文献情報
文献番号
202116001A
報告書区分
総括
研究課題名
実証研究に基づく訪問看護・介護に関連する事故および感染症予防のガイドライン策定のための研究
課題番号
19GA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
柏木 聖代(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 緒方 泰子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
- 橋本 廸生(公益財団法人日本医療機能評価機構)
- 齋藤 良一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 浜野 淳(筑波大学 医学医療系)
- 大河原 知嘉子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,871,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和3年度は、1)訪問看護事業所の従事者における有害事象の発生状況ならびに関連要因の検討、2)COVID-19流行下の全国の訪問介護事業所における個人防護具着用の実施状況、3)訪問介護事業所における事故予防対策の実施状況、4)訪問看護事業所における薬剤耐性菌の保有状況の把握、そして、5)これまで実施した実証研究を踏まえた訪問看護・介護に関連する事故及び感染症予防のガイドラインの作成を目的とした。
研究方法
1)2020年3月に実施した全国の訪問看護事業所を対象とした郵送法による自記式質問紙調査データを二次利用し、分析を行った。2)2021年1-2月に実施した層化無作為抽出した全国の訪問介護事業所2000事業所の管理者を対象とした無記名のWeb調査データの分析を行った。3)2021年11月から12月にかけて、訪問看護ステーション5カ所を対象に、事業所環境の20サンプル、計100サンプルを採取し、薬剤耐性菌汚染の実態を把握した。
結果と考察
1)訪問看護従事者の事故については、33.1%の事業所で訪問看護従事者に関する何らかの事故が発生しており、多変量解析の結果、緊急訪問看護対応、再発防止にむけ事故事例分析の実施、看護職員常勤換算数が多い、事業開設年数が短いことが、事業所の事故発生に関連するという結果が示され、体制が整備されている事業所ほど事故を検出できている可能性が示唆された。さらに、訪問看護従事者の事故が発生していた訪問看護ステーションにおける訪問看護常勤換算数10人あたりの事故の発生件数は中央値3.3件であり、多変量解析の結果、看護職員常勤換算数が少ない訪問看護ステーションほど訪問看護従事者の事故件数が多いことが明らかになった。これらの結果から、すべての訪問看護ステーションにおいて、事故や感染症の発生状況のモニタリングの徹底すること、さらに小規模訪問看護ステーションにおいては、安全管理体制の整備が課題であることが明らかになった。2)COVID-19流行下の全国の訪問介護事業所における個人防護具着用の実施状況については、2021年3月に訪問介護事業所に実施した全国調査(有効回答:197事業所)により、訪問介護事業所においては、おむつ交換時のPPEの使用、特にエプロンの使用の遵守率が低く、多変量解析の結果、感染症が発生していることをモニタリングしている事業所はPPE使用を遵守する可能性が高いことが明らかとなった。これらの結果から、単にマニュアル作成や研修システムの構築だけではなく、適切なPPE使用のための効果的なプロセス実施の必要性が示唆された。3)訪問介護事業所における事故予防対策の実施状況については、感染対策マニュアル作成、携行式アルコール手指消毒薬の配布、職員研修は約9割で実施されているが、手指衛生の遵守状況のモニタリング、委員会や担当者の配置、清掃状況に課題があることが明らかとなった。このことから、感染予防対策を実施する上での課題として感染症に関する専門的な知識・人材の不足が示唆された。4)訪問看護ステーション5カ所を対象に調査を行った。その結果、事業所環境において、薬剤耐性菌が検出されたのは1事業所のシンクであった。5)これまでに得られた研究成果をもとにガイドライン案を作成した。さらに、訪問看護・介護事業所におけるガイドラインの適用にむけ、事業所での事故の発生状況のモニタリングの実際について意見聴取をおこなった。
結論
国内外における文献検討ならびに全国の自治体の介護保険事業者における事故発生時における報告取扱要領の分析、訪問看護事業所の管理者を対象としたインタビュー、訪問看護ならびに訪問介護事業所を対象とした全国調査による事故・感染症の発生状況と予防策に関する実態把握、事故事例の定性分析、細菌学的調査等により、感染症を含む事故発生や関連要因を明らかにした。これらの得られた知見に基づきガイドラインを作成した。
公開日・更新日
公開日
2022-05-24
更新日
-