循環器疾患に対する根拠に基づく鍼治療の開発

文献情報

文献番号
200835018A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器疾患に対する根拠に基づく鍼治療の開発
課題番号
H18-医療・一般-023
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
川田 徹(国立循環器病センター 研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 宍戸 稔聡(国立循環器病センター 研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 宮本 忠吉(森ノ宮医療大学 保健医療学部理学療法学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東洋医学において鍼治療の循環器疾患への適用の歴史は長いが、西洋医学のように科学的根拠に根ざした医療が実践されるにはいたっていない。その原因として、種々の循環パラメータを厳密に測定しながら治療機序の検証ができる動物実験を用いた基礎研究の不足が挙げられる。そこで、本研究課題では動物実験を用いて鍼治療の効果を系統的かつ定量的に評価することによって、鍼治療の観点から循環器疾患に対する総合医療を推進するための基盤を確立することを目的とする。また、動物実験の結果をヒトに応用すべく、健常者においてフィードバック型電気鍼システムの開発に関する基礎研究を実施する。
研究方法
研究1:前年度までに開発したフィードバック型電気鍼システムのヒトへの応用を考えて、インフォームドコンセントを得た健常者において電気鍼が血圧及び心拍数に及ぼす応答を定量化した。研究2:病態における電気鍼の治療応用を考えて、心筋梗塞後ラット心不全モデルを用いて電気鍼刺激実験を行った。研究3:電気鍼に対する血圧応答と心拍数応答の乖離の原因を究明するために、麻酔ネコにおいて心臓交感神経活動と腎臓交感神経活動の同時記録を行った。
結果と考察
研究1:ヒトにおいても通電による痛みを感じない強度で心拍数が低下することを確認した。研究2:ラットにおける電気鍼の作用はネコに比べて小さく、心不全ラットにおける電気鍼の効果は僅かであった。ただし、ラットにおいても圧受容器への入力圧を制御した詳細な実験を行うことにより、電気鍼で交感神経活動が抑制されること、その一因が通電刺激による交感神経活動の引き込み現象であることが示唆された。研究3:麻酔ネコにおいて電気鍼が交感神経活動に及ぼす影響には部位差があることを実証した。
結論
フィードバック原理を用いることで電気鍼刺激によって交感神経活動を定量的に制御し、それによって血圧を正確に制御し得ることが実証された。電気鍼が交感神経活動に及ぼす影響には種差(ネコとラットの違い)、部位差(心臓交感神経活動と腎臓交感神経活動の違い)があることから、循環器疾患の治療を目的とした電気鍼の実施にはさらなる情報が不可欠である。また、ヒトにおいて電気鍼が循環系に及ぼす影響の系統的、定量的なデータは依然として乏しく、血圧や心拍数などの測定値に基づいて電気鍼の効果を客観的に評価するような研究の継続が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200835018B
報告書区分
総合
研究課題名
循環器疾患に対する根拠に基づく鍼治療の開発
課題番号
H18-医療・一般-023
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
川田 徹(国立循環器病センター 研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 宍戸 稔聡(国立循環器病センター 研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 宮本 忠吉(森ノ宮医療大学 保健医療学部理学療法学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東洋医学において鍼治療の循環器疾患への適用の歴史は長いが、西洋医学のように科学的根拠に根ざした医療が実践されるにはいたっていない。その原因として、種々の循環パラメータを厳密に測定しながら治療機序の検証ができる動物実験を用いた基礎研究の不足が挙げられる。そこで、本研究課題では動物実験を用いて鍼治療の効果を系統的かつ定量的に評価することによって、鍼治療の観点から循環器疾患に対する総合医療を推進するための基盤を確立することを目的とする。また、健常者においてフィードバック型電気鍼システムの開発に関する基礎研究を実施する。
研究方法
1年目:麻酔ネコを用いて電気鍼の刺激パルス幅や刺激周波数を変化させて血行動態の定常応答及び過渡応答を調べた。2年目:血圧を目標値として電気鍼の刺激強度を自動的に調節できるフィードバックシステムを作成し、動作を検証した。3年目:フィードバック型電気鍼システムのヒトへの応用を目指して、インフォームドコンセントを得た健常者において電気鍼が血圧及び心拍数に及ぼす応答を定量化した。また、心筋梗塞後ラット心不全モデルを用いて電気鍼刺激実験を行った。
結果と考察
1年目:麻酔ネコにおいては刺激周波数10 Hzで降圧作用が最大になること、電気鍼に対する降圧応答の動特性が2次遅れ系で近似できることを明らかにした。2年目:コンピュータシミュレーションを用いて血圧フィードバックによる電気鍼システムを設計し、麻酔ネコにおいて1分以内に20 mmHgの降圧を達成することに成功した。3年目:ヒトにおいても通電による痛みを感じない強度で心拍数が低下することを確認した。心不全ラットにおける電気鍼の効果は僅かであったが、圧受容器への入力圧を制御した実験を行うことにより、電気鍼で交感神経活動が抑制されることが示唆された。
結論
フィードバック原理を用いることで電気鍼刺激によって交感神経活動を定量的に制御し、それによって血圧を正確に制御し得ることが実証された。植込み電極などを用いて慢性的に交感神経活動をモニターできるようになれば、交感神経活動そのものを制御目標値として、循環器疾患を治療するシステムを開発できる可能性がある。ただし、ヒトにおいて電気鍼が循環系に及ぼす影響の系統的、定量的なデータは依然として乏しく、血圧や心拍数などの測定値に基づいて電気鍼の効果を客観的に評価するような研究の継続が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-06-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200835018C