筋疾患に対するマイオスタチン阻害療法の臨床応用基盤の確立

文献情報

文献番号
200833068A
報告書区分
総括
研究課題名
筋疾患に対するマイオスタチン阻害療法の臨床応用基盤の確立
課題番号
H20-こころ・一般-018
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
砂田 芳秀(川崎医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 土田 邦博(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 野地 澄晴(徳島大学 工学部)
  • 濃野 勉(川崎医科大学 医学部)
  • 武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
27,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋ジストロフィーは進行性の筋萎縮と筋力低下をきたす予後不良の遺伝性疾患である。ウイルスベクターを用いた遺伝子治療や骨格筋幹細胞による再生治療などが試みられているが、いまだに有効な治療法は確立されていない。本研究は骨格筋量を負に制御するマイオスタチンを創薬標的分子ととらえ、マイオスタチン阻害による筋ジストロフィー治療薬の開発と臨床応用に向けた基盤を確立することを目的とする。
研究方法
マイオスタチン阻害分子として、①N-末端に細胞膜透過配列を付加した29アミノ酸から構成されるプロドメイン由来阻害ペプチド(Rp-29)、②低分子TβRI kinase阻害剤、③天然型ホリスタチン誘導体FS-Nを開発し、野生型マウスあるいは筋ジストロフィーモデルマウス(カベオリン-3欠損筋ジストロフィーマウスあるいはmdxマウス)に投与して、安全性と治療効果を評価した。新たな治療標的分子としてマイオスタチンの作用修飾分子であるfurinとWnt4に注目し、遺伝子改変マウスの作出を開始した。αMSHの受容体であるメラノコルチン1受容体 (Mc1r)に着目して、マウスの上皮にアテロコラーゲン-siRNA法で導入しマウスの体毛の変化により、導入効率が測定できる系を開発する。
結果と考察
マイオスタチン阻害ペプチドを野生型マウスに腹腔内投与して、約15%の体重増加を達成した。
野生型およびカベオリン-3欠損マウスともTβRI kinase阻害剤の経口投与により、筋量と筋張力の増加を認めた。ホリスタチン誘導体(FS-N)をヒト免疫グロブリン分子との融合分子として精製する方法を開発し、エンドトキシンの混入の少ない標品を得ることが可能となった。精製標品を免疫不全マウスへ腹腔内投与し、筋量の増加が予備的に確認された。これらの治療分子は臨床応用可能な有力な治療薬の候補と考えられる。Mc1rのsiRNAを導入した結果、体毛の皮薄化がみられ、siRNA導入効率のアッセイに使えることが示された。
結論
プロドメイン由来阻害ペプチド、低分子TβRI kinase阻害剤、天然型ホリスタチン誘導体FS-Nという3種類の筋ジストロフィー治療分子を開発することができた。核酸医薬としてsiRNAの経静脈投与での導入効率を上げる新たな担体の開発基盤を整備することができた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-