HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究

文献情報

文献番号
202120002A
報告書区分
総括
研究課題
HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究
課題番号
19HB1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 西浦 博(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科)
  • 本間 隆之(山梨県立大学 看護学部)
  • 土屋 菜歩(東北大学東北メディカル・メガバンク機構)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 後藤 直子(日本赤十字社 血液事業本部 技術部 安全管理課)
  • 加藤 真吾(株式会社ハナメディテック)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 渡會 睦子(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 日高 庸晴(宝塚大学 看護学部)
  • 井戸田 一朗(しらかば診療所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
58,070,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、「検査所の利便性向上」、「受検アクセスの改善」、「HIV診断検査の充実」の「3つの柱」に分け、これまでの検査の再評価を行い、従来の検査法の改善や新たな取り組みの検討を行う。そして、これまで受検勧奨が十分に届いていない地方のハイリスク層への新たな受検勧奨モデルを構築していくことを目指す。
研究方法
地方での検査体制を強化するために、疫学に関する分担研究から地域ブロック別の疫学データと地域特性を考慮して、東北、北陸、九州の3地域を対象に選定し、地域特性や検査ニーズ等を比較検証し、地方に共通な課題、または各県に独自の課題を抽出する。そして、各分担研究の方策を組み込みながら、COVID-19流行下での検査の在り方、郵送検査の信頼度向上と「プレ検査」としての新たな利用法の開発、受検勧奨が十分でなかった地方のハイリ スク層への新たな受検勧奨モデルを構築していく。
結果と考察
 COVID-19の流行拡大に伴い、MSMを対象とした郵送検査を実施するためのHIV検査サイトを構築し、そのサイトを介して北陸3県で郵送検査の実証研究を行った。検査キット申込数は20日余りで153件、検体返送数は122件、陽性判定数は2件だった。また、検査サイトを通じて検査申込み前と検査実施後のアンケート調査を行った。
 疫学的調査を行う分担研究では、90-90-90については、HIV感染症の診断者の割合に相当する最初の90が達成されていない(83.7%)ことが明らかとされ、特に、それは都市部で高い一方で、北海道東北地方や九州沖縄地方のように達成が厳しい地域差を認めることがわかった。
 保健所に関する研究では、全国の保健所等を対象としたHIVと梅毒の検査に関する2021年アンケート調査(保健所212/523中、特設検査相談施設(特設)14/17中から回答)を実施した。回収できた保健所212施設中、HIV検査相談を実施した196施設での年間のHIV検査の総数は18,933件、陽性63件(0.33%)であった。COVID-19により検査・相談の休止、縮小などの変化があった保健所は約7割に上り、理由として人員不足や感染対策が十分に取れないことが挙げられた。
 HIV郵送検査についてのアンケート調査では、郵送検査会社全体のHIV年間検査数は104,928件で、昨年と比較して0.8%減少していた。団体検査の推定受検者率は42%であった。HIVスクリーニング検査陽性数は112例であり、昨年と比較して37%増加していたが、判定保留数は67例であり、陽性数と判定保留数を併せた179例は昨年の181例と比較してほぼ横ばいであった。
 研究班協力施設である民間クリニックにおけるHIV検査実施状況調査では、2021年に、研究班協力46施設において延べ31,121件のHIV検査が行われ、HIV確認検査が陽性であったのは71件(0.23%)で、その96%がケアにつながったことを確認できた。
 郵送検査の検体郵送条件に関する検討では、郵送検査に用いられる乾燥ろ紙血の安定性を調べるため、保存期間、温度、湿度、ろ紙乾燥時間が抗体価に与える影響を検討した結果、乾燥ろ紙血を45℃で8日間保存した場合のみ、5種類中3種類(7検体中3検体)の陽性血漿で抗体価の低下がみられ、それ以外の温度、湿度、ろ紙乾燥時間の条件では抗体価の低下はみられなかった。また、民間臨床検査センターでのHIV検査及びSARS-CoV-2検査の実施状況に関する調査を実施した。
「診療におけるHIV-1/2感染症の診断ガイドライン2020」の中で重要なHIV-1/2抗体確認検査法は、イムノクロマト法の原理を利用した簡便な抗体確認検査法である。今回、目視判定は機械判定と同等以上であることを確認した。
結論
本研究によって構築される検査体制は、長期的な戦略としても、我が国におけるHIV早期診断に直接的な影響を与えていくことが期待される。その結果、エイズ発症者が減少し、早期治療による長期合併症予防、さらには感染拡大を防ぐという、我が国のエイズ対策の大きな目標に貢献する社会的意義の高いものであると考えられる。
また、現在のCOVID-19流行下のような社会環境の変化に応じた幅広い検査の機会は、HIV感染症の正しい知識を受検者に与え、その後の感染予防を促すという、重要な役割も担っている。したがって本研究班の活動は、検査の受検拡大を進めると同時に、HIV感染症の社会啓発にも寄与することも期待される。
今後、各分担研究の方策を組み込みながら、COVID-19流行下での検査の在り方、郵送検査の信頼度向上と「プレ検査」としての新たな利用法の開発、地方ハイリスク層への受検勧奨など、受検勧奨が十分でなかった地方のハイリスク層への新たな受検勧奨モデルを構築していく。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202120002B
報告書区分
総合
研究課題
HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究
課題番号
19HB1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 西浦 博(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科 )
