Value-based medicineの推進に向けた循環器病の疾患管理システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
202109047A
報告書区分
総括
研究課題名
Value-based medicineの推進に向けた循環器病の疾患管理システムの構築に関する研究
課題番号
21FA1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 邦宏(独立行政法人国立循環器病研究センター・研究開発基盤センター 予防医学・疫学情報部 EBM・リスク情報室)
  • 竹上 未紗(国立循環器病研究センター 研究基盤開発センター 予防医学・疫学情報部)
  • 尾形 宗士郎(藤田医科大学保健衛生学部)
  • 野口 輝夫(国立循環器病センター)
  • 泉 知里(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 猪原 匡史(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院 脳神経内科)
  • 横田 千晶(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 宮井 一郎(社会医療法人大道会森之宮病院)
  • 鴨打 正浩(九州大学大学院医学研究院 医療経営・管理学講座)
  • 下川 能史(九州大学 脳神経外科)
  • 安斉 俊久(北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学教室)
  • 永井 利幸(北海道大学 大学院医学研究院)
  • 林 知里(兵庫県立大学 地域ケア開発研究所)
  • 弓野 大(医療法人社団ゆみの)
  • 篠原 正和(神戸大学大学院 医学研究科)
  • 杜 隆嗣(神戸大学 医学研究科 立証検査医学分野)
  • 山本 展誉(宮崎県立延岡病院 循環器内科)
  • 吉田 俊子(聖路加国際大学  大学院看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
循環器病対策推進基本計画における取り組むべき施策「かかりつけ医等と専門的医療を行う医療従事者との適切な連携の推進や、慢性期における循環器病の再発や重症化予防のための連携したサービスを提供可能な社会の実現」に資する研究として、従来の患者の流れ(急性期〜回復期〜維持期)を共通の基盤で一元的に管理できるデータベースの構築を目的とする。
脳卒中および心不全患者の情報連携、リスク評価や多職種による多面的疾病管理の実態に関する施設調査を行い、一元的管理に向けた課題を明らかとする。
研究方法
多面的包括管理に関する施設調査
一次脳卒中センター認証施設、日本循環器病学会の教育研修施設、回復期リハビリテーション病棟協会に加盟施設を対象に連携パスの使用状況やリスク評価項目等、多面的包括管理に関する質問票調査を行なった。
結果と考察
(結果)
一次脳卒中センター認証施設(414/975施設)、日本循環器病学会の教育研修施設(431/1,018施設),回復期リハビリテーション病棟協会に加盟施設(104/1,215施設)から回答を得た。
1).急性期施設において
1. 地域連携パスの使用は脳卒中治療しセルでは65.9%の使用率であったのに対して、心不全治療施設は14.4%と少なかった。
2. かかりつけ医との連携の担い手は、脳卒中治療施設では多職種(47.3%)が最多であったに対して、心不全治療施設では医師のみが最多(56.1%)であった。入院中の指導においても多職種チームによる情報提供は脳卒中施設で心不全治療施設より高頻度で実施されていた。
3. 心不全治療施設では心不全ノートによる連携が多く実施(67.8%)されていたのに対して、脳卒中施設では診療情報提供書(56.8%)が多く活用されノートによる連携は少ない。
4. 疾患教育や疾患リスクへの指導、セルフマネージメント重要性、ポリファーマシ解消への意識などは疾患間に差はなかったが、緩和ケアに対する指導は心不全治療施設で多く実施される傾向が見られた。
5. 脳卒中および心不全治療において退院後の重症化や再発のリスク評価として重視された項目のうち、両者で共通して高頻度であった項目は、血圧、採血結果、喫煙などの生活習慣、患者の家族背景、脳卒中の入院歴、栄養状態であった。一方で抑うつやアパシー、サルコペニアなどの項目は共通して頻度が低かった。人機能評価や嚥下障害を評価する頻度は脳卒中治療例で高くリスクとして評価されていた。
6. 退院後の予後評価に、リスクスコアを使用している施設は極めて少ない。
7. 重症化や再発ハイリスク群への取り組みとして多く実施されていた項目は退院前教育や服薬指導・ポリファーマシー対策、栄養指導などが共通して頻度が高かった。一方で専門医による外来受診や自己管理ツールによる患者管理は心不全症例で多く実施されていた。
8. 退院後のアウトカム評価に関して、心不全症例は退院後の死亡や再入院率を評価することが多く、一方で脳卒中症例ではADLや認知機能評価で評価している頻度が高かった。

2)回復期リハビリテーション病院
回復期リハ病棟退院後の維持期施設との情報共有は医師間88.5%、看護師間70.2%、療法士間69.2%でなされていた。
患者・家族への脳卒中の疾患教育は83.7%で行われていた。退院後の重症化・再発・再入院やQOL低下のリスクの評価として、嚥下障害、栄養状態、転倒、認知機能、血圧に対して80%以上で評価されていたが、血栓塞栓・出血リスク、頭蓋内・頸部血管の画像評価の頻度は低く、急性期施設との差異が見られた。
脳卒中再発や合併症による再入院や死亡などの疾病に関する予後のモニタリング実施は2割前後であった。
(考察)
脳卒中症例では回復期施設への転院が必要となり、地域連携パスの使用率が心不全と比較して高くなっており、多職種による連携を要した。一方で心不全においては心不全ノートによる活用が疾患管理の中心を担っていた。両疾患ともにかかりつけ医との連携は診療情報提供書が多く活用されていた。
循環器病における重症化や再発のリスクスコア(脳卒中:SPI-ⅡやESRS、心不全:MAGGICやSEATTLE)は認知度の低さや煩雑さのためほとんど使用されておらず、電子的手法などにより簡便に計算される仕組みができれば、疾患管理に有用である可能性がある。
回復期リハビリ施設においては、疾患管理よりも生活機能や栄養管理にリスク管理の主座が置かれ、ADLに関係したアウトカム評価が関心項目となっていることが判明した。
患者の死亡や再入院、ADLの変化を含めた長期的アウトカムを評価は重要視されているものの、情報の共有する体制の構築については、今後の検討課題である。
結論
長期的なQOL評価と多面的疾患管理を行う統一システムの構築を目指す必要がある。

公開日・更新日

公開日
2022-10-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
7,894,000円
差引額 [(1)-(2)]
106,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,711,953円
人件費・謝金 0円
旅費 160,148円
その他 3,176,127円
間接経費 1,846,000円
合計 7,894,228円

備考

備考
自己資金228円

公開日・更新日

公開日
2022-12-07
更新日
-