筋萎縮性側索硬化症の病態に基づく画期的治療法の開発

文献情報

文献番号
200834060A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の病態に基づく画期的治療法の開発
課題番号
H20-難治・一般-045
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学 大学院医学系研究科(神経内科学))
研究分担者(所属機関)
  • 糸山 泰人(東北大学 大学院医学系研究科(神経内科学))
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学 医学部(生理学・分子神経生物学、発生生物学、再生医学))
  • 郭  伸(東京大学 大学院医学系研究科(神経内科学))
  • 高橋 良輔(京都大学 大学院医学系研究科(臨床神経学))
  • 田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所(生化学))
  • 中野 今治(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門(神経内科学))
  • 船越 洋(大阪大学 大学院医学系研究科(再生医学、神経科学、生化学))
  • 漆谷 真(滋賀医科大学 分子神経科学研究センター(神経遺伝子解析部門臨床神経学))
  • 長谷川 成人(東京都精神医学総合研究所(生化学、分子生物学))
  • 山中 宏二(理化学研究所 脳科学総合研究センター(臨床神経学、分子生物学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ALSの病態に関連する新規標的分子の探索同定による病態解明、ALS新規治療法・治療手段の開発、孤発性ALS新規疾患モデルの開発であり、三者の研究を有機的に結合させることによって成果の生産性を向上させた。
研究方法
ALSを克服するため、基礎系、臨床系研究者を結集し集約的な研究の推進体制を構築した。研究内容をサブセクション毎に主任および分担研究者の各テーマに沿った独自の研究を発展させつつ情報交換を密に行い、研究組織としての有機的協力態勢を強化した。
結果と考察
今年度は、孤発性ALSの疾患感受性遺伝子の探索の分野では疾患に関わる有意なCNV(copy number variation)を見いだした。ALSの病態解明分野では、オートファジー経路、ミクログリアが関与する自然免疫経路、変異型SOD1による小胞体ストレス、SOD1の凝集体形成機構の観点から新たなALS病態が明らかとなった。また、ALS病態におけるTDP-43の役割解明を目指し、神経細胞核におけるTDP-43の発現レベルと臨床経過の関係を明らかにするとともに、TDP-43 proteinopathy細胞モデルを構築し、変異TDP-43による神経細胞死の機序を検討した。さらに、新規治療薬の開発分野では、HGFがミクログリアへ及ぼす影響を検討し、キサンチン脱水素酵素(XDH)阻害作用を有しかつプリンサルベージ回路の基質とならない化合物の有効性を証明するともに、変異SOD1の転写活性を抑制する低分子化合物を数多く同定した。ALS治療に向けたデリバリーシステムの開発では、TAT蛋白髄腔内投与による蛋白治療、カプシド修飾によるAAVベクターの改良、肝細胞増殖因子発現ポリオウイルスベクターの開発を推進した。再生療法・免疫療法の開発分野では、ALSラットモデル脊髄における微小血管内皮細胞新生を検討し、多能性幹細胞を用いた神経系の再生、新規免疫療法開発に取り組んだ。さらに、孤発性ALS疾患モデルの開発では、RNA編集酵素ADAR2コンディショナルノックアウトマウスの分子病態解析と、孤発性ALS線虫モデルの開発、解析を推進した。
結論
本研究によって新規治療法開発へ向けてのALSの病態解明がさらに進み、新たな分子標的が次々と明らかになった。また、低分子化合物による治療、さらには将来、重要な治療法になりうる遺伝子治療、再生治療についてもより優れたデリバリーシステムや効率的な再生システムを構築することができた。さらに孤発性ALSの疾患モデルの開発研究も順調に推進することができた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-15
更新日
-