消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群の小児から成人へのシームレスな診療体制構築のための研究

文献情報

文献番号
202111014A
報告書区分
総括
研究課題名
消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群の小児から成人へのシームレスな診療体制構築のための研究
課題番号
20FC1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 佳子(中山 佳子)(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 博次(自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門)
  • 六車 直樹(徳島大学 大学院医歯薬学研究部 消化器内科学)
  • 梅野 淳嗣(九州大学 大学院病態機能内科学)
  • 熊谷 秀規(自治医科大学 医学部)
  • 内田 恵一(三重大学医学部附属病院 小児外科)
  • 神保 圭佑(順天堂大学 小児科)
  • 角田 文彦(宮城県立こども病院 総合診療科・消化器科)
  • 武田 祐子(浜崎 祐子)(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 山本 敏樹(日本大学 医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,310,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者の六車直樹の所属が徳島大学・大学院医歯学研究部・准教授から高松市立みんなの病院・病院長に変更された。 研究分担者の内田恵一の所属が三重大学・医学部附属病院・准教授から三重県立総合医療センター 小児外科 診療部長に変更された。 令和3年度から自治医科大学・医学部・教授の中村好位置が分担研究者として参加した。

研究報告書(概要版)

研究目的
消化管に良性の過誤腫が多発するPeutz-Jeghers 症候群、若年性ポリポーシス症候群およびCowden症候群/PTEN 過誤腫症候群(以下、消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群)は、根治的な治療法がない希少疾患であり、小児慢性特定疾病に指定されている。再発性に多発する消化管良性腫瘍に対し、小児から成人期まで生涯に渡り、サーベイランスと治療を要する遺伝性の難治性疾患である。国内における小児から成人を網羅する前向き登録追跡研究あるいは全国疫学調査は行われておらず、患者数および重症例の病態の把握がされていない。また臨床医の本疾患群の認知が低く、良質かつ適切な医療を確保できる拠点医療施設を認定し、診療ガイドラインに基づく標準的な医療の普及、小児から成人の移行期医療を円滑に進めるための診療提供体制の構築が急務である。本研究班では、消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群の全国規模の患者数の把握と病態(重症例)の実態把握、移行期医療を考慮した拠点医療施設の整備、患者ニーズにあった社会的支援の充実を達成することを目的に以下の研究を行なった。
研究方法
国内外に向けてPeutz-Jeghers症候群、若年性ポリポーシス症候群、Cowden症候群の診療ガイドラインを医療従事者と患者・一般市民に普及させる。全国疫学調査マニュアルに従って、Peutz-Jeghers症候群と若年性ポリポーシス症候群の全国頻度調査を行う。また、PTEN過誤腫症候群(PHTS)の 臨床病理学的特徴等を調査する目的で前向きレジストリ登録の準備を行う。
 全国の拠点医療施設(小児・成人・遺伝カウンセリング)と医療体制について、研究班ホームページを通じて医療従事者と一般市民に周知する。消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群の診療経験が少ない医療従事者に向け、教育セミナーを行う。さらに患者QOL、社会的ニーズおよび支援検討のための基礎資料として、医療者の認識を明らかにするためのアンケート調査を行なう。移行期支援のための医療者と患者・家族向けのプロダクトを作成する。
結果と考察
1.診療ガイドラインの普及:3疾患の国内初となる小児から成人までのシームレスな診療ガイドラインを研究班ホームページに掲載し、一般市民に向けてわかりやすい解説を付した。全国疫学調査の一次調査票とともに、診療ガイドライン紹介のチラシを医療機関に送付した。診療ガイドライン英語版を作成し投稿準備中である。
2.全国疫学調査による患者実態把握:Peutz-Jeghers症候群と若年性ポリポーシス症候群の全国疫学調査は、小児科、小児外科、消化器内科を標榜する全国およそ6,000の医療機関を抽出し、令和4年3月に一次調査を終了した。現在、二次調査が進行中である。
3.前向きレジストリシステムの構築:PHTS の前向きレジストリシステムを構築した。
4.拠点医療施設(小児・成人・遺伝カウンセリング)と医療体制の整備:研究班ホームページに全国の拠点医療22施設を掲載し、それぞれの病院で対応が可能な診療内容を明示した。
5. 医療関係者を対象とした教育セミナー:日本遺伝性腫瘍学会教育セミナー等で医療関係者を対象に、本疾患群の診療について講演した
6.AYA 世代の患者を対象としたQOL、社会的ニーズに関するアンケート調査と成人移行医療の支援:消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群に関する現状に対する医療者の認識を明らかにするためのアンケート調査を行なった。医療者の認識から、現状と課題が検討され、社会の理解の広がりを基盤とした支援の拡充が必要であることが明らかになった。本研究の結果も参考に、移行期医療支援のため「小児Peutz-Jeghers症候群患者の自立支援のためのツール」、「小児消化管過誤腫性ポリープ多発疾患患者の自立支援のためのツール」を作成した。
7. 市民公開講座等による患者・一般市民への知見の公開と社会的支援:102回日本消化器内視鏡学会総会市民公開講座においてPeutz-Jeghers症候群の治療に関する講演を予定している。
8. 研究班ホームページを利用した一般市民と医療関係者への情報発信:研究班ホームページ(https://polyposis.jp/)に、診療ガイドラインの全文掲載、また一般市民向けの解説を遺伝学的検査、内視鏡診療、外科治療等についてわかりやすく解説した。拠点医療施設のリストを公開した。
結論
消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群の医療体制に前進は見られるものの、未だ十分とは言えず、引き続き難治性疾患政策研究としての研究の推進を必要とする。患者の予後とQOL の向上ならびに医療費の削減、AYA 世代への医療的・社会的支援、重症患者に対する適切な厚生労働行政の施策実施に引き続き取り組む必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-05-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-07-26
更新日
2022-11-25

