電話リレーサービスの担い手となる通訳者の養成のための研究

文献情報

文献番号
202118019A
報告書区分
総括
研究課題名
電話リレーサービスの担い手となる通訳者の養成のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20GC1014
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中野 聡子(国立大学法人群馬大学 共同教育学部)
研究分担者(所属機関)
  • 新海 晃(広島大学 大学院人間社会科学研究科特別支援教育学領域)
  • 金澤 貴之(群馬大学 共同教育学部)
  • 二神 麗子(群馬大学 共同教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和2年6月12日に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が公布され,令和3年7月1日から公共インフラとしての電話リレーサービスが開始された。電話リレーサービスの品質を一定水準担保するには,聴覚障害者と聴者のやりとりをつなぐ通訳オペレータの養成教育が不可欠である。本研究では,電話リレーサービスに関わる人々の実態を明らかにすることで,「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する基本的な方針」で示されている「厚生労働省が別に定める養成カリキュラム」の原案を作成することを目的とした。
研究方法
令和3年度は,(1) 手話通訳・要約筆記資格保持者,電話リレーサービスの利用者を対象とした定量調査の結果の分析,(2) 電話リレーサービスに関わる管理職,現役の通訳オペレータ,電話リレーサービスを利用する聴覚障害者に対する定性調査の実施と結果の分析,(3)電話リレーサービス提供機関で実施された通訳オペレータ研修の予備的観察分析,の3つの研究と,令和2年度に行った文献研究によって得られた知見に基づき,通訳オペレータに求められる知識技能等の要素を整理して養成カリキュラム研修修了時の到達目標を設定し,令和2年度に作成したプロトタイプカリキュラムに修正を加えて,カリキュラムを完成させた。
結果と考察
定量調査と定性調査の結果から,手話通訳・要約筆記資格保持者を中心とした通訳オペレータ養成カリキュラムの受講者像について,「手話通訳における理解(読みとり)スキルの不十分さ」「日本語母語話者である難聴者・中途失聴者を利用対象とした文字通訳」「援助者としての意識が強い倫理的価値観」「知識・技術向上に対する意識の低さ」「通訳スキルと経験における地域格差」といった特徴があることが示唆された。電話リレーサービスの利用者を対象とした定量調査,電話リレーサービスに関わる管理職・通訳オペレータ・利用者を対象とした定性調査の結果,電話リレーサービス提供機関が実施した通訳オペレータ研修の予備的な観察分析の結果から,通訳オペレータに求められる知識やスキル等について,「電話リレーサービスの基礎知識と通訳オペレーションの手順」「日本手話・ろう文化を背景とする先天性聴覚障害者に対する手話通訳・文字通訳」「より高度な手話言語スキル,手話通訳/文字通訳スキル」「意思疎通支援事業とは異なる通訳オペレータとしての職業倫理」「職業倫理に則った効果的な意思決定を考え出すスキル」「通話マネジメント方略」「ケース検討の手法」「自己研鑽を続ける意欲及び態度」といった要素が不可欠であると考えられた。
結論
 求められる通訳オペレータ像から,養成カリキュラム研修修了時の到達目標として15項目を設定した。学習成果基盤型教育(outcome based education)の考え方に沿って,到達目標を達成できるように教育全体をデザインした合計40時間のカリキュラム(案)を作成した。カリキュラムの特徴としては,①先天性聴覚障害者の言語感覚・日本語運用力・認知特性・電話リテラシー,日本手話及びろう文化と日本語及び聴文化の違いによるコミュニケーションギャップに関する知識を実践的に学べるようにすること,②通訳オペレーションにおいてオペレータが対応すべき課題を構造的に分析し,職業倫理に則った公平,公正,そして効果的な判断を下せるようにするため,デマンド・コントロール・スキーマ(DC-S)(Dean & Pollard, 2013)を導入すること,③DC-Sの対話型作業分析に基づく省察的実践の手法を学び,研修修了後も現場実践のなかでスキル向上を確実なものにしていくための土台を育むこと,④アクティブ・ラーニングを多く取り入れることで理論と実践を結び付けられるようにすること,⑤アクティブ・ラーニングを効果的なものにし,また知識と技術の向上に対する能動的な学習態度を育てるために反転学習を取り入れること,⑥各回においてルーブリックを導入し受講者が自身の学習到達度と取り組むべき課題を自覚できるようにすること,が挙げられる。

公開日・更新日

公開日
2022-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202118019B
報告書区分
総合
研究課題名
電話リレーサービスの担い手となる通訳者の養成のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20GC1014
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中野 聡子(国立大学法人群馬大学 共同教育学部)
研究分担者(所属機関)
  • 新海 晃(広島大学 大学院人間社会科学研究科特別支援教育学領域)
  • 金澤 貴之(群馬大学 共同教育学部)
  • 二神 麗子(群馬大学 共同教育学部)
  • 能美 由希子(群馬大学 共同教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者について ■能美由希子は令和3年3月31日で研究分担者から外れた。 ■新海晃は,令和2年度に本厚生労働科学研究費で群馬大学共同教育学部研究員として雇用されていたが,令和3年4月1日に広島大学に異動し,研究分担者となった。 ■二神麗子は定性調査を円滑に進めるために令和3年4月1日から研究分担者として新たに加わった。

