HIV検査と医療へのアクセス向上に資する多言語対応モデルの構築に関する研究

文献情報

文献番号
202120003A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査と医療へのアクセス向上に資する多言語対応モデルの構築に関する研究
課題番号
19HB1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
北島 勉(杏林大学 総合政策学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沢田 貴志(神奈川県勤労者医療生活協同組合 港町診療所)
  • 宮首 弘子(杏林大学外国語学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,087,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我が国の在留外国人が増加傾向にある。2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行により在留外国人は若干減少したものの、2021年6月末時点で282万人が滞在していた。今後、入国規制が緩和されることから、留学生や技能実習生などを中心に再び増加に転じる可能性が高い。在留外国人の多くは20〜30代が多く、性的にも活動的な年齢層であるため、HIVを含む性感染症に感染する者が増加する可能性がある。そこで、本研究では、HIV検査受検促進や陽性者への医療関連サービスへのアクセスの改善をめざし、自治体との連携モデルを構築することを目的とする。
研究方法
本研究では以下の研究活動を実施した:(1)HIV及び結核の検査・治療に活用できる医療通訳の教育・活用方法の検討、(2)在留ベトナム人留学生のHIV検査受検行動に影響する要因に関する研究、(3)在留外国人を対象としたHIV検査会の実施。
結果と考察
(1)に関しては、本年度もCOVID-19流行のためオンライン開催とし、全国から12言語116人の参加があった。研修参加者のHIVや結核に関する知識の向上や態度の改善がみられた。英語、中国語、ベトナム語、ポルトガル語については、ロールプレイを行い、検査や診療の現場に即したシナリオをもとにしたロールプレイを行い、実践的な研修の機会を提供した。今後は、研修参加者を実際の検査や医療の現場に派遣する仕組みを構築していくことが重要である。(2)については、国内のベトナム人青年学生協会の協力を得て、ベトナム人300人を対象にオンライン調査を行った。回答者の37.3%が男性、平均年齢は24.2歳であった。28%が過去3か月間に性行為をし、そのうち88.1%が毎回コンドームを使用していた。日本でHIV検査受検に関心があることと関連する要因は、主観的HIV感染リスク、検査が無料匿名で実施さていることを知っていること、一人暮らし、過去3か月間に受診を躊躇したことがあることであった。無料匿名、言葉の支援があることがHIV検査受検を促進する上で重要である。(3)については、在留外国人を対象としたHIV検査会を東京都内で2回実施し、12人がHIVと梅毒の検査を無料匿名で受検した。検査会の告知を日本語、英語、中国語、ベトナム語でSNSを中心に告知を行った。COVID-19流行のため、保健所等でのHIV検査が中止または減少しているため、今後も同様の活動を継続していく必要があると考える。
結論
本年度も、COVID-19流行の影響により、自治体やNPOとの連携による研究活動が予定通り進まなかった。今後、COVID-19に関する規制が緩和されることで、在留外国人が増加し、多言語対応へのニーズが高まることが予想される。本研究による医療通訳の育成、在留外国人のHIV検査受検に対する意識、外国語HIV検査会からの知見は、自治体等と連携のもと、HIV検査や医療に関する多言語対応の促進を図っていく上で重要であると考える。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202120003B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV検査と医療へのアクセス向上に資する多言語対応モデルの構築に関する研究
課題番号
19HB1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
北島 勉(杏林大学 総合政策学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沢田 貴志(神奈川県勤労者医療生活協同組合 港町診療所)
  • 宮首 弘子(杏林大学外国語学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我が国の外国人男性のHIV陽性報告数は増加傾向にあり、男性同性間の性的接触による感染が多数を占めつつある。新型コロナウイルス感染症流行(COVID-19)の影響により留学生や技能実習生を中心とした中長期滞在者も減少したものの令和3年6月時点で282万人が滞在していた。彼らの多くは性的に活動的な年齢層であるため、HIVを含む性感染症に感染する者が増加する可能性がある。そこで、本研究では、HIV検査受検促進や陽性者への医療関連サービスへのアクセスの改善をめざし、自治体との連携モデルを構築することを目的とする。