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202111014B
報告書区分
総合
研究課題名
消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群の小児から成人へのシームレスな診療体制構築のための研究
課題番号
20FC1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 佳子(中山 佳子)(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 博次(自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門)
  • 六車 直樹(徳島大学 大学院医歯薬学研究部 消化器内科学)
  • 梅野 淳嗣(九州大学 大学院病態機能内科学)
  • 熊谷 秀規(自治医科大学 医学部)
  • 内田 恵一(三重大学医学部附属病院 小児外科)
  • 神保 圭佑(順天堂大学 小児科)
  • 角田 文彦(宮城県立こども病院 総合診療科・消化器科)
  • 武田 祐子(浜崎 祐子)(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 山本 敏樹(日本大学 医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化管に良性の過誤腫が多発するPeutz-Jeghers 症候群、若年性ポリポーシス症候群およびCowden症候群/PTEN 過誤腫症候群(以下、消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群)は、根治的な治療法がない希少疾患であり、小児慢性特定疾病に指定されている。再発性に多発する消化管良性腫瘍に対し、小児から成人期まで生涯に渡り、サーベイランスと治療を要する遺伝性の難治性疾患である。国内における小児から成人を網羅する前向き登録追跡研究あるいは全国疫学調査は行われておらず、患者数および重症例の病態の把握がされていない。また臨床医の本疾患群の認知が低く、良質かつ適切な医療を確保できる拠点医療施設を認定し、診療ガイドラインに基づく標準的な医療の普及、小児から成人の移行期医療を円滑に進めるための診療提供体制の構築が急務である。本研究班では、消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群の全国規模の患者数の把握と病態(重症例)の実態把握、移行期医療を考慮した拠点医療施設の整備、患者ニーズにあった社会的支援の充実を達成することを目的に以下の研究を行なった。
研究方法
診療ガイドラインの作成・公開・普及、小児慢性特定疾病の概要と診断の手引きの見直し、わが国における小児から成人の患者数と病態を明らかにするための全国疫学調査および前向きレジストリ構築、拠点医療施設の整備と施設の情報公開、医療水準の向上を目的とした医療従事者への教育、AYA 世代の患者を対象としたQOLの改善と社会的ニーズに関するアンケート調査および成人移行医療支援ツールの作成、患者・一般市民への情報公開を行う。
結果と考察
1.診療ガイドラインの作成・公開・普及:令和2年9月に3疾患の診療ガイドラインを「遺伝性腫瘍」に公開、日本遺伝性腫瘍学会、Minds等に掲載された。令和3年度は研究班ホームページ一般市民に向けてわかりやすい解説を付して公開、英語版を作成し投稿準備中である。
2.小児慢性特定疾病の概要と診断の手引きの見直し:令和2年度に日本小児科学会に改版を提案した。
3.全国疫学調査による患者実態把握:Peutz-Jeghers症候群と若年性ポリポーシス症候群の全国疫学調査を行った。一次調査が終了し、現在二次調査が進行中である。
4.前向きレジストリシステムの構築:Cowden症候群の臨床病理学的特徴等を明らかにする目的でレジストリを構築し、登録を今後進める予定である。
5.拠点医療施設の整備と医療水準の向上に向けた取り組み:全国を網羅する拠点医療施設について、研究班のホームページを通じて情報公開した。医療水準の向上を目的に、日本遺伝性腫瘍学会教育セミナー等で医療関係者を対象に本疾患群の診療について講演した。
6.AYA 世代の患者を対象としたQOL、社会的ニーズに関するアンケート調査と成人移行医療の支援:消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群に関する現状に対する医療者の認識を明らかにするためのアンケート調査を行なった。医療者の認識から、現状と課題が検討され、社会の理解の広がりを基盤とした支援の拡充が必要であることが明らかになった。本研究の結果も参考に、移行期医療支援のため「小児Peutz-Jeghers症候群患者の自立支援のためのツール」、「小児消化管過誤腫性ポリープ多発疾患患者の自立支援のためのツール」を作成した。
7. 市民公開講座等による患者・一般市民への知見の公開と社会的支援:患者会の設立がCOVID19感染のため困難な状況にあることから、研究班ホームページ(https://polyposis.jp/)を利用して、医療者と一般市民に情報を発信した。第102回日本消化器内視鏡学会総会市民公開講座において、Peutz-Jeghers症候群の治療に関する講演を予定している。
結論
消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群の国内初となる診療ガイドラインを公開し、医療機関と一般市民への普及に取り組んだ点は大きな成果であった。医療体制についても前進は見られるものの、未だ十分とは言えず、引き続き難治性疾患政策研究としての研究の推進を必要とする。患者の予後とQOL の向上ならびに医療費の削減、AYA 世代への医療的・社会的支援、重症患者に対する適切な厚生労働行政の施策実施に引き続き取り組む必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-05-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202111014C

収支報告書

文献番号
202111014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2円
人件費・謝金 82,416円
旅費 0円
その他 2,227,582円
間接経費 690,000円
合計 3,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-06-06
更新日
2022-09-28