喫煙室の形態変更に伴う受動喫煙環境の評価及び課題解決に資する研究

文献情報

文献番号
202109033A
報告書区分
総括
研究課題名
喫煙室の形態変更に伴う受動喫煙環境の評価及び課題解決に資する研究
課題番号
20FA1020
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学 産業生態科学研究所・健康開発科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 姜 英(キョウ エイ)(産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
  • 河井 一明(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 大森 久光(国立大学法人熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 樋上 光雄(産業医科大学 産業保健学部 作業環境計測制御学)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 研究支援センター医療統計室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2020年4月より全面施行された改正健康増進法により、多くの飲食店が禁煙化された。また、非喫煙者の割合は増加傾向にあり、今後も喫煙可能店を禁煙店に変更する店舗が発生することが考えられる。本研究は、「喫煙可能店から禁煙店への変更を行おうとする事業者にとって参考となる技術的留意事項」を検討することを目的とする。
研究方法
1)喫煙可能店を禁煙店に変更した施設の分析
2)喫煙専用室の内外の空気環境の衛生工学的調査
3)喫煙専用室の壁等から発生する三次喫煙の測定法の確立
4)喫煙専用室を禁煙化する前後の化学物質濃度の測定
5)喫煙と受動喫煙によるバイオマーカーの評価
結果と考察
1)開業時に喫煙可能で現在は禁煙店に変更した502の飲食店の59.0%は改正法の前に、35.5%は改正法の施行のタイミングで、残りの5.4%は施行後に変更したことが分かった。禁煙店に変更したことで、喫煙する客が来店しなくなるデメリットはあるものの、喫煙する客とのトラブルが減り、家族連れが増え、清掃費用が減るなどのメリットの方が大きいことが分かった。
2)喫煙者の呼気に含まれる粒子径が0.3μmの微小粒子を個数濃度で鋭敏に評価したところ、喫煙終了後、約4分間にわたって呼気に呼出されることが認められた。喫煙専用室から禁煙区域に移動する、あるいは、屋外で喫煙した後に禁煙の店舗に入る際には、一定時間を空ける必要があることが認められた。
3)タバコ臭を付着させたペーパータオルから発生するガス状物質の濃度を繰り返し計測したところ、鋭敏に測定が可能な対象ガスの特定、および、測定器(においモニタ、検知管)を特定することができた。今後、実際の店舗での三次喫煙の計測を行う予定である。
4)喫煙可能室を禁煙室に転換するためには壁紙、カーペット、エアコンのフィルターの交換が必要であり、今年度はその改装費用を明らかにすることができた。
5)健診・人間ドック受診者の余剰尿285サンプル(受動喫煙なし245人、受動喫煙あり40人)の分析結果から、「受動喫煙がある」と回答したグループの尿中のタバコ煙の曝露マーカー(ニコチン、コチニン、3-ヒドロキシコチニン)は、「受動喫煙が無い」と答えたグループに比べて有意に高い値を示した。また、「受動喫煙がない」グループにおいて、同居者に喫煙者がいる場合は、8-OHdGを除く他の全ての指標で有意に高い値を示した。呼吸機能検査では、非喫煙女性30歳以上40歳未満の群83名において、同居者に喫煙者がいる群(21名)は、同居者に喫煙者がいない群(62名)と比べて、呼吸機能の指標が(%FVC、%FEV1、%PEFR、%V75)が有意に低値であった。
結論
 喫煙可能店を禁煙店に変更するためには、壁紙やカーペットなどの内装を交換することが必要であり、その証明には内装から発生するガス状物質(三次喫煙)の測定が有用であった。
 喫煙専用室を残す、あるいは、屋外に喫煙場所を設置した場合の対策の有効性の判定には、禁煙区域での微小な粒子の個数濃度の測定が有用であることが認められた。
 喫煙可能な飲食店を禁煙店に変更することによる不利益は小さく、利益の方が大きいことが分かった。
 健診・人間ドック受診者の尿と呼吸機能の分析から受動喫煙に曝露されるているグループでは生体への悪影響が発生する可能性が示唆された。
 以上より、現在、喫煙可能店として運営している飲食店を禁煙店に変更するための根拠、技術的留意事項が得られたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-11-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-11-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,200,000円
(2)補助金確定額
14,033,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,167,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,399,629円
人件費・謝金 3,185,882円
旅費 49,666円
その他 2,698,609円
間接経費 3,700,000円
合計 14,033,786円

備考

備考
自己資金786円

公開日・更新日

公開日
2022-11-14
更新日
-