは -冷凍餃子事件を切り口にして-」第29回奈良県公衆衛生学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
行政担当者説明会 ・厚生労働省 食品安全行政講習会 ・農林水産省 消費・安全局・消費安全政策課危機管理講習会
その他成果(普及・啓発活動)
15件
企業、団体などで講演、セミナーを行う ・生協総合研究所公開研究会 ・食品の化学物質汚染対策研究会 ・消費者志向経営セミナー など

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
今村 知明、高谷 幸、山本 茂 他
書籍「食品テロにどう備えるか? -食品防御の今とチェックリスト」
日本生活協同組合連合会出版部 発行 , -211  (2008)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-