精神保健・福祉に関するエビデンスのプラットフォーム構築及び精神科長期入院患者の退院促進後の予後に関する検討のための研究

文献情報

文献番号
202118003A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健・福祉に関するエビデンスのプラットフォーム構築及び精神科長期入院患者の退院促進後の予後に関する検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19GC1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 さやか(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中西 三春(東北大学大学院医学系研究科)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,477,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は国内の実践家が効果的な実践を行うための支援として、1)精神保健福祉サービスの効果等についてのエビデンスの収集及び分類、専門的知見を介した信頼性等の評価、2) 国内外の調査・研究等のシステマティックレビュー(Systematic review:SR)の実施、3)1)2)の結果等を容易に入手可能な日本語プラットフォームの構築、を行うことであった。
研究方法
SRに関しては、Participantsを18-64歳までの重症精神障害(統合失調症、双極性障害、大うつ病)をもつ人、Exposureをlong-term(more than 1 year)for psychiatric hospitals/wards、Outcomeを再入院の有無、入院日数/地域滞在日数、就労/学校等の社会参加と定めてMEDLINE、PsycINFO、Web of Science、CINAHL、医中誌を用いて観察研究およびRCTデザインの介入研究について論文検索を行った。
プラットフォームの構築に関しては、コクランレビューより重度精神疾患患者に対して行われ、かつ地域で実施される心理社会的支援を扱っているコクランレビューを収集した。各Webページは冒頭に支援技法(認知行動療法とは?)や臨床的疑問(入院期間は長いよりも短いほうがいいのか?)について独自に作成したシンプルな説明を配置し、その下部にコクランレビューの基礎情報、結果の早見表とその説明、留意点、引用情報が掲載した。コンテンツ作成にあたっては「段階的な情報の提示」「解釈が難しい数値データの割愛」など精神保健関係者へのGIで得られた意見を取り入れ、当事者、家族、地域生活支援の実践家など、研究活動になじみの薄い関係者にとっても理解しやすい情報提示となるよう心掛けた。加えて、さらに詳細に知りたい閲覧者には、引用情報のリンクからコクラン・ジャパンに掲載されている平易な要約(Plain language summary: PLS)に遷移できる設計とした。
結果と考察
SRについて、検索および精査の結果、最終的に英文3編、和文2編合計5編(n=2,424)が組み入れ対象となった。統合失調症をもつ1年以上の長期入院患者の4-10年間の再入院率は約60%であった。指標入院と比べて再入院の入院期間は短く、病院から地域に退院することは患者の社会的機能や主観的報告の向上など、精神症状とは異なる重要な臨床アウトカムの改善に寄与することが示唆された。
プラットフォームの構築について、46本のレビューが選定され、支援方法の重複(同じ支援技法だが対象疾患が異なる場合など)を整理した結果、24の支援技法、3つの臨床的疑問、合計27のコンテンツについてそれぞれWebページを作成した。プラットフォームを「こころとくらし」(略称ここくら)(https://cocokura.ncnp.go.jp/)と命名し、2021年7月に公開した。
結論
本研究のうち、SRの結果から、これまで脱施設化や地域移行の先達として研究者や行政が参考にしてきた米国、英国、西欧のような地域だけでなく、同時代に同じ課題を抱える東欧などの地域と情報交換をすることで2020年代にマッチした地域移行支援の枠組み構築に資する可能性が見いだされた。またプラットフォームの構築によって近年がんや慢性疾患の領域で重要性が指摘され、精神科医療においても注目が高まっている「研究成果の臨床実践への還元や普及を目指す実装科学」や「医学研究・臨床試験における患者・市民参画(Patient and Public Involvement:PPI)」の推進の一助となり得る。さらに多様な立場の支援者が地域精神科医療に関する科学的根拠にアクセスしやすくなり、支援の際に活用可能となる。これらの実践の積み重ねにより「精神障害にも対応する地域包括ケアシステム」の促進に資することができる。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202118003B
報告書区分
総合
研究課題名
精神保健・福祉に関するエビデンスのプラットフォーム構築及び精神科長期入院患者の退院促進後の予後に関する検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19GC1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 さやか(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中西 三春(東北大学大学院医学系研究科 精神看護学分野)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は国内の実践家が効果的な実践を行うための支援として、1)精神保健福祉サービスの効果等についてのエビデンスの収集及び分類、専門的知見を介した信頼性等の評価、2) 国内外の調査・研究等のシステマティックレビュー(Systematic review:SR)の実施、3)1)2)の結果等を容易に入手可能な日本語プラットフォームの構築、を行うことであった。
研究方法
