文献情報
文献番号
202120016A
報告書区分
総括
研究課題名
地域におけるMSMのHIV感染・薬物使用予防策と支援策の研究
課題番号
21HB1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
樽井 正義(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
研究分担者(所属機関)
- 生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京)
- 大木 幸子(杏林大学 保健学部)
- 野坂 祐子(大阪大学大学院 人間科学研究科)
- 塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,572,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
MSMのHIV感染・薬物使用の予防と支援を目的に5つの研究を行う。
(1) MSMを対象としたメンタルヘルスと性行動に関するweb調査:ウェブによる質問紙調査により、現状把握の基礎データを得る。
(2) ゲイコミュニティにおける性行動および予防啓発に関する動向の把握と効果評価:全国6コミュニティセンターによる啓発活動の効果評価を質問紙調査で行う。
(3) MSMを対象とした健康のためのコミュニケーション支援ツールの開発と評価:リスク行動を避けるコミュニケーションスキルの向上をはかる自習ツールを開発する。
(4) 薬物使用の問題を抱えるHIV陽性者への支援のための精神保健福祉センターとのネットワークモデルの検討:センター、HIV診療機関、陽性者支援組織の連携モデルを策定する。
(5) HIV陽性者と薬物使用者への支援策と感染・薬物使用予防策の検討:当事者に有用な予防と支援の情報を整理し、提供の方策を検討する。
(1) MSMを対象としたメンタルヘルスと性行動に関するweb調査:ウェブによる質問紙調査により、現状把握の基礎データを得る。
(2) ゲイコミュニティにおける性行動および予防啓発に関する動向の把握と効果評価:全国6コミュニティセンターによる啓発活動の効果評価を質問紙調査で行う。
(3) MSMを対象とした健康のためのコミュニケーション支援ツールの開発と評価:リスク行動を避けるコミュニケーションスキルの向上をはかる自習ツールを開発する。
(4) 薬物使用の問題を抱えるHIV陽性者への支援のための精神保健福祉センターとのネットワークモデルの検討:センター、HIV診療機関、陽性者支援組織の連携モデルを策定する。
(5) HIV陽性者と薬物使用者への支援策と感染・薬物使用予防策の検討:当事者に有用な予防と支援の情報を整理し、提供の方策を検討する。
研究方法
(1) 質問紙の作成と回答者募集方法の策定のために、MSMを対象としたフォーカス・グループ・インタビューを行った。
(2) コミュニティセンターのある6地域とない3地域でMSMを対象に質問紙調査を実施し、3,969人のデータを分析した。
(3)文献を調査し、MSM対象にオンラインで「アサーション・トレーニング」「ストレスマネジメント講座」を開催し、コミュニケーションスキルの動画教材と解説教材を作成した。
(4) 精神保健福祉センターでMSMあるいはHIV陽性者からの薬物相談の経験のある担当者に面接調査を行った。
(5) 文献調査と薬物使用者・陽性者への支援者の面接調査とを行い、支援に必要な情報と提供の方策を検討した。
(2) コミュニティセンターのある6地域とない3地域でMSMを対象に質問紙調査を実施し、3,969人のデータを分析した。
(3)文献を調査し、MSM対象にオンラインで「アサーション・トレーニング」「ストレスマネジメント講座」を開催し、コミュニケーションスキルの動画教材と解説教材を作成した。
(4) 精神保健福祉センターでMSMあるいはHIV陽性者からの薬物相談の経験のある担当者に面接調査を行った。
(5) 文献調査と薬物使用者・陽性者への支援者の面接調査とを行い、支援に必要な情報と提供の方策を検討した。
結果と考察
(1) MSMへのインタビューから、調査項目ではアルコールや市販薬への依存、PrEPとコンドーム使用、相談へのアクセス等への配慮、回答者募集では出会いの手段の多様化、SNS利用の傾向の考慮の必要が示された。調査への参加が自分の行動に気づき、変容につながる契機となるよう、調査項目を検討することが求められる。
(2) コミュニティセンターの認知率は啓発対象地域では前調査より上昇し45.4%、検査経験は横這いで68.7%、コンドーム常用使用は2010年以降50-60%台から20%台にどの地域でも下降し、HIVと性感染症の拡大が懸念される。新型コロナ感染症の影響で過去1年間に検査利用を控えた人は26.5%、セックスの頻度と人数が減った人は半数だった。
