HIV感染者の妊娠・出産・予後に関するコホート調査を含む疫学研究と情報の普及啓発方法の開発ならびに診療体制の整備と均てん化のための研究

文献情報

文献番号
202120020A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染者の妊娠・出産・予後に関するコホート調査を含む疫学研究と情報の普及啓発方法の開発ならびに診療体制の整備と均てん化のための研究
課題番号
21HB1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
喜多 恒和(奈良県総合医療センター 周産期母子医療センター / 産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉野 直人(岩手医科大学 医学部)
  • 杉浦 敦(奈良県総合医療センター 産婦人科)
  • 田中 瑞恵(国立国際医療研究センター 小児科)
  • 山田 里佳(JA愛知厚生連海南病院 産婦人科)
  • 北島 浩二(国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
26,143,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染者の妊娠・出産・予後に関する全国調査により発生動向を解析する。HIV感染女性とその児のコホート研究により、抗HIV治療の長期的影響を検討する。HIV等の性感染症と妊娠に関する国民向けリーフレットや小冊子を妊娠初期に配布し、知識の向上効果を検証し、これらの教育啓発資料をより広く国民に拡散する方法を開発する。「HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン」と「HIV母子感染予防対策マニュアル」の改訂により、わが国独自のHIV感染妊娠の診療体制を整備し均てん化する。さらに全国調査回答をウェブ化し、データベース管理やコホート研究におけるIT支援を行う。
研究方法
1) HIV感染妊娠に関する研究の統括と情報の普及啓発方法の開発および診療体制の整備と均てん化、2) HIV感染妊婦とその出生児の発生動向および妊婦HIVスクリーニング検査等に関する全国調査、3) HIV感染妊娠に関する臨床情報の集積と解析およびデータベースの更新、4) HIV感染女性と出生児の臨床情報の集積と解析およびコホート調査の全国展開、5) 「HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン」と「HIV母子感染予防対策マニュアル」の改訂、6) HIV感染妊娠に関する全国調査とデータベース管理のIT化とコホート調査のシステム支援
結果と考察
1)ホームページはスマートフォンに対応し、リーフレットのクイズのウェブ化や小冊子の電子書籍化を行った。ツイッターのコンテンツも毎週追加した。SNSにおけるインフルエンサーの投稿は、小冊子の閲覧数が4日間で1,390回と大きな情報拡散能力を持つことを確認した。妊娠初期妊婦へのアンケート調査では、リーフレットや小冊子の配布がHIVや性感染症の知識向上に有効であった。妊婦健診、学校での出前講座、イベントや市民公開講座などでの資料配布は、国民の性感染症に関する知識向上に寄与できる。またホームページやツイッターなどのSNSでのインフルエンサーの投稿は情報を広く拡散させ得る。医療従事者への情報普及啓発と診療体制の実態把握を目的とした第3次アンケート調査では、HIV感染妊婦との対応時間が多い順、すなわち産科看護職と産科医師、次いで新生児科看護職と新生児科医師、そして分娩前後での対応時間が少ない感染症科医師・看護職の3群の順で、経腟分娩導入への抵抗感が高かった。
2)妊婦のHIVスクリーニング検査実施率は99.9%で、トキソプラズマやCMV感染では50%以下で公費負担の有無が影響していた。2020年の未受診妊婦は、病院で妊婦の0.21%であった。
3)HIV感染妊娠に関する全国調査により、データベースは1,128例に更新された。報告数は少子化により減少傾向にあるが、分娩10万件あたりのHIV感染妊娠数は3.5~4.8と減少傾向はなかった。
4)コホート研究は、小児科・産婦人科調査とは異なり、女性の経年による変化や、治療選択のトレンド、児の成長・発達が検討できた。研究の精度向上を目指して参加施設の拡大を図る。本研究班によるHIV感染女性および児に関する調査はわが国の唯一のため、今後も精度の高いデータの蓄積と管理のためのシステム改良を行う。
5)HIV感染妊娠については、母子に関わる産婦人科・小児科・感染症科医師、助産師、看護師、薬剤師、メディカルソーシャルワーカーなど多くの医療従事者がきめ細やかな医療を行う必要がある。「HIV母子感染予防対策マニュアル」改訂第9版では、様々な職種に対応できるようその記載に心がけた。また医療従事者への第3次アンケート結果を参考にして、わが国の医療体制と医療経済事情および国民性をも考慮したわが国独自の「HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン」改訂第3版を刊行する予定である。
6)全国一次調査で集計したエクセルデータは、ファイルのアップロードにより小児科・産科との迅速な情報共有が可能となった。産科・小児科の2種類の二次調査項目は、同じREDCap内でマッピングにより統合することが可能であった。
結論
近年報告数が減少傾向にあるが、分娩10万対でみると大きな変化はなく、少子化の影響と思われた。HIV感染や梅毒をはじめとする性感染症に関する国民の知識レベルは低いままであるため、教育啓発資料の作成と周知拡散方法の開発は重要な課題である。ホームページやツイッターには掲載資料や情報を蓄積してきたが、如何にして閲覧者を拡大できるかが重要な課題であった。SNSにおけるインフルエンサーの協力が有効であることが示唆され、若者を中心として広く国民の興味を高めうる動画や資料を作成するという方向性を見いだすことができた。一般国民向けとともに、医療従事者向けにも正確な情報提供を行い、経腟分娩を含めたHIV感染妊娠の最適な診療体制を、わが国独自のものとして構築することを目指したい。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,500,000円
(2)補助金確定額
30,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,359,440円
人件費・謝金 6,337,233円
旅費 228,440円
その他 17,217,887円
間接経費 4,357,000円
合計 30,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-09
更新日
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