SRに関しては、Participantsを18-64歳までの重症精神障害(統合失調症、双極性障害、大うつ病)をもつ人、Exposureをlong-term(more than 1 year)for psychiatric hospitals/wards、Outcomeを再入院の有無、入院日数/地域滞在日数、就労/学校等の社会参加と定めてMEDLINE、PsycINFO、Web of Science、CINAHL、医中誌を用いて観察研究およびRCTデザインの介入研究について論文検索を行った。
プラットフォームの構築に関しては、コクランレビューより重度精神疾患患者に対して行われ、かつ地域で実施される心理社会的支援を扱っているコクランレビューを収集した。各Webページは冒頭に支援技法(認知行動療法とは?)や臨床的疑問(入院期間は長いよりも短いほうがいいのか?)について独自に作成したシンプルな説明を配置し、その下部にコクランレビューの基礎情報、結果の早見表とその説明、留意点、引用情報が掲載した。コンテンツ作成にあたっては「段階的な情報の提示」「解釈が難しい数値データの割愛」など精神保健関係者へのGIで得られた意見を取り入れ、当事者、家族、地域生活支援の実践家など、研究活動になじみの薄い関係者にとっても理解しやすい情報提示となるよう心掛けた。加えて、さらに詳細に知りたい閲覧者には、引用情報のリンクからコクラン・ジャパンに掲載されている平易な要約(Plain language summary: PLS)に遷移できる設計とした。
結果と考察
SRについて、検索および精査の結果、最終的に英文3編、和文2編合計5編(n=2,424)が組み入れ対象となった。統合失調症をもつ1年以上の長期入院患者の4-10年間の再入院率は約60%であった。指標入院と比べて再入院の入院期間は短く、病院から地域に退院することは患者の社会的機能や主観的報告の向上など、精神症状とは異なる重要な臨床アウトカムの改善に寄与することが示唆された。
プラットフォームの構築について、46本のレビューが選定され、支援方法の重複(同じ支援技法だが対象疾患が異なる場合など)を整理した結果、24の支援技法、3つの臨床的疑問、合計27のコンテンツについてそれぞれWebページを作成した。プラットフォームを「こころとくらし」(略称ここくら)(https://cocokura.ncnp.go.jp/)と命名し、2021年7月に公開した。
結論
本研究のうち、SRの結果から、これまで脱施設化や地域移行の先達として研究者や行政が参考にしてきた米国、英国、西欧のような地域だけでなく、同時代に同じ課題を抱える東欧などの地域と情報交換をすることで2020年代にマッチした地域移行支援の枠組み構築に資する可能性が見いだされた。またプラットフォームの構築によって近年がんや慢性疾患の領域で重要性が指摘され、精神科医療においても注目が高まっている「研究成果の臨床実践への還元や普及を目指す実装科学」や「医学研究・臨床試験における患者・市民参画(Patient and Public Involvement:PPI)」の推進の一助となり得る。さらに多様な立場の支援者が地域精神科医療に関する科学的根拠にアクセスしやすくなり、支援の際に活用可能となる。これらの実践の積み重ねにより「精神障害にも対応する地域包括ケアシステム」の促進に資することができる。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
長期入院の統合失調症圏患者を7年程度追跡した場合の再入院率は6割ほどであること、再入院期間は指標入院よりは短くなることなどが明らかとなった。我が国はこれまで長期入院患者の予後の予測について、地域ケアシステムがすでに機能している西欧や米国を参考にしようと試みてきたが、今後は東欧やイスラエル国など、同時代に同じ「長期入院患者の地域移行とその後の地域生活支援の実現」という課題を有する国々の状況からも学びが得られる可能性が示唆された。
本課題で実施したSystematic reviewは現在投稿中である。
臨床的観点からの成果
本研究の実施により、近年がんや慢性疾患の領域で重要性が指摘され、精神科医療においても注目が高まっている「研究成果の臨床実践への還元や普及を目指す実装科学」や「医学研究・臨床試験における患者・市民参画(Patient and Public Involvement:PPI)」の推進の一助となり得る。
ガイドライン等の開発
該当せず。
その他行政的観点からの成果
第7次医療計画に謳われる「精神障害にも対応する地域包括ケアシステム」では精神障害者への地域ケアの提供が前提となっているが効果的な地域移行/地域定着および地域ケアに関す科学的根拠を一定の基準で示したプラットフォームはこれまで作成されてこなかった。本研究で作成したプラットフォームによって多様な立場の支援者が地域精神科医療に関する科学的根拠にアクセスしやすくなり、支援の際に活用可能となる。これらの実践の積み重ねにより「精神障害にも対応する地域包括ケアシステム」の促進に資することができる。
その他のインパクト
-精神障害当事者の地域生活にかかわる研究結果紹介サイト-「こころとくらし」(https://cocokura.ncnp.go.jp/)2021年7月13日公開

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato S, Nakanishi M, Ogawa M et al.
Rehospitalisation rates after long-term follow-up of patients with severe mental illness admitted for more than one year: a systematic review.
BMC Psychiatry , 23 (1) , 788-788  (2023)
10.1186/s12888-023-05290-x.

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
2025-07-01

収支報告書

文献番号
202118003Z