労働者の自殺予防に関する介入研究

文献情報

文献番号
200836003A
報告書区分
総括
研究課題名
労働者の自殺予防に関する介入研究
課題番号
H18-労働・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
島 悟(京都文教大学臨床心理学部 臨床心理学科)
研究分担者(所属機関)
  • 黒木 宣夫(東方佐倉病院精神科)
  • 森 晃爾(産業医科大学副学長)
  • 廣 尚典(産業医科大学生態科学研究所産業精神保健学)
  • 田中 克俊(北里大学医学部産業精神保健学)
  • 數川 悟(富山県精神保健センター)
  • 北條 稔(北條医院)
  • 井上 幸紀(大阪市立大学神経精神医学)
  • 飯島美世子(島根大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国においては,平成10年に労働者の自殺が急増して以来一向に減少する傾向が見えないため、労働者の自殺予防対策の確立は緊急の行政課題である。自殺対策を進めていく上では、対象の特性に応じて適切なモデルの選択を行う必要があるため、本研究においてはモデルの検証を行う。
研究方法
1.富山県、大阪府、東京都等において、啓発教育、メール及び面接による相談、うつ病の構造化面接法による事後措置などによる介入を行った。
2.京都府において、事業場を対象として質問紙および聞き取りによる調査を実施した。
3.東京都医師会員を対象として質問紙調査を実施した。
4.人材派遣会社の営業職およびコーディネーターを対象として、また登録している派遣スタッフを対象として質問紙調査を実施した。さらに人材派遣会社を対象としてメンタルヘルス対策の現状について、派遣スタッフを対象としてメンタルヘルスの状態等についてウェッブ調査を実施した。
5.管理監督者研修用教材に関する聞き取り調査を実施した。
6.「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」について質問紙調査を実施した。
7.効果的な自殺対策を実施している米空軍の自殺対策マニュアルの日本語版を作成した
結果と考察
1.富山県では研究への希望者が少なく,東京都・大阪府では明確な介入効果は見られなかったが、睡眠教育では,睡眠の質と精神健康に改善が認められ、教育方法に示唆が得られた。
2.多くの事業場がメンタルヘルス対策の必要性を感じてはいたが,事例が発生していないため未実施である事業場が多かった。身体面の健康問題によって就業制限を受けている労働者に対してもメンタルヘルス対策が重要であることが示唆された。
3.派遣労働者において、希死念慮および自殺未遂の既往は高率であった。派遣労働者本人,派遣先,派遣元の3者間で,作業管理、作業環境管理等に関して検討する必要がある。
4.手引きの存在を知っている事業場は6割を超えるが,実際に利用したことがある事業場は3割に満たない。手引きの改善点について示唆を得た。
5.自殺対策マニュアルの事業場における活用が期待される。
結論
労働者の自殺の背景および関与する要因は様々であり、自殺を確実になくすことは困難ではあるものの、自殺対策の効果のあることは既に示されており、産官学一体となった取り組みが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-06-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200836003B
報告書区分
総合
研究課題名
労働者の自殺予防に関する介入研究
課題番号
H18-労働・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
島 悟(京都文教大学臨床心理学部 臨床心理学科)
研究分担者(所属機関)
  • 黒木 宣夫(東邦大学佐倉病院精神神経科)
  • 森 晃爾(産業医科大学実務研修センター)
  • 廣 尚典(産業医科大学生態科学研究所産業精神保健学)
  • 田中克俊(北里大学医学部産業精神保健学)
  • 數川 悟(富山県心の健康センター)
  • 北條 稔(北條医院)
  • 井上 幸紀(大阪市立大学神経精神医学)
  • 飯島美世子(島根大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国においては,平成10年に労働者の自殺が急増して以来一向に減少する傾向が見えないため、労働者の自殺予防対策の確立は緊急の行政課題である。自殺対策を進めていく上では、対象の特性に応じて適切なモデルの選択を行う必要があり、モデルの検証を行った。
研究方法
(1)自殺予防に関するコホート研究
富山県、大阪府、東京都等において、啓発教育、相談、構造化面接法による事後措置などによる介入を行った。
(2)正規職員のこころの健康に関する実態調査
京都府において、事業場を対象として質問紙および聞き取りによる調査を実施した。
(3)派遣労働者のこころの健康に関する実態調査
営業職、コーディネーター、派遣スタッフ等を対象として調査を実施した。
(4)転職・再就職希望者のこころの健康に関する実態調査
 ハローワークの求職者を対象にメール相談事業を実施した。
(5)自殺・危機介入事例の分析
 臨床例を収集し分析を行った。
(6)自殺予防対策に関連するツールの検討
管理監督者研修の教材を作成し,過重労働面談に関する検討を行った。
(7)自殺予防に関する文献
(8)効果的な自殺対策を実施している米空軍の自殺対策マニュアルの日本語版作成を行った。
結果と考察
(1)中小零細事業場に対しては基本的な情報提供、講習会の実施等が有効であり、認知療法的アプローチや睡眠教育なども効果的である。
(2)問題事例への対応や休復職に関する情報提供が有用である。
(3)派遣労働者において、希死念慮および自殺未遂の既往は高率である。派遣労働者,派遣先,派遣元の3者間で,作業管理、作業環境管理等に関して検討する必要がある。
(4)ハローワーク利用者において希死念慮・自殺企図のある者が高率である。
(5)危機介入経路では,ラインによるケアの管理監督者は少なく,事業場内産業保健スタッフや事業場外資源の役割が大きい。
(6)事業場で参考にできる資料の周知度の向上,管理監督者に対する教育啓発活動の実施,主治医と事業場スタッフとの連携を図ることが必要である。
(7)労働者に対する自殺予防における効果指標には,抑うつ,自殺に対する態度や知識,コーピングスキルなどを用いることが有用である。
結論
労働者の自殺の背景および関与する要因は様々であり、自殺を確実になくすことは困難ではあるものの、自殺対策の効果のあることは既に示されており、産官学一体となった取り組みが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-06-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200836003C