百日咳とインフルエンザの患者情報及び検査診断の連携強化による感染症対策の推進に資するエビデンス構築のための研究

文献情報

文献番号
202119013A
報告書区分
総括
研究課題名
百日咳とインフルエンザの患者情報及び検査診断の連携強化による感染症対策の推進に資するエビデンス構築のための研究
課題番号
20HA1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2018年より全数把握疾患として百日咳のサーベイランスが開始された。その結果定点把握疾患サーベイランスでは詳細がわからなかった百日咳の疫学や患者の特徴等が明確になり、百日咳対策に関する新たなる課題が明確になった。2021年もこれまで同様サーベイランスのデータの詳細を整理解析し、国内の百日咳の疫学をまとめるとともに、必要な介入策の検討を試みる。また、精度の高いサーベイランス維持を目的とし、新規検査法の評価を行う。インフルエンザはサーベイランス評価及びワクチン効果の分析を行うに当たり、ウイルスの曝露が比較的一定と考えられる離島において、地域における公開されている疫学・病原体等の情報を収集し、定点サーベイランスの評価を行うことを目的とする。
研究方法
2021年1月1日~12月31日までにNESIDへ報告された百日咳の症例について、「感染症法に基づく医師届出ガイドライン(第二版) 2021年12月28日、国立感染症研究所」(以下ガイドライン)に基づき症例を選別し、ガイドラインの届出基準に合致した症例のみをまとめ、患者の年齢分布や予防接種歴などを中心に記述疫学の手法を用いてまとめた。百日咳菌の抗原欠損がMALDI-TOF MSによる菌種同定の精度に与える影響を解析は菌株の抗原産生を解析したのち百日咳菌FHA欠損株を作製し、MALDI微生物同定装置による菌種同定試験を実施した。インフルエンザは宮古島市で強化サーベイランスを実施し、インフルエンザ定点の評価の検討を計画した。
結果と考察
百日咳は報告患者数の大幅な減少が認められた。特に今シーズン新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が大きかった学童期の小児における患者報告数の減少が顕著であった。また、遺伝子検査実施の割合が低下し、血清抗体高値による診断の割合が上昇するとともに、新規保険収載されたイムノクロマト法による診断された症例も急増しており、サーベイランスへの影響が懸念された。また、百日咳菌の抗原欠損がMALDI-TOF MSによる菌種同定の精度に与える影響を解析した。その結果、百日咳菌が主要抗原である繊維状赤血球凝集素(FHA)の産生を欠損すると、本法による同定精度が低下し、百日咳類縁菌である気管支敗血症菌と誤同定される確率が上昇することが明らかになった。インフルエンザは2020/21シーズンはCOVID-19流行のためインフルエンザの患者数が激減したため患者数が少なく、インフルエンザ定点の評価はできなかった。
結論
百日咳は引き続き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、報告患者数の大幅な減少が認められた。その一方で新規保険収載されたイムノクロマト法による診断された症例が急増しており、サーベイランスへの影響が懸念された。新たに導入された検査法についてモニタリングを強化するとともに、百日咳菌の主要抗原の一つであるFHAを欠損した菌株では、MALDI-TOF MSによる菌種同定試験の同定精度が低下することが指摘されたため、本法による分離菌同定が困難な場合は、百日咳菌を鑑別できる遺伝子検査法など代替試験を用いる必要がある。インフルエンザは流行が見られない時は定点サーベイランスの評価は難しことから入院サーベイランスにおける真のインフルエンザの疫学や宮古島において新型コロナワクチンで同様の調査を検討する。

公開日・更新日

公開日
2023-02-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202119013Z