研究方法
本研究では以下の研究活動を実施した:(1)在留外国人の保健行動やHIV検査等に関する意識調査を行った。ベトナム人技能実習生16人を対象にヒヤリングを行った後に、在留ベトナム人技能実習生や留学生を中心として900人の参加を得て、保健行動、HIV検査へのアクセス等についてオンライン調査を実施した。(2)HIV及び結核の検査・治療に活用できる医療通訳の育成を行うための対面とオンラインで研修を3年間で6回実施した。全国から239人が参加した。(3)エイズ診療拠点病院等における多言語対応の状況について調査を行った。対象施設の84.9%から回収を得られた。(4)在留外国人を対象としたHIV検査会を東京都内で実施した。(5)音声翻訳機の中国語−日本語の有用性について検討した。
結果と考察
(1)に関しては、来日前にHIV検査を受けた者は16.2%であったが、来日後に受けた割合は4.3%であった。検査受検に関心がある者は31.3%で、受検しやすい主な条件としては「無料」、「厳密な守秘」、「通訳/言語サポートあり」があげられていた。(2)に関しては、研修前後で、HIVに関する知識、認識・行動意志の改善が認められた。また、実際のHIVや結核の医療現場の状況をもとに作成したシナリオを活用したロールプレイ演習も行った。(3)については、2013年に実施した同様の調査と比較して、東アジア出身のHIV陽性者の割合が高くなっていること、日本語や英語が不自由な外国人の受け入れは困難な場合が多いこと、支援が必要な言語が多様化していることがわかった。(4)については、2回実施し、12人がHIVと梅毒の検査を無料匿名で受検した。HIV陽性者はいなかったが、梅毒の陽性者1名を医療機関につなげることができた。(5)については、調査時点で最も汎用性が高いPOCKETALK®の中国語の音声とテクスト翻訳の有用性の検証を試みた。音声認識においては高い精度を有するが、テクスト翻訳の精度については課題があることがわかった。
結論
COVID-19流行のため、自治体との連携が思うように進まなかったが、本研究の知見は、今後自治体やNPO等と連携のもとでHIV検査や医療に関する多言語対応モデルの構築をする上で有用であると考える。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202120003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本語学校に在籍中の留学生や技能実習生に対する保健行動やHIV検査へのアクセス状況について調査し、HIV検査受検への意識が高いが、受検を促進するためには、HIV検査が無料匿名、言語の支援がある状況で実施されることが望ましいことがわかった。研究成果はPOLS ONEに掲載された。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
2020年度には東京都南新宿検査相談室、2021年には神奈川県の委託で実施されている検査事業のWeb上の案内に関連して、中国語やベトナム語への対応支援を行った。
その他のインパクト
研究班が開催した研修によって育成した医療通訳を保健所等からの要請に基づき、2018年度は11人(中国語10人、ネパール語1人)、2019年度ベトナム語1人、2020年度ベトナム語2件を派遣した。在留外国人を対象としてHIV検査会を開催し、13人に無料匿名でHIVと梅毒の検査を提供した(https://www.facebook.com/groups/998205400981224)。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
在留外国人を対象としたHIV検査会を開催した(https://www.facebook.com/groups/998205400981224)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shakya P, Sawada T, Zhang H, et al.
Factors associated with access to HIV testing among international students in Japanese language schools in Tokyo
PLOS ONE , 15 (7)  (2020)
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0235659
原著論文2
沢田貴志、山本裕子、塚田訓久、他
日本におけるHIV 陽性外国人の受療を阻害する要因に関する研究
日本エイズ学会誌 , 22 , 172-181  (2019)

公開日・更新日

公開日
2022-06-13
更新日
2024-07-04

収支報告書

文献番号
202120003Z