(3) 文献調査から、トラウマと逆境体験が行動や認知に及ぼす影響を考慮した支援の必要性が確認され、2つのオンラインプログラム「アサーション・トレーニング」と「ストレスマネジメント講座」では、自分の感情の理解と調整に重点を置いた。これらをふまえて、自分のコミュニケーションの傾向に気づく自己学習ワークシートと動画を作成した。
(4) 精神保健福祉センターの相談担当者への面接調査から、継続的な支援関係には、通報しない立場の明示、セクシュアリティや性行動について安心して話せる対応が重要であり、センターには回復や生活を支援する他の機関につなぐ役割があることが示された。相談継続のために担当者の葛藤に対処するスーパーバイズ体制が求められた。
(5) 先行研究調査から、日本の生涯薬物使用経験者は2.5%(200万人)、その90%は使用を止め、過去1年使用経験者は0.24%(20万人)で、使い続けたい人、減らしたい人、止めたい人に三分されること、感染予防の情報が求められることが示された。支援者への面接調査から、加えて安心して相談できる窓口の情報の不足が指摘された。
(2) コミュニティセンターの認知率は啓発対象地域では前調査より上昇し45.4%、検査経験は横這いで68.7%、コンドーム常用使用は2010年以降50-60%台から20%台にどの地域でも下降し、HIVと性感染症の拡大が懸念される。新型コロナ感染症の影響で過去1年間に検査利用を控えた人は26.5%、セックスの頻度と人数が減った人は半数だった。
(3) 文献調査から、トラウマと逆境体験が行動や認知に及ぼす影響を考慮した支援の必要性が確認され、2つのオンラインプログラム「アサーション・トレーニング」と「ストレスマネジメント講座」では、自分の感情の理解と調整に重点を置いた。これらをふまえて、自分のコミュニケーションの傾向に気づく自己学習ワークシートと動画を作成した。
(4) 精神保健福祉センターの相談担当者への面接調査から、継続的な支援関係には、通報しない立場の明示、セクシュアリティや性行動について安心して話せる対応が重要であり、センターには回復や生活を支援する他の機関につなぐ役割があることが示された。相談継続のために担当者の葛藤に対処するスーパーバイズ体制が求められた。
(5) 先行研究調査から、日本の生涯薬物使用経験者は2.5%(200万人)、その90%は使用を止め、過去1年使用経験者は0.24%(20万人)で、使い続けたい人、減らしたい人、止めたい人に三分されること、感染予防の情報が求められることが示された。支援者への面接調査から、加えて安心して相談できる窓口の情報の不足が指摘された。
結論
MSM、HIV陽性者、薬物使用者の感染・薬物使用対策のために、対象者の現状把握と支援策の検討を5つの分担研究で行った。
(1) MSM質問紙調査の準備として、対象者のフォーカス・グループ・インタビューにより、現状に即した参加者募集の方法と必要とされる質問項目を明らかにした。
(2) コミュニティセンターによる調査で、コンドームの常用率が20%台に低下したこと、新型コロナ感染症の影響で検査を控えた人が4分の1いること等を示した。
(3) コミュニケーションスキル向上の支援策として、トラウマと逆境体験の影響に配慮したオンラインプログラムを実施し、オンラインで自習可能なツールを開発した。
(4) 精神保健福祉センター相談担当者の面接調査で、MSMと陽性者への継続的な支援関係の構築と他の支援機関との連携策が検討された。
(5) 薬物使用者と陽性者への支援策として、文献調査と支援者への面接調査で、薬物使用に付随する感染症・予防と相談窓口の情報提供の必要が確認された。
(1) MSM質問紙調査の準備として、対象者のフォーカス・グループ・インタビューにより、現状に即した参加者募集の方法と必要とされる質問項目を明らかにした。
(2) コミュニティセンターによる調査で、コンドームの常用率が20%台に低下したこと、新型コロナ感染症の影響で検査を控えた人が4分の1いること等を示した。
(3) コミュニケーションスキル向上の支援策として、トラウマと逆境体験の影響に配慮したオンラインプログラムを実施し、オンラインで自習可能なツールを開発した。
(4) 精神保健福祉センター相談担当者の面接調査で、MSMと陽性者への継続的な支援関係の構築と他の支援機関との連携策が検討された。
(5) 薬物使用者と陽性者への支援策として、文献調査と支援者への面接調査で、薬物使用に付随する感染症・予防と相談窓口の情報提供の必要が確認された。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
-