スプライシングを利用した筋強直性ジストロフィーの治療

文献情報

文献番号
200833067A
報告書区分
総括
研究課題名
スプライシングを利用した筋強直性ジストロフィーの治療
課題番号
H20-こころ・一般-017
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
石浦 章一(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋強直性ジストロフィー(DM)は遺伝子が伸長することによる全身性疾患で、遺伝的にDM1とDM2の2種類がある。症状は、長く伸びたRNAのCUG3塩基リピートまたはCCUG4塩基リピートにMBNL1やCUG-binding protein (CUG-BP)などのRNA結合タンパク質がトラップされ、正常の機能であるスプライシングが異常になることで生じる。そのため、スプライシングを正常化することにより治療が可能になるのではないかと考えた。
 そのための方策は2つある。1つはRNAリピートに結合するスプライシング調節タンパク質の発現を加減することによって、正常化スプライシングを導くという戦略である。もう1つは、薬物添加やアンチセンスの手法を用いてスプライシング自体を変化させるものである。本研究では、後者の方法を検討した。また、分担研究者の西野の協力の下、DM患者筋を用いた新しいスプライシング異常の検出を行った。
研究方法
塩素チャネルミニ遺伝子(エキソン6、7A、7)を用いたスプライシング・アッセイ系を用いてアンチセンスの効果を見た。私たちは以前の研究より、イントロン6-エキソン7Aの境界部位とエキソン7A内部にスプライシング因子であるMBNL1結合配列を同定した。そこで、この配列に対するアンチセンスを用いてスプライシング調節機能があるかどうかを検討した。次に、DM3検体と非DM3検体の筋よりmRNAを抽出し、エキソンアレイを用いてスプライシング異常がないかどうかを検討した。
結果と考察
まず、私たちが同定した配列に対するアンチセンスSオリゴを試したが、スプライシング調節機能は認められなかった。そこで、2’-O-methyl-phosphothioateに変えたところ、エキソン7Aのスキッピングが促進され、非活性型の割合が減り、活性型塩素チャネル遺伝子が多くなることが確認できた。次に、エキソンアレイを用いて、DM筋でスプライシングが異常になっている遺伝子を探索した結果、myomesinのエキソン18のスプライシング異常が観察された。
今回、エキソンアレイを用いた解析によりfibronectin、titinなど十数個の候補が挙がったが、その中でmyomesinはM線の構成タンパク質であり、筋収縮に関係あると考えられる。今後は、筋力との関係を明らかにしたい。

結論
エキソンスキッピングは、DMの効果的治療になるのではないかと結論づけられた。また、筋力低下に関係するのではないかと考えられる遺伝子も発見された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-