がん治療による副作用の緩和に関する統合医療の研究

文献情報

文献番号
200835016A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療による副作用の緩和に関する統合医療の研究
課題番号
H18-医療・一般-021
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
下山 直人(国立がんセンター中央病院 手術・緩和医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 花輪 壽彦(北里大学東洋医学総合研究所)
  • 津嘉山 洋(筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター)
  • 河野 勤(国立がんセンター中央病院 乳腺腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.がん患者の化学療法後の末梢神経障害に伴う患者の抱える難治性の苦痛を、鍼灸が改善させるかを臨床治験により検討する。 2.上記疾患に対する鍼灸の適応に関するガイドラインを作成する。3.漢方薬である疎経活血湯の有効性を基礎、臨床研究の両面で検討した。4.非ステロイド性消炎鎮痛薬であるエトドラックの神経障害性疼痛予防効果を検討する。
研究方法
1.対象は、パクリタキセルによって発現した痛み、しびれに対して鎮痛薬、鎮痛補助薬による治療法が奏功しない患者で、前向きオープン研究とした。QOL評価法としてSF36質問紙法を行った。
2.がん治療に関わるエビデンス
1)がん治療と鍼灸療法のエビデンスの調査、2)がん治療にも関わる鍼灸エキスパートとの情報共有のため国内がんと鍼灸研究会の開催、国外代替療法学会に参加し、国内外の研究者との情報交換を行った、3)鍼灸師を対象としたアンケート調査の集計、4)ガイドラインの作成、以上を計画した。
3.タキサン系抗癌剤に対する漢方薬による、前後比較試験を計画した。疎経活血湯の化学療法時のしびれに対する臨床効果を主なエンドポイントとし、その有用性を明らかにする。同時に基礎研究についても検討を行う。
4.Vitamine Eの先行研究を参照に片群30例規模の臨床試験を計画した。
結果と考察
1.2008年12月までに2例の患者が登録し、治療期間も終了している。1例は有効、1例はやや有効であり、無効、悪化の例はなかった。今後、症例数を増加させる方法を検討中である。
2.ガイドライン作成
以下の経過で作成中である。
 1) Clinical Question.の決定、2)Clinical Questionに対するエビデンスの提示、3)Clinical Questionへの回答の作成
3.21年1月末時点でパクリタキセル群16例のエントリーがあった。現在は、対照となる群の症例集積中(現在8例)。
基礎研究については、パクリタキセル惹起性末梢神経障害のモデルマウスを作成した。病理学的に末梢神経の変性等につき検索、検討が可能となった。
4.臨床試験の開始に向け、ランダム化、データマネージメントの方法を検討中である。
結論
鍼灸、漢方を中心とした統合医療の有効性を基礎研究による機序の解明、臨床における有効性の検討のために、臨床治験の計画を進めるべきである。

公開日・更新日

公開日
2009-06-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200835016B
報告書区分
総合
研究課題名
がん治療による副作用の緩和に関する統合医療の研究
課題番号
H18-医療・一般-021
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
下山 直人(国立がんセンター中央病院 手術・緩和医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 花輪 壽彦(北里大学東洋医学総合研究所)
  • 津嘉山 洋(筑波技術大学保健科学部附属東西学統合医療センター)
  • 河野 勤(国立がんセンター中央病院 乳腺腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の治療に伴う痛みとして、パクリタキセル惹起性末梢神経障害関連の苦痛を取り上げ、それに対する鍼灸および漢方を中心として統合医療の有用性を検証する。
研究方法
目的の実現のために、1.がん患者に対する鍼灸治療の現状調査を行うとともに、それをもとに臨床治験を計画すること、2.がん患者の苦痛に対する鍼灸治療の認知度のアンケート調査をおこない、そのニーズに応じてのガイドラインの作成を行うこと、3.漢方薬の上記に対する有効性を検討するため疎経活血湯を用い1)臨床研究、2)基礎研究を行うこと、4.西洋薬であるNSAIDs(エトドラック)を用い、末梢神経障害の予防効果に関する研究を計画すること、以上を行う。
結果と考察
1.国立がんセンター中央病院において、鍼灸治療の対象となった60例の患者のがん患者の苦痛を分析した。頻度が高かったのは、しびれ、便秘、筋肉のこりといずれも17例(28.8%)と最も多かった。また、痛みの成因に関してもがんそのものの痛みよりも、治療に伴う痛みの頻度の方が高かった。有効性が高い治療に伴う苦痛の緩和に焦点をしぼり、化学療法に伴う末梢神経症状の緩和に関する臨床試験を計画した。 倫理審査委員会審査をうけ、2008年12月までに2例の症例に対して治療を行った。2.鍼灸のがん患者の苦痛症状に関するガイドライン作成のため、エビデンスの集積ののち推奨項目を作成しガイドライン案を作成した。3.疎経活血湯の末梢神経障害に対する1)臨床効果の検討をおこなった。プロトコールに従い、21年1月末時点でパクリタキセル群16例のエントリーがあったが、メコバラミンを対象とした検討では有意な差を認めなかった。2)モデルマウスを用いて、漢方薬の有効性や作用機序についても検討し、化学療法の副作用軽減における漢方薬の有用性を総合的に検証することを試みた。その結果、漢方に関しては、末梢神経の変成を形態学的に検討できるモデルを作成することが可能となり、それを指標にして、動物の疼痛行動との比較が可能となった。4.交感神経活動を指標としてサーモグラフィーを用い末梢温を評価した結果、痛み、しびれの強さとの相関はなかった。エトドラックの研究では、神経症状の予防効果に関する研究を計画した。
結論
鍼灸、漢方を中心とした統合医療の有効性を臨床治験により検討し続けていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-06-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200835016C