文献情報
文献番号
200835081A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質・安全を確保する新しい医療システムを実現するための戦略に関する研究
課題番号
H18-医療・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
上原 鳴夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 嶋森 好子(慶應義塾大学看護医療学部)
- 永井 良三(東京大学医学部附属病院)
- 飯塚 悦功(東京大学大学院工学研究科)
- 米本 昌平(東京大学先端科学技術研究センター)
- 土屋 文人(東京医科歯科大学歯学部附属病院)
- 児玉 安司(三宅坂総合法律事務所)
- 小泉 俊三(佐賀大学医学部附属病院)
- 河野 龍太郎(自治医科大学医学部)
- 武田 裕(大阪大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまでの研究成果と国内外の専門家の知見を集約し欧米の取組みも参考としつつ、中長期的な展望で医療の質・安全を確保するために現行医療システムの「何がどのように変わらなければならないか」を明らかにし、これを実現するための取組みの基本指針と重点研究課題を提言する。
研究方法
(1)分担課題に関する文献・資料調査、(2)専門家会議の開催(8回)、(3)医療の質・安全学会、日本病院団体協議会、日本医師会、日本看護協会、臨床工学技士会の提案により、病院団体・職能団体・学会が参加する「医療安全全国共同行動」を立ち上げるとともに、自己評価により医療安全対策の普及の現状を把握した。(4)市民、地域社会の役割と医療参加を促進する活動事例を収集した。(5)独、仏、英、米について医師プロフェションの身分管理制度と医療安全の取り組みについて調査した。(米国ヘンリーフォード病院質管理責任者、スエーデン患者保険基金理事長の招聘、ベルリン医師自治機構と仏Ordre des medicinを訪問調査)(6)医療の業務体制と業務環境のあり方;米国のJob Description に係る文献を調査し職務機能の日米比較を行った。(7)米国の医療安全関連法の翻訳を行った。(8)学部教育における質安全教材のあり方を検討した。
結果と考察
医療安全対策の普及度は、対策によってもまた施設間でもばらつきが大きく、対策指針の提供と情報の迅速な共有化が急務と考えられた。日本の現状と比較すると、ドイツ、フランス、英国、スエーデン、オーストラリアでは、① プロフェションによる自律的質管理機構の存在、② 非難や処分重視から改善重視への転換が進んでいること、③ 「患者安全」に対する政策的コミットメントが明確なこと、④エラーや有害事象の教訓共有を促すための行政的・法的根拠作りが進んでいること(報告制度と免責措置など)、⑤医療における「質改善」の考え方が浸透していること、⑥質・安全指標の活用と公開が進んでいること、などの点で大きな相違が認められた。
結論
医療安全に関する研究は諸外国ともまだ始まったばかりであるが、とくに日本では研究者を育成する態勢づくりや、研究財源の確保が遅れており、システム改革に向けた政策形成に資する研究データが極めて乏しいことが重要な課題と考えた。
公開日・更新日
公開日
2010-04-28
更新日
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