成人期における口腔の健康と全身の健康の関係性の解明のための研究

文献情報

文献番号
202109050A
報告書区分
総括
研究課題名
成人期における口腔の健康と全身の健康の関係性の解明のための研究
課題番号
21FA1013
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小坂 健(東北大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 相田 潤(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野)
  • 辻 一郎(東北大学  大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
  • 倉橋 典絵(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
  • 葭原 明弘(新潟大学 大学院医歯学総合研究科口腔保健学分野)
  • 岩崎 正則(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 財津 崇(東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野)
  • 大城 暁子(東京医科歯科大学病院 息さわやか外来)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
口腔の健康に関連する疾患には、どのようなものが存在し、どの程度の関連があるのかを明確にし、施策に貢献する知見を得る。そのため、国内の大規模な住民コホートデータを用いることで、成人の口腔の健康と全身の健康の関連の因果推論を行うこと。
研究方法
本研究では既存のコホート研究やレセプトのデータから、成人の口腔の健康と全身の健康の関連を検討した。そのため研究の最初には、各データから本研究の分析用のデータベースの構築を行った。
 具体的に活用するデータは、歯科検診も実施しており国立がん研究センターの多目的コホート研究「JPHC Study」および次世代多目的コホート研究「JPHC-Next Study」、生活習慣や全身の健康で多くの論文を生み出している「大崎2006コホート研究」、近年活用が注目されるレセプトデータからは「JMDC歯科レセプトデータ」、歯科検診結果や生活習慣だけでなく遺伝要因も考慮できる国内最大級の遺伝疫学データベースである「東北メディカルメガバンクコホート」、歯科患者の詳細な歯科健診結果と関連要因の考慮できる8020推進財団の「歯科医療による健康増進効果に関する調査研究」である。ここから口腔の健康と全身の健康の関連の因果推論を実施するためのデータベースを令和4年度中に構築をし、各研究者が分析を開始できる体制を整備する。
結果と考察
健康寿命
大崎コホートを解析した。その結果、現在歯数が少ないほど健康寿命は短かったが、現在歯数が少ない群において、義歯を使用する者は使用しない者と比較し、健康寿命が長いことが観察された。

認知症
日本老年学的評価研究(JAGES)を調査対象とした解析の結果、歯の喪失と認知症発症との間に有意な関連が見られ男性では特に友人・知人との交流人数、女性では特に野菜や果物摂取が、歯の本数と認知症発症の因果関係を仲立ちする役割を果たしていた。
また、JPHC-NEXT研究の倫理申請を行うとともに、過去の認知症と口腔の関係についての論文レビューを実施し、考慮すべき因子などについての知見を得た。

肥満・低体重
過去の論文検索を実施し、5編の論文について精査した。歯の喪失の数が多い人はより肥満であること、低社会経済グループの肥満女性は、他のどのグループよりも有意に高い歯の喪失があることが示された。また遺伝子欠損との関連を示した研究もある。日本保健所管内次世代前向き調査(JPHC-NEXT)において、2012~2016年に計2,454名を対象に歯科調査も実施しており、このコホートを対象に研究を開始した。

不整脈
魚沼コホート研究の参加者を対象とした解析により、心房細動の危険因子によって調整した後も抗P. g抗体価と心房細動の既往との間に有意な関連性が認められ、そのオッズ比〔95%信頼区間; p値〕は2.13〔1.23–3.69; p < 0.01〕であった。

仕事の欠勤
インターネット調査の解析により、口腔の問題により仕事に支障があると答えた者は全体の6.2%だった。「ストレスを感じて仕事に影響した」と回答した割合は、歯や歯茎が健康である者と比較して健康ではない者で4倍高く(OR:4.00; 95%CI:1.80-1.88)、また歯の本数が19本以下の者は20本以上の者と比較して約2倍高かった(OR:2.19; 95%CI:1.57-3.05)。また、歯磨きをするときに出血がある者は出血のない者と比較して「仕事に集中できなかった」と回答した割合が3.6倍高かった(OR:3.59, 95%CI:2.18-5.92)
結論
口腔と全身疾患のなかで、健康寿命、認知症、肥満・低体重、不整脈、仕事の欠勤との関係が示された。

公開日・更新日

公開日
2022-12-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-12-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,500,000円
(2)補助金確定額
8,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,200,843円
人件費・謝金 4,799,812円
旅費 40,620円
その他 559,900円
間接経費 1,961,000円
合計 8,562,175円

備考

備考
端数については自己資金:62,175円を使用した。

公開日・更新日

公開日
2022-12-01
更新日
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