障害者に対する社会リハビリテーション支援プログラム及びその評価手法開発に関する研究

文献情報

文献番号
202118012A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者に対する社会リハビリテーション支援プログラム及びその評価手法開発に関する研究
課題番号
20GC1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 尚久(千葉県千葉リハビリテーションセンター 診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊 崇子(社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団 横浜市総合リハビリテーションセンター 自立支援部 生活支援課/障害者支援施設)
  • 田中 康之(千葉県千葉リハビリテーションセンター 地域支援センター)
  • 鈴木 智敦(名古屋市総合リハビリテーションセンター)
  • 小島 正平(かがわ総合リハビリテーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自立訓練には機能訓練と生活訓練があり、機能訓練は地域生活を営む上で身体機能・生活能力の維持・向上等のためのリハビリテーション、生活等に関する相談等の支援を行うもので、生活訓練は地域生活を営む上で、生活能力の維持・向上等のため、入浴、排せつ及び食事等に関する自立した日常生活を営むために必要な訓練、生活等に関する相談等の支援を行うものである。自立訓練は十分な効果がある支援プログラムにより行われるべきで、これに対する標準的な評価手法があるべきであるが、現状適切に標準化された評価手法が確立されていないことが課題である。本研究はそれぞれの事業所において標準的な評価手法のもとに十分な効果がある支援プログラムが利用者全てに適用されることを目的で行った。
研究方法
1.標準化された評価手法である社会的生活自立度評価の開発
標準化された評価手法として社会的生活自立度評価(Social Independent Measure;以下SIMと略)を開発し、その妥当性について検討した。対象は118名。障害の種別は肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、高次脳機能障害、知的障害、精神障害である。SIMの評価は健康管理、金銭管理、身の回りの管理、買い物、家事活動、調理、生活のセルフマネジメント、公共交通機関利用、自動車運転、人間関係、仕事/学校、余暇活動、日中活動、制度・サービス活用の13項目とした。それぞれの評価は7段階とした。評価は入所時と退所時にそれぞれ行い、統計学的に検討した。
2.自立訓練のプログラムおよび支援内容に関する調査研究
対象は全国の自立訓練事業所及びその利用者のうち、目標達成した事例を提出した。調査票に従い、自立訓練事業所の利用者に対し、実際に提供した支援プログラム等、実施形式、実施頻度、各支援プログラム等における評価指標の有無、職員・利用者が目標達成に対して、その支援プログラム等に効果を実感できたかを回答してもらった。調査票から集まったデータを、障害種別ごとに分析した。支援プログラム等の内容は、H30推進事業の分類をもとに、1)機能維持・向上訓練(8項目)、2)ADL訓練(14項目)、3)IADL・社会生活力訓練(32項目)、4)一般就労に向けた訓練(6項目)、5)その他の訓練(10項目)、6)地域移行・社会生活に向けた支援(18項目)、7)家族支援(5項目)、8)地域貢献活動(5項目)の8分類に整理した。
結果と考察
結果
1.標準化された評価手法である社会的生活自立度評価の開発
FIM利得は平均15.1点であった。障害別では総利得差が大きかったのは片麻痺、脊髄損傷、視覚障害、高次脳機能障害であった。重み付けカッパ指数ではかなり一致に相当し、評価者間信頼性が確保され、SIMを社会的生活自立の客観的評価指標とする可能性が見込まれた。
2.自立訓練のプログラムおよび支援内容に関する調査研究
 職員・利用者ともに効果を実感しているプログラムは多くあり、利用者の障害状況や目標に応じて支援プログラム等は個別に組み合わせて実施されていた。自立訓練が行っている社会リハビリテーションの中心であるIADL/社会生活力訓練と地域移行・社会生活に向けた支援は、どの障害においても職員・利用者の効果の実感率が高く、身体機能の維持・向上やADL訓練、地域貢献活動は障害種別や障害状況によって提供されていた。
考察
SIMの作成に関しては、自立訓練の利用者の変化を捉えられたこと、事業種別、利用形態、性別の総利得に有意差が認められなかったことから、試行版SIMを自立訓練の評価指標とできそうである。障害種別詳細においては、それぞれの利得差の平均値に差が見られたが、サンプル数が少ないことから、障害種別詳細における試行版SIM活用による効果検出については、更に調査を行う必要がある。検者間信頼性について高い信頼性が得られたが採点のばらつきがあり、採点基準の表記や解説等を再考する必要がある。自立訓練のプログラムに関しては、社会リハビリテーション支援プログラムに関するSIMと支援プログラムの実施率をもとに、標準的支援プログラム等の構成要素を提案した。標準的プログラム等や標準的プログラムマニュアルの作成とSIMによる効果検証はさらなる検討が必要と思われた。
結論
それぞれの事業所において標準的な評価手法のもとに十分な効果がある支援プログラムが利用者全てに適用されることを目的に研究を行った。SIMを開発して検証を行い、ほとんどの障害に対して機能訓練、生活訓練とも有意な効果を示すことができた。自立訓練のプログラムに関しては幅広い分野に渡って多くのプログラム等を提供され、標準的なプログラムと、さらに発展したプログラムに分類できた。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202118012B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者に対する社会リハビリテーション支援プログラム及びその評価手法開発に関する研究