研究報告書(概要版)

研究目的
令和2年6月12日に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が公布され,令和3年7月1日から公共インフラとしての電話リレーサービスが開始された。電話リレーサービスの品質を一定水準担保するには,聴覚障害者と聴者のやりとりをつなぐ通訳オペレータの養成教育が不可欠である。本研究では,電話リレーサービスに関わる人々の実態を明らかにすることで,「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する基本的な方針」で示されている「厚生労働省が別に定める養成カリキュラム」の原案を作成することを目的とした。
研究方法
(1) 「通話者/通話内容の多様性」「通訳オペレーションに必要な言語/通訳スキル」「電話リレーサービスと意思疎通支援事業の通訳者の役割における違い」「現行の手話通訳・要約筆記制度との比較にみるTRS通訳の機能・役割」 「デマンド・コントロール・スキーマからみた職業倫理に則った判断」「通訳オペレータの身体的/心理的負担」に関する文献調査,(2) 手話通訳・要約筆記資格保持者,電話リレーサービスの利用者を対象とした定量調査,(3) 電話リレーサービスに関わる管理職,現役の通訳オペレータ,電話リレーサービスを利用する聴覚障害者に対する定性調査,(4)電話リレーサービス提供機関で実施された通訳オペレータ研修の予備的観察分析,の4つの研究によって得られた知見に基づいて通訳オペレータに求められる知識技能等の要素を整理し,養成カリキュラム(案)を作成した。
結果と考察
定量調査と定性調査の結果から,手話通訳・要約筆記資格保持者を中心とした通訳オペレータ養成カリキュラムの受講者像について,「手話通訳における理解(読みとり)スキルの不十分さ」「日本語母語話者である難聴者・中途失聴者を利用対象とした文字通訳」「援助者としての意識が強い倫理的価値観」「知識・技術向上に対する意識の低さ」「通訳スキルと経験における地域格差」といった特徴があることが示唆された。電話リレーサービスの利用者を対象とした定量調査,電話リレーサービスに関わる管理職・通訳オペレータ・利用者を対象とした定性調査の結果,電話リレーサービス提供機関が実施した通訳オペレータ研修の予備的観察分析の結果から,通訳オペレータに求められる知識やスキル等について,「電話リレーサービスの基礎知識と通訳オペレーションの手順」「日本手話・ろう文化を背景とする先天性聴覚障害者に対する手話通訳・文字通訳」「より高度な手話言語スキル,手話通訳/文字通訳スキル」「意思疎通支援事業とは異なる通訳オペレータとしての職業倫理」「職業倫理に則った効果的な意思決定を考え出すスキル」「通話マネジメント方略」「ケース検討の手法」「自己研鑽を続ける意欲及び態度」といった要素が不可欠であると考えられた。これらについては文献調査においても同様のことが示唆された。
結論
 求められる通訳オペレータ像から,養成カリキュラム研修修了時の到達目標として15項目を設定した。学習成果基盤型教育(outcome based education)の考え方に沿って,到達目標を達成できるように教育全体をデザインした合計40時間のカリキュラム(案)を作成した。カリキュラムの特徴としては,①先天性聴覚障害者の言語感覚・日本語運用力・認知特性・電話リテラシー,日本手話及びろう文化と日本語及び聴文化の違いによるコミュニケーションギャップに関する知識を実践的に学べるようにすること,②通訳オペレーションにおいてオペレータが対応すべき課題を構造的に分析し,職業倫理に則った公平,公正,そして効果的な判断を下せるようにするため,デマンド・コントロール・スキーマ(DC-S)(Dean & Pollard, 2013)を導入すること,③DC-Sの対話型作業分析に基づく省察的実践の手法を学び,研修修了後も現場実践のなかでスキル向上を確実なものにしていくための土台を育むこと,④アクティブ・ラーニングを多く取り入れることで理論と実践を結び付けられるようにすること,⑤アクティブ・ラーニングを効果的なものにし,また知識と技術の向上に対する能動的な学習態度を育てるために反転学習を取り入れること,⑥各回においてルーブリックを導入し受講者が自身の学習到達度と取り組むべき課題を自覚できるようにすること,が挙げられる。

公開日・更新日

公開日
2022-11-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118019C

収支報告書

文献番号
202118019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
28,301,102円
差引額 [(1)-(2)]
1,698,898円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,011,724円
人件費・謝金 987,625円
旅費 415,540円
その他 5,986,213円
間接経費 6,900,000円
合計 28,301,102円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-11-01
更新日
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