文献情報
文献番号
202118049A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模疫学研究データと診療報酬明細書(レセプト)データを用いた一般住民における入院外統合失調症及び統合失調症関連障害の有病率推定方法の開発
課題番号
21GC1018
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
太田 充彦(藤田医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
- 岩田 仲生(藤田保健衛生大学 医学部 精神神経科学講座)
- 谷原 真一(久留米大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 岸 太郎(藤田保健衛生大学 医学部 精神神経科学)
- 李 媛英(リ エンエイ)(藤田医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,155,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、令和3~5年度の3ヵ年で日本における入院外統合失調症および統合失調症関連障害(短期精神病性障害、妄想性障害、統合失調感情障害、および統合失調症様障害)(以下、統合失調症等)の有病率を、大規模疫学研究や診療報酬明細書(以後、レセプト)のデータを用いて推定する方法を開発することである。
世界で統合失調症有病率は人口の約0.5%と見込まれているが、日本は他の先進国に比べて精神病棟が多い、統合失調症の長期入院が多いといった特有の状況があり、他国の統合失調症有病率が当てはまらない可能性がある。精神障害者の地域移行・地域定着を促進し、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを実現するためには、統合失調症等の有病率を明らかにしたうえで退院後のケアに必要なニーズを算出し整備する必要がある。
世界で統合失調症有病率は人口の約0.5%と見込まれているが、日本は他の先進国に比べて精神病棟が多い、統合失調症の長期入院が多いといった特有の状況があり、他国の統合失調症有病率が当てはまらない可能性がある。精神障害者の地域移行・地域定着を促進し、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを実現するためには、統合失調症等の有病率を明らかにしたうえで退院後のケアに必要なニーズを算出し整備する必要がある。
研究方法
大規模疫学研究データを用いて日本における統合失調症等の有病率を明らかにするための研究プロトコールを作成した。さらに必要な基礎研究として、統合失調症を有する者の主観的健康感・幸福感・生活満足度や身体的・精神的・社会的併存症についての文献レビュー、および、日本において統合失調症を有する一般住民と健康対照者に対するインターネット調査を行った。
レセプトデータを用いて日本における統合失調症等の有病率を明らかにするための研究プロトコールを作成した。さらに必要な基礎研究として、大規模レセプトデータベースを利用して統合失調症有病率を算出した場合に、生活保護受給者を含まないことによって有病率が過小評価されないかを検討した。
レセプトデータを用いて日本における統合失調症等の有病率を明らかにするための研究プロトコールを作成した。さらに必要な基礎研究として、大規模レセプトデータベースを利用して統合失調症有病率を算出した場合に、生活保護受給者を含まないことによって有病率が過小評価されないかを検討した。
結果と考察
文献レビュー、および、。統合失調症を有する者223 人と健康対照者1776 人を対象者としたインターネット調査を実施した。その結果、統合失調症を有する者の主観的健康感・幸福感・生活満足度が良くないことや、様々な身体的(肥満・過体重が多い、高血圧・糖尿病・脂質異常症・痛風などの生活習慣病が多い、身体活動が低下、食習慣が変化)・精神的(うつ、不眠、他者への不信が多い)・社会的併存症(教育歴や世帯収入が低い、無職やパート・アルバイトの者が多い、ヘルスリテラシーが低下、結婚している者が少ない、相談できる者が少ない)が明らかになった。このデータは、令和4年度に行う既存質問紙調査を利用した統合失調症等を有する者を判別するロジックの開発にも用いる。このロジックを既存の大規模疫学研究データに当てはめて統合失調症等の有病率を推測する予定であるが、その計算においては統合失調症を有する一般住民が大規模疫学研究に参加する率が必要となる。この率を調べる研究のプロトコールの作成を、藤田医科大学病院精神神経科の診療状況を精査したうえで行った。
レセプトデータを用いて日本における統合失調症等の有病率を明らかにするためには、レセプトの病名に統合失調症と記載されている者が正しく統合失調症であることの感度・特異度を明らかにする必要がある。この数値を明らかにする研究のプロトコールの作成を、藤田医科大学病院精神神経科の診療状況を精査したうえで行った。また、生活保護受給者を含まないレセプトデータで統合失調症等の有病率が正しく求められるかを検討した。2014~2019年の厚生労働省社会・援護局保護課「被保護者調査」月次調査より6月審査分の「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」の件数から1か月平均被保護実人員および10月1日時点推計人口による人口一万人当たりの統合失調症による医療扶助件数を算出した。生活保護被保護実人員の2%強が統合失調症による医療扶助件数を受けていると推定でき、生活保護対象者における統合失調症の有病率は一般人口より高かった。しかし、人口一万人当たり生活保護受給者かつ統合失調症による医療扶助を受けている者の割合はおよそ0.03%であった。先行研究から推測される統合失調症の有病率に比べて極めて小さく、生活保護受給者を統合失調症の有病率推計から除外することの影響は小さいと考えた。
レセプトデータを用いて日本における統合失調症等の有病率を明らかにするためには、レセプトの病名に統合失調症と記載されている者が正しく統合失調症であることの感度・特異度を明らかにする必要がある。この数値を明らかにする研究のプロトコールの作成を、藤田医科大学病院精神神経科の診療状況を精査したうえで行った。また、生活保護受給者を含まないレセプトデータで統合失調症等の有病率が正しく求められるかを検討した。2014~2019年の厚生労働省社会・援護局保護課「被保護者調査」月次調査より6月審査分の「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」の件数から1か月平均被保護実人員および10月1日時点推計人口による人口一万人当たりの統合失調症による医療扶助件数を算出した。生活保護被保護実人員の2%強が統合失調症による医療扶助件数を受けていると推定でき、生活保護対象者における統合失調症の有病率は一般人口より高かった。しかし、人口一万人当たり生活保護受給者かつ統合失調症による医療扶助を受けている者の割合はおよそ0.03%であった。先行研究から推測される統合失調症の有病率に比べて極めて小さく、生活保護受給者を統合失調症の有病率推計から除外することの影響は小さいと考えた。
結論
当初の予定通り研究が実施できた。令和3年度は研究スキームを作成するとともに、統合失調症を有する者の主観的健康感・幸福感・生活満足度や身体的・精神的・社会的併存症についての先行文献レビューおよびインターネット調査を完了した。同インターネット調査のデータを用いて、令和4 年度に既存質問紙調査を利用した統合失調症を有する者を判別するロジックの開発を行う。また、令和4年度には統合失調症を有する一般住民が大規模疫学研究に参加する率を調べる研究、および、レセプトの病名に統合失調症と記載されている者が正しく統合失調症であることの感度・特異度を算出するための研究を実施する。
公開日・更新日
公開日
2023-01-17
更新日
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