  • 本間 隆之(山梨県立大学 看護学部)
  • 土屋 菜歩(東北大学東北メディカル・メガバンク機構)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 後藤 直子(日本赤十字社 血液事業本部 技術部 安全管理課)
  • 井戸田 一朗(しらかば診療所)
  • 加藤 真吾(株式会社ハナメディテック)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 渡會 睦子(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 日高 庸晴(宝塚大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、これまでの検査の再評価を行い、従来の検査法の改善や新たな取り組みの検討を行う。そして、これまで受検勧奨が十分に届いていない地方のハイリスク層への新たな受検勧奨モデルを構築していくことを目指す。
研究方法
地方での検査体制を強化するために、疫学に関する分担研究から地域ブロック別の疫学データと地域特性を考慮して、地域を選定し、地域特性や検査ニーズ等を比較検証し、地方に共通な課題、または各県に独自の課題を抽出する。そして、各分担研究の方策を組み込みながら、COVID-19流行下での検査の在り方、郵送検査の信頼度向上と「プレ検査」としての新たな利用法の開発、受検勧奨が不十分だった地方のハイリ スク層への新たな受検勧奨モデルを構築していく。
結果と考察
地方での検査体制を強化するために、東北、北陸、九州を対象に選定し、保健所調査や検査データ等多方面からの調査を行った。2019年度は福岡県でHIV・梅毒検査会と保健所職員向け外国人対応研修会を実施した。2020、2021年度は、COVID-19流行拡大に伴い、MSMを対象とした郵送検査を実施のためのHIV検査サイトを構築し、それを介して北陸3県、北東北3県で郵送検査の実証研究を行った。また、検査申込み前と検査実施後のアンケート調査を行った
疫学的調査を行う分担研究では、2019年度は、地域ごとのHIV未診断者の推定の取り纏めを行い、2020年度は、第1-2四半期の保健所における相談件数と検査件数の減少によるHIV感染症の新規診断者数の減少について定量化を実施した。HIV未診断者の推定を取り纏め、地域レベルでの検査機会の減少に伴う疫学的インパクトの推定に取り組んだ。そして、2021年度は、HIVの診断比率や検査拡充の効果と梅毒の診断時報告による診断および報告率向上を検討した
保健所に関する研究では、2019年度はアンケート調査に加え、事例集作成の準備として各地のHIV検査・相談担当者向け研修会への参加と情報収集を行った。回答を得た保健所488施設で1年間のHIV検査の総数は96,824件、陽性は220件(0.23%)、特設15施設におけるHIV検査の総数は28,863 件、陽性は123件(0.4%)であった。保健所の93.2%、特設の64.3%で梅毒検査を実施しており、梅毒検査での陽性率はそれぞれ2.1%、3.1%であった。2020‐2021年度は、COVID-19パンデミックの影響を大きく受けることとなった。
HIV郵送検査についてのアンケート調査では郵送検査会社全体のHIV年間検査数は、2019年と2021年を比較すると15.7%減少した。郵送検査会社全体の検査陽性数は2019年と2021年を比較すると37%増加していたが、陽性数と判定保留数の合計を2019年と2021年を比較すると34%減少していた。
MSMを対象としたHIV/STIs即日検査相談では、NPO法人による即日検査会を2019年4月から2021年1月まで計26回、述べ339名を実施した。陽性者数は、HIV抗体(確認検査で確認)3名(0.88%)、梅毒TP抗体35名(10.32%)、HBs抗原1名(0.29%)であった。神奈川県内居住者が64.3%を占め、最多年齢層は30-34歳18.9%であった。
研究班協力施設である民間クリニックでのHIV検査実施状況調査した。2020、2021年のアンケート調査では、民間クリニックにおけるHIV検査数はむしろ増加し、検査へのニーズは保たれていた。また、96%の陽性者がケアにつながったことを確認できた。
「診療におけるHIV-1/2感染症の診断ガイドライン2020」を改訂し、2020年10月に日本エイズ学会のホームページ上に掲載した。2019年には全国34の地方衛生研究所(衛研)担当者が参加した研修会を開催した。またガイドラインでのHIV-1/2抗体確認検査法は、イムノクロマト法の原理を利用した簡便な抗体確認検査法であり、目視判定が機械判定と同等以上であることを確認した。
結論
本研究班によって構築される検査体制は、長期的な戦略としても、我が国におけるHIV早期診断に直接的な影響を与えていくことが期待される。その結果、エイズ発症者が減少し、早期治療による長期合併症予防、さらには感染拡大を防ぐという、我が国のエイズ対策の大きな目標に貢献する社会的意義の高いものであると考えられる。
また、現在のCOVID-19流行下のような社会環境の変化に応じた幅広い検査の機会は、HIV感染症の正しい知識を受検者に与え、その後の感染予防を促すという、重要な役割も担っている。したがって本研究班の活動は、検査の受検拡大を進めると同時に、HIV感染症の社会啓発にも寄与することも期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202120002C

収支報告書

文献番号
202120002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
60,005,000円
(2)補助金確定額
59,632,318円
差引額 [(1)-(2)]
372,682円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,780,278円
人件費・謝金 14,195,406円
旅費 622,086円
その他 32,099,548円
間接経費 1,935,000円
合計 59,632,318円

備考

備考
差異372,682円の理由につきましては、自己負担金1,740円(加藤眞吾958円、佐野貴子146円、日高庸晴636円)および返納金374,422円(土屋菜歩)の発生によるものです。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
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