市町村及び保健所保健師等の精神保健福祉業務に係る業務量の把握及び地域包括ケアシステムの構築に向けた必要な業務量の算定に資する研究

文献情報

文献番号
202118051A
報告書区分
総括
研究課題名
市町村及び保健所保健師等の精神保健福祉業務に係る業務量の把握及び地域包括ケアシステムの構築に向けた必要な業務量の算定に資する研究
課題番号
21GC1020
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 隆志(福井県立大学 看護福祉学部)
  • 森永 裕美子(岡山県立大学 保健福祉学部 看護学科)
  • 河野 稔明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(以下、「本システム」)は、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労など)、地域の助け合い、普及啓発(教育など)が包括的に確保されたシステムであり、地域共生社会の実現に向かっていく上で欠かせないものである。また厚生労働省で実施された本システムに係る検討会においては、日常生活圏域を基本として、市町村などの基礎自治体を基盤として進める必要があり、保健所及び精神保健福祉センターによる重層的な連携が重要であるとされた。今後、本システムを市町村などの基礎自治体を基盤として構築していくにあたっては、本システム構築のために求められる業務内容や業務量を明らかにし、それらを担う人員の配置を適正に進める必要がある。このため本研究では、自治体へのインタビューを通じて本システム構築に係る業務内容と人員配置に係る課題を明らかにしたうえで、市町村及び保健所における保健師、精神保健福祉士等の精神保健福祉に係る業務量調査を実施する。
研究方法
①令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金「地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究」(研究代表者:藤井千代)の分担研究「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に関する研究」(研究分担者:野口正行)において全国の市区町村(N=1741)を対象として実施した「市区町村の精神保健福祉業務に関する調査」(回答率72.8%)の結果のうち、政令市、中核市、保健所設置市、特別区を除く市町村の保健・福祉部門における専門職配置状況に関する2次分析を行った。②地域保健・健康増進事業報告のデータの2次分析を行い、最近20年の精神保健関連業務および市町村における人員配置の変化を明らかにした。④自治体における本システム構築推進状況と業務内容を把握するため、全住民を対象とした包括ケアシステムの先行事例である愛媛県愛南町、川崎市、本システム構築の取り組みを開始しているつくば市、米子市にオンラインインタビューを実施した。⑤市町において精神保健福祉業務とシステム構築業務を担当している専門職(以下、「精神保健専門職」という)6名を対象とし、業務量把握シートを用いて、2022(令和4)年1月17日より4週間の業務内容及び時間を調査し、どのような業務が行われているかを把握した。
結果と考察
既存データの2次分析より、市町村における精神保健福祉業務は、保健師がその多くを担っていることが示唆された。保健部門においては、人口規模の大きい自治体においては精神保健福祉士を配置する割合が増え、精神保健福祉業務を担う保健師が配置されている割合が少なくなる傾向が認められ、その傾向は福祉部門においてより顕著であった。しかしながら、精神保健福祉士の常勤配置のある自治体の実数は少なく、精神保健福祉業務を担う保健師のうち、精神保健福祉相談員の資格を持つ者は極めて少数であり、多くの市町村においては精神保健福祉を専門とする職員が不足しているものと推察される。市町村における精神保健相談数はこの20年間で大幅に増加しており、精神保健相談のニーズの高さがうかがえる。しかしながら、精神保健福祉を専門とする精神保健福祉士や精神保健福祉相談員の数は2004(平成16)年をピークに常勤者数が右肩下がりとなり、非常勤(会計年度任用)職員でマンパワーの不足を補っている状況であると考えられた。自治体へのインタビューからは、個別支援に係る業務が増大しており、現状のマンパワーでは精神的な不調を抱えた人への必要なサービス提供が困難となっていることや、会計年度任用職員では責任ある業務を担うことが困難であり、常勤職員の負担が増大している実態がうかがえた。タイムスタディの結果からは、精神保健専門職は、全業務時間の約7割程度を本システムに関連する精神保健福祉業務に充てていることが示された。保健師活動領域調査における2018(平成30)年の「市町村常勤保健師の活動状況 活動項目別」では、市町村保健師が精神保健業務を実施した時間は平均で全体の1.8%であった。このことから、精神保健専門職の配置のない多くの自治体では、地域の精神保健福祉関連の支援ニーズへの対応が困難であると推察された。
結論
本研究で得られた、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた業務内容、業務量に関するデータは、システムを実装するために必要とされる人的資源の配置計画に資するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-07-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-07-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118051C

収支報告書

文献番号
202118051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
8,895,000円
差引額 [(1)-(2)]
105,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,511,211円
人件費・謝金 2,033,563円
旅費 46,668円
その他 1,227,640円
間接経費 2,076,000円
合計 8,895,082円

備考

備考
自己資金:82円

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-