脳卒中の急性期診療提供体制の変革に係る実態把握及び有効性等の検証のための研究

文献情報

文献番号
202109027A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中の急性期診療提供体制の変革に係る実態把握及び有効性等の検証のための研究
課題番号
20FA1012
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩間 亨(岐阜大学 脳神経外科)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部 脳神経外科)
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター臨床研究センター)
  • 木村 和美(日本医科大学 神経内科学)
  • 黒田 敏(富山大学 大学院医学薬学研究部(医学))
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学医学部脳神経外科)
  • 高木 康志(徳島大学医学研究科)
  • 冨永 悌二(東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経外科学分野)
  • 豊田 一則(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 橋本 洋一郎(熊本市立熊本市民病院 神経内科)
  • 松丸 祐司(筑波大学 脳神経外科)
  • 宮本 享(国立大学法人京都大学 医学研究科 脳神経外科)
  • 吉村 紳一(兵庫医科大学 医学部 脳神経外科)
  • 宇野 昌明(川崎医科大学 医学部 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本脳卒中学会(JSS)がtPA静注療法(IV r-tPA)を常時提供する一次脳卒中センター(PSC)の認定を令和2年に開始することにより、脳卒中急性期の診療実態がどう変化したかを明らかにすることが主目的である。研究班発足の直前に突然拡散が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が脳卒中急性期の診療体制と診療実績に与えた影響を本研究班で調査する。
研究方法
(1) 急性期の施設間連携医療の調査:研究代表者施設の研究倫理審査委員会の承認を得て、令和元年および2年に実施した機械的血栓回収療法(MT)を対象とし必要な情報の収集を開始した。(倫理面への配慮)実施された医療の結果を後方視的に収集する臨床研究で患者個人の情報は求めていない。参加医療機関は研究倫理審査の実施許可を得て参加し、情報公開文書にて患者が不参加の意思を表明する機会を保証した。
(2) IV rt-PAの施行実績は重要な指標であり、先行班では98%を超える悉皆率で実施状況を明らかにした。974の認定PSCはJSS年次報告を活用し、それ以外の施設で診療実績のある300施設には直接回答を依頼した。
(3) MTの対象となる脳卒中救急搬送の指標を確立するため、救急搬送症例の調査研究を行い分析結果に基づいてLCO scaleの試案を作成した。
(4) PSC974施設にCOVID-19が脳卒中急性期の診療体制と診療実績に与えた影響を調査した。
(5) MTの医療経済的側面を得られた資料を基に評価した。
結果と考察
結果
(1)COVID-19の影響でやや遅れ気味であるが登録を進めている。(2)PSCは1つを除く全国334の2次医療圏を常時カバーしているが、地域差はまだ存在している(資料3)2020年のIV rt-PAは16,331件で、PSC以外の実施件数は67件に留まっている。(資料4)全国334の2次医療圏における変化を確認する。(3) 6施設から1,147件の登録を得て、7項目(脈不整、共同偏視、半側空間無視、失語、構音障害、顔面麻痺、上肢麻痺)の観察結果とMTの対象となる大血管閉塞の有無の関係を評価した(資料5)。ROC曲線のAUCは0.84と比較的良好で、これまで使われてきたいくつかの指標を得られたデータで再評価し脳卒中救急搬送の指標試案を作成する。
(4) COVID-19が脳卒中急性期の診療体制に与えた影響を調査した。2019年の同月と比較して2020年4-5月に一般外来が通常通り維持できたのは26.0-28.4%、予定手術は42.8-44.5%しかなく、脳卒中救急も52.8-53.8%、救急手術64.9-65.2%、救急血管内治療66.6-68.7%制限されていた。6月以降徐々に回復してきたが、12月になっても一般外来は52.9%、予定手術は37.1%、脳卒中救急は35.6%制限されており、1年経っても脳卒中医療提供は大きな制限を受けていることが明らかとなった(資料6)。全体の推移はCOVID-19の波と逆相関しており、感染拡大期に脳卒中診療は4.3%減少し、安定期に5.0%増加していた。感染者が多い都道府県(北海道、東京、神奈川、大阪、沖縄)では1.6-5.4%減少し、それ以外の府県の平均は0.05%の減少と大きく異なっていた(資料7)。(5) MTのみを評価すると1つの専用室または共用室では年間120件、待期的治療との総数が50件に満たない場合は損益分岐が得られない。
考察
(1) 転帰に影響するO2D、D2N、D2Pを、COVID-19拡散前のデータ(先行班)と比較して知見を得ることが期待される。
(2) 先行班では、99%以上の悉皆率でIV rt-PAの実施件数を確認した。本研究班ではPSC認定後の推移を確認する。
(3) MTの対象となるLVO Scaleの標準化は、医療の適正な実施が全国で展開され、本研究班からJSSに提言する。
(4) 引き続き調査を継続し新興感染症と脳卒中医療提供体制に関する提言に繋がる知見を得ることを目標とする。
(5) 調査施設をさらに増やすこと、診断検査やMT以外のカテーテルインターベンションの分析を追加し、さらに調査を続ける必要がある。
結論
1. PSCは全国の2次医療圏をほぼカバーするように配置された。PSCの医療提供体制、IV rt-PAとMTの年次推移を評価する体制が整った。
2. PSC以外の医療機関でも少ないながら急性期脳卒中医療を提供している。引き続き調査を継続する必要がある。
3. MTの搬送と医療向上に資するLVO Scaleの標準化の取り組みが順調に進んでいる。
4. 脳卒中医療提供体制に大きな影響を与えたCOVID-19に関する重要な知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2023-03-13
更新日
2024-05-02

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-03-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,980,000円
(2)補助金確定額
5,980,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,249,526円
人件費・謝金 1,798,434円
旅費 425,830円
その他 126,210円
間接経費 1,380,000円
合計 5,980,000円

備考

備考
自己負担:3,516円

公開日・更新日

公開日
2023-03-13
更新日
-