文献情報
文献番号
202120008A
報告書区分
総括
研究課題名
職域での健診機会を利用した検査機会拡大のための新たなHIV検査体制の構築に向けた研究
課題番号
20HB1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 秀人(国立保健医療科学院 統括研究官)
- 生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
- 石丸 知宏(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
- 今橋 真弓(柳澤 真弓)(名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
愛知県における「HIV感染症/エイズ及び梅毒(以下、エイズ等)の検査利用機会拡大と疾病の早期発見・早期治療を促進するモデル事業」では、郵送検査キットを任意に取り寄せた人の約2割が実際には受検に至らなかった。また、巡回健診契約事業所(341事業所)に対する郵送式アンケート調査によって、健診センター等でエイズ等検査を実施することはプライバシーの保護困難や知識・経験不足等の理由で困難とされていることを明らかにした。令和3年度、モデル事業参画企業を対象に職域エイズ等検診を継続実施し、受検動向等に加え、郵送検査キット未使用の原因の解析を行なった。また、健診センターでのエイズ等検査実施勧奨のため、自治体エイズ等検査を受託している健診センターに対しインタビュー調査を行なった。また、健診センターにおけるエイズ等検査実施に係る課題解決のため、エイズ等検査の実施方法を検討した。
研究方法
モデル事業で研究協力を得られた企業の正規従業員を対象にエイズ等検査機会を継続して提供し従業員の受検動向及び啓発効果を検証した。また、これらの企業の全従業員を対象にアンケート調査を実施し、郵送検査キットを取り寄せながら受検しなかった理由を調査した。受検希望者及び受検者数の解析は、研究参画企業から従業員に対する受検勧奨圧力が生じないようにとの要望を受け、研究終了時点で参画企業全体を対象に解析を行った。モデル事業実施時と同様に、企業個別の結果は公表しない方針とした。また、「新型コロナウイルス感染拡大期における保健所HIV等検査の実施体制に関する研究」における郵送検査キットを利用した方法(iTesting)を改変し、受検者が健診センターでエイズ等検査を受けやすい検査機会提供方法を検討した。
結果と考察
モデル事業で得られた知見はAPHA 2021 Annual Meeting & Expo(アメリカ公衆衛生学会総会)で発表し、国際的にも評価された。モデル事業にも参画した4企業の協力を得て、職域で郵送検査キットを用いたエイズ等検査機会を提供したところ388人が郵送検査キットを取り寄せ、254人(65.5%)が実際に使用した。検査結果閲覧時の「ご利用者アンケート」にはそのうち121人が回答し73人(60%)が生涯初受検であった。上記4企業の郵送検査キットを取り寄せたことがある従業員を対象に、郵送検査キットを取り寄せながら受検しなかった理由を調べたところ、自己採血の難しさ、煩わしさが主な原因であり、受検の自発性が損なわれていることや職場から不利益を被ることが理由ではなかった。京都市の保健所HIV検査を受託している京都工場保健会に対するインタビュー調査を行ったところ、土日検査時の結果通知医師やその他従事者の確保及びそれらの研修機会がないことが課題であった。検査提供者・受検者の負担軽減のため、自宅等でwebによりHIVスクリーニング検査の結果を確認できる以下のシステムを構築した(名称;(場所、形式、費用、備考))。①iTesting@Aichi &NMC;名古屋医療センター、毎日随時匿名、1000円(2021年度)、HIVのみ(2021年度))、②iTesting@Nagoya;特設会場、年に3回予約制匿名、無料、梅毒・HBV・HCV同時検査)、③iTesting@Nagoya&NMC;名古屋医療センター、名古屋市前立腺がんワンコイン検診時HIVスクリーニング検査は匿名、500円(がん検診受検費用)、50歳以上男性)、④iTesting@pharmacy;名古屋市内薬局店舗、郵送検査キット店頭販売、約4,000円(2021年度)HIVのみ(2021年度))。職域でのエイズ等検査機会提供は、職場斡旋の人間ドック受検時等に自己選択のオプション検査でHIV検査を選択可能にすることが現実的である。今回考案した方法により職域でエイズ等検査機会提供が進めば、保健所検査を利用していない層の受検が増加する可能性がある。
結論
郵送検査キットの利用などの工夫により、ガイドライン遵守下、職域でエイズ等検査機会を提供した。従業員の健康情報の適正な管理やプライバシー保護が適切に行われている企業では、職域でのエイズ等検査機会提供が可能であることを実証した。職域でのHV検査機会提供を考える場合、検診時のオプション検査等で利用可能で、かつ、適正なHIV検査の仕組みを構築することが現実的であることも明らかにした。今後、様々なHIV検査の質を担保する評価システムやガイドライン等の設定を促しながら、HIV検査を通じて、企業等の健康情報に関わるプライバシーポリシーの向上を求め、自己管理可能な性感染症、一般の疾病の一つとしてHIV感染症が位置付けられるように取り組みを進める必要がある。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
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