難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズの把握とその解決に向けた研究

文献情報

文献番号
202113002A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズの把握とその解決に向けた研究
課題番号
20FE1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
宮前 多佳子(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 森 雅亮(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 山路 健(順天堂大学 医学部 膠原病内科)
  • 吉藤 元(京都大学大学院医学研究科 内科学講座臨床免疫学)
  • 西小森 隆太(久留米大学 医学部小児科)
  • 井澤 和司(京都大学大学院医学研究科発達小児科学講座)
  • 岸田 大(信州大学 医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)
  • 井上 永介(昭和大学統括研究推進センター)
  • 井上 祐三朗(千葉県こども病院 アレルギー・膠原病科)
  • 酒井 良子(明治薬科大学 薬学部)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター  研究所 小児慢性特定疾病情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性・希少免疫疾患の患者代表を含めた各医療利害関係者におけるアンメットニーズ(UMN)の全容を明らかにし、患者集団のUMNの把握に適した国際標準指標を選定して集積することで「見える化」し、地域格差を含めた把握とその解決に向け疫学研究、普及啓発、小児成人期移行医療の推進に反映させることができる方法論を確立することを本研究の目標とする。
研究方法
対象とする難治性・希少免疫疾患を、1)自己免疫疾患(成人移行若年性特発性関節炎、若年性特発性関節炎(JIA)・関節リウマチ(RA)を含む難治性自己免疫疾患)、2)血管炎症候群(高安動脈炎(TAK))、3).自己炎症疾患に分類し分担班を設置した。関連する患者会として、1)膠原病友の会、あすなろ会(若年性特発性関節炎患者会)、2)あけぼの会(高安動脈炎患者会)、3)クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)患者・家族の会、自己炎症患者友の会が分担班に所属し参画した。今年度は各疾患班が共同で、図書館検索によるUMN探索、想定されるUMNの検証を目的とした各対象疾患の診療実態に関する大規模データベース(DB)解析、製薬会社のUMNの把握、国際生活機能分類(ICF)を用いた患者会への相談事例の客観的評価を行った。
結果と考察
1. 図書館検索による自己免疫疾患・血管炎症候群・自己炎症疾患のアンメットニーズ探索研究
代表的な自己免疫疾患・血管炎症候群・自己炎症性疾患においてUMNを把握すること、どのような尺度を用いてUMN評価が行われているのかを把握する目的で前年度図書館検索により抽出した文献について、構造化抄録を作成した。各対象疾患のUMNに関する情報を収集したが、疾患や報告研究により調査内容や評価指標が異なるため、既報における比較は困難とであった。UMN研究における包括的QOL尺度の重要性が示唆された。
2. アンメットニーズ(UMN)検証を目的としたナショナルデータベース(NDB)および小児慢性特定疾病・指定難病データベースによる医療実態の把握に関する研究
疾患特異的、疾患共通のUMN案を選定し、NDBのみ、小児慢性・指定難病データでのみ、双方で検証するもの、に分類し各DBの申請を行った。NDB解析対象疾患としてJIA/RA、TAK、CAPS、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群(APS)を選定した。想定される疾患特異的、疾患共通のUMN案を患者[疾患]特性、医療の内容、医療費、ライフステージ、地域格差に分類し前年度に申請し、NDBは2021年7月に承認された。データ提供は2022年4月の予定である。小児慢性特定疾病・指定難病データは、2021年3月に利用が許可された。2022年1月にデータ提供をうけ、2月に厚労省による実地監査が終了し、データ解析を開始した。
3. 製薬会社・保険者のアンメットニーズの探索研究
患者・医療者以外の医療利害関係者である製薬企業・保険者のUMNを明らかにするため、日本製薬工業協会の協力を得て、難治性・希少免疫疾患のUMNに関するアンケートを72社の製薬企業社員203名から回答を得た。回答者の薬物治療の貢献度に関するUMNは成人、小児領域でそれぞれ42%、66.7%で小児により高いことが示された。小児領域では、成人発症疾患との病態の相違(小児発症例の特性)、医療経済評価の違い、エビデンスの低さなどが挙げられた。また、製薬企業が患者のUMNの把握が困難と感じていることが示された。保険者のUMNの探索は、保険者の協力が得えられず断念した。
4. PRO(patient reported outcome)の検討とICT化に関する研究
難治性・希少免疫疾患患者のUMNを捉えるため、国際生活機能分類(ICF)を用いた患者会への相談事例の客観的評価を試みた。3疾患(JIA、TAK、自己炎症性疾患)計633件の相談事例を検討した結果、「身体機能」、「活動」、「参加」のそれぞれのドメインの項目との関連が認められた。症状による活力の制限、対人関係や学校や職場の理解についての事例や担当医を含む医療者との対人関係・相互理解についても事例が目立つ傾向が確認され、これらは疾患特異的尺度での捕捉は困難と考えられた。ICFによる生活機能モデルの視点から、新たに「見える化」できる患者UMNの可能性が示唆された。
結論
各研究、概ね企画通りの進捗であった。最終年度である次年度は前年度選定した包括的QOL尺度を用いての患者対象としたUMN把握調査と、その指標のICT化の検証、DB解析結果によるUMNの集約を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
2022-06-03

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202113002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
6,789,957円
差引額 [(1)-(2)]
210,043円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,322,803円
人件費・謝金 374,072円
旅費 5,140円
その他 3,472,942円
間接経費 1,615,000円
合計 6,789,957円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
2022-06-03