課題番号
20GC1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 尚久(千葉県千葉リハビリテーションセンター 診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊 崇子(社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団 横浜市総合リハビリテーションセンター 自立支援部 生活支援課/障害者支援施設)
  • 田中 康之(千葉県千葉リハビリテーションセンター 地域支援センター)
  • 鈴木 智敦(名古屋市総合リハビリテーションセンター)
  • 小島 正平(かがわ総合リハビリテーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
R2年度には機能訓練、生活訓練ともに標準化された評価手法の確立を行うこと、事業所を類型化し、各類型の中で共通して行っている支援手法と、特定のニーズに対応した支援手法の把握を行う。R3年度には標準化された評価手法として社会的生活自立度評価(Social Independent Measure; SIM)を開発し、機能訓練、生活訓練とも効果を示すことができるか、また自立訓練に関してはそれぞれのプログラムに対して標準的なプログラムと発展したプログラムに分類して示すことができるかを検証した。
研究方法
1. 標準化された評価手法である社会的生活自立度評価の開発
R2年度ではデータ入力項目は基本情報、FIM、Life Space Assessment、屋外移動能力などとした。R3年度は標準化された評価手法として社会的生活自立度評価(Social Independent Measure;以下SIMと略)を開発し、その妥当性を検討した。SIMの評価は健康管理、金銭管理、身の回りの管理、買い物、家事活動、調理、生活のセルフマネジメント、公共交通機関利用での外出、自動車運転、人間関係、仕事/学校、余暇活動、日中活動、制度・サービス活用の13項目とした。それぞれの評価は7段階とした。評価は入所時と退所時に行い、この平均値を用いた。
2. 自立訓練のプログラムおよび支援内容に関する調査研究
R2年度では類型化された事業所での支援手法の把握とし、プログラム内容に関するアンケートと障害に対するプログラム内容を調査した。R3年度では全国の自立訓練事業所を対象に調査し、提供した支援プログラム、評価指標の有無、目標達成に対して効果を実感できたかを回答した。
結果と考察
結果
1.標準化された評価手法の確立の既存評価指標の調査結果
R2年度は既存指標を用いて機能訓練の利用前後を比較したところ、身体面、精神面、日常生活や社会生活面での改善を数値化できた。評価指標は訓練と利用者の変化との関連性が明らかとなり、生活訓練では利用前後で利用者の精神面、日常生活や社会生活面で改善されていることが明らかとなった。R3年度では標準化された評価手法としてSIMを開発し、障害別で調査した結果、利得で有意な変化がみられた。障害別では総利得差が大きかったのは片麻痺、脊髄損傷、視覚障害、高次脳機能障害で、SIMが社会的生活自立の客観的評価指標になり得ると思われた。
2. 類型化された事業所での支援手法の把握
R2年度ではプログラム提供として幅広い分野で多くのプログラムを提供していることが示された。目標達成したケースについて、プログラム等の実施率と効果実感率を分析し、効果があると思われるプログラム等を障害種別ごとに類型化できた。R3年度では調査票に従い、提供した支援プログラム、実施形式、実施頻度、各支援プログラム等における評価指標の有無などを調査した。支援プログラムの内容は機能維持・向上訓練、ADL訓練、IADL・社会生活力訓練、一般就労に向けた訓練、地域移行・社会生活に向けた支援、家族支援、地域貢献活動に整理できた。
考察
R2年度には機能訓練、生活訓練ともに標準化された評価手法の確立を行うこと、事業所を類型化し、共通して行っている支援手法と、特定のニーズに対応した支援手法の把握を行った。評価指標調査票の検討では、「機能的自立度評価(FIM)」「手段的日常生活活動(IADL)尺度」「WHODAS」「Recovery Assessment Scale」「WHOQOL」に加え、「Life Space Assessment」「実用的歩行能力分類」を加えた。これらの指標が効果判定に使えそうであることがわかった。類型化された事業所での支援手法の把握では幅広い分野にプログラムを提供していた。SIMの作成に関しては自立訓練の利用者の変化を捉えられ、評価指標とすることができると思われた。自立訓練のプログラムおよび支援内容に関しては、SIMと支援プログラムの実施率や効果をもとに、標準的支援プログラム等の構成要素を提案できた。
結論
R2年度には機能訓練、生活訓練ともに標準化された評価手法により事業所を類型化し、共通して行っている支援手法と、特定のニーズに対応した支援手法の把握が行えた。既存の指標を活用して、機能訓練、生活訓練とも有意な効果を示せた。また類型化された事業所での支援手法の把握では幅広い分野でプログラムを提供していた。R3年度にはSIMを開発して検証を行い、各障害に対して機能訓練、生活訓練とも有意な効果を示せた。自立訓練のプログラムと支援内容に関しては幅広い分野でそれぞれのプログラムに対して標準的なプログラムと、発展したプログラムに分類できた。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118012C

収支報告書

文献番号
202118012Z