開発優先度の高いワクチンの有効性・安全性等の評価に関わる医療データベース構築のための探索的研究

文献情報

文献番号
202119023A
報告書区分
総括
研究課題名
開発優先度の高いワクチンの有効性・安全性等の評価に関わる医療データベース構築のための探索的研究
課題番号
21HA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中島 一敏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部健康科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター 診療情報分析部)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
  • 神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
13,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
予防接種基本計画(平成26年3月厚生労働省告示121号)で示された開発優先度が高い6つのワクチンの導入に向け、日本でシステムが不十分な効果と安全性評価のシステム構築が本研究の目的である。今年度は、COVID-19の出現と短期間でのワクチン導入普及に伴い、新型コロナワクチンの効果と安全性に関する研究も行った。
研究方法
ワクチンの効果評価については、医療レセプト、医療機関の診療情報、定点サーベイランスシステムの応用といった複数のデータベスを用いた対象疾患の疾病負荷(全数など)のベースラインを得るシステムの構築を目指す。新型コロナワクチンについては、自治体レベルで発生動向調査とVRSを用いたワクチン効果判定の検証を行っている。安全性評価については、医療機関双方向ネットワーク、ワクチン接種台帳と医療情報の連結による副反応の因果関係評価システム、ワクチン安全性確保に関する国際情報の収集を行っている。また、COVID-19ワクチンに対する国民の認識と接種態度に関する調査を追加した。
結果と考察
疾対象疾患の疾病負荷の評価に関し、医療レセプトを用いた研究では、DeSCデータを使うことで、迅速性の改善を図り、適切な病名定義を用いて疾病負荷の推計が可能であることが検証された(分担研究1)。NCDAデータを用いた研究では、次世代医療基盤法に基づくシステム構築との連続性が確認されるとともに、NCDAデータのクラウド化により分析の迅速性を大幅に改善できることが示された(分担研究2)。また、COVID-19の影響により結果には制約が生じたが、インフルエンザサーベイランスの仕組みの応用により全数推定が可能であることが示された。(分担研究3)。また、政令市である名古屋市との共同研究により、サーベイランスデータとVRSを用い、感染予防効果の迅速な評価が可能であることが示された。(分担研究6)分担研究1から3はいずれも相互補完的で、各々の弱点を補うことで包括的かつ持続可能なシステムが構築できる。分担研究6で指摘された課題を反映することで、迅速なワクチン効果評価を感染症危機管理下でも実施できることも示された。
 副反応の評価に関し、分担研究4では、COVID-19流行に伴い生じたML-fluの応用システム運用上の支障につき、今年度の研究で、効率的な時間とコストの管理、意識の向上の重要性が示された。予防接種台帳と医療情報の連携による複合的システムの構築では、国民健康保険のレセプトデータを用いて副反応評価のベースラインサーベイランスの構築が可能であることが腸重積を例に示された。分担研究5では、COVID-19ワクチンの安全性確保に関するGACVSを中心とした国際社会の科学的かつ合理的な取り組みとそのアップデートの必要性が、国内のWeb調査から、市民のワクチンに関する認知の不十分さと安全性への不安が接種率の低下に関連していることが示された。ワクチンの必要性、効果、安全性等の啓発・コミュニケーションの強化、中長期的視点でのシステム強化、国際的な枠組みへの積極的な関与等の土壌を育てることが重要と考えられた。
結論
本研究は、平時の新たなワクチンの導入を想定した、ワクチンの疾病負荷の減少を指標に医療・公衆衛生的効果を評価し、副反応が発生した場合の因果関係評価するためのシステム構築を目指している。これまでの研究により、包括的かつ複合的なシステムの構築が可能であることが示されてきたが、COVID-19の出現により、感染危機管理におけるワクチン接種における課題も見えてきた。タイムリーなワクチン効果の評価はその一つであるが、本研究が目指すシステムを改善することでタイムリネスの改善が可能であることが明らかとなった。今後もこれらの研究を継続し、我が国で継続利用可能なシステムについて引き続き検討したい。

公開日・更新日

公開日
2023-02-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-02-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202119023Z