地域特性に応じた地域・職域連携推進事業の効果的な展開のための研究

文献情報

文献番号
202109026A
報告書区分
総括
研究課題名
地域特性に応じた地域・職域連携推進事業の効果的な展開のための研究
課題番号
20FA1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藍 真澄(東京医科歯科大学 医学部附属病院 保険医療管理部)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
  • 渡井 いずみ(浜松医科大学 医学部看護学科)
  • 都筑 千景(大阪府立大学 看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 就労者に対する健康支援(健康づくり、生活習慣病予防等)は健康政策上重要な課題である。厚生労働省が令和元年に発表した「地域・職域連携推進ガイドライン(以下GL)」では地域保健と職域保健が連携して幅広い取組を促進すること、協議会の効果的運営、実行を重視した柔軟なPDCA サイクルに基づいた事業展開を求めている。
 本研究では、同事業を主体的かつ継続的な取組に発展させるために、実態調査に基づく進捗チェックリストの作成、ワークショップ開催、手引き作成を行うことを目的としている。
研究方法
1)協議会運営に必要なプロセスと評価指標について、昨年度の二次医療圏版に続き、都道府県版進捗チェックリストを作成した。
2)地域・職域連携推進事業の実態調査:全国の都道府県、二次医療圏の地域・職域連携推進担当者への書面調査、ワークショップ(情報提供+グループワーク)、ヒアリング等を通して、本事業の課題、地域・職域連携の進捗状況についての自治体の自己評価レベル、担当者の困りごと、職域へのアプローチ方法、具体的な連携先と課題、工夫について情報収集・整理した。
3)中小規模の企業に対して先駆的に健康づくり支援をしている自治体担当者を対象にフォーカスグループインタビューを実施した。
4)地域・職域の健康課題の見える化と対策につながる情報提供の在り方検討:二次医療圏協議会での活用に耐えうるよう、特定健診問診項目およびNDBレセプトデータを活用して生活習慣や糖尿病の治療実態について二次医療圏単位で集計を行い、グラフ化した。
5)手引き「地域・職域連携推進事業の進め方~地域特性に応じた効果的な展開のために」を作成した。
結果と考察
【結果】
1)進捗チェックリストについて、自治体担当者アンケート、グループワークの評価では、「事業の振り返りに役立つ」「関係者への説明に役立つ」と評価された。
2)協議会運営について、コロナ禍のため予定や方法を変更して実施、コロナ禍での健康づくりを取り上げた事例もあった。GLを参考にした事例等、好事例が多く報告された一方、職域に関する知識の不足があり、職域への具体的なアプローチ方法や実施体制などの情報が必要であることが分かった。
3)中小企業を支援している先駆的な自治体事例から、自治体の実施体制や工夫点について聴取、推進のポイントをまとめた。
4)特定健診質問票、HbA1c等の検査値の標準化該当比を算出、全国、都道府県内比較が可能なようにグラフ化を行った。結果はHP上で公開した。この結果を連携会議で活用したいという意見があった。
5)研究成果をもとに、「地域・職域連携事業の進め方」について、手引きを作成した。担当者が抱える課題に着目し、その解決策について法律や産業保健等の知識、具体的なプロセス、困難な事項に対する対応、事例検討などを盛り込んだ。都道府県、二次医療圏、市区町村別に本事業の進め方を整理して示した。
【考察】
 健康増進法のもとの地域・職域連携推進事業は、実施方法やテーマなどについて自治体で選択可能であり、どこまで実施するのかも自治体の裁量に任されている。地域・職域連携進捗の自己評価レベルは、自治体のこれまでの健康増進事業の方針、部局間での連携、地域住民・関係機関との顔の見える関係づくりの状況、担当者のスキルやモチベーション、組織全体からの理解により大きく影響を受けていた。好事例では、都道府県協議会と二次医療圏協議会の連携体制、構成員の工夫、地域の産業構造やニーズに合わせた連携事業について、PDCAを意識して計画的に実施していた。
 近年の中小企業の健康経営への関心の高まり、データの可視化から始まった保険者間協力の深化など、本事業の推進ポイントも明らかになりつつある。また、労働者の高齢化に伴う労働災害の増加やコロナ禍における在宅勤務へのシフトに伴う健康課題の変化、ICT活用などの新たな方向性も出てきており、進捗チェックリストのブラッシュアップも定期的に進めていく必要がある。
結論
 自治体に対するアンケート調査、ワークショップ、ヒアリング等を通じて、課題を整理し、地域・職域連携事業の評価指標、進捗チェックリスト、手引きをまとめることができた。この結果は、厚生労働省地域・職域連携推進会議で報告、全国の自治体に情報提供することができた。

公開日・更新日

公開日
2023-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202109026B
報告書区分
総合
研究課題名
地域特性に応じた地域・職域連携推進事業の効果的な展開のための研究
課題番号
20FA1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藍 真澄(東京医科歯科大学 医学部附属病院 保険医療管理部)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
  • 渡井 いずみ(浜松医科大学 医学部看護学科)
  • 都筑 千景(大阪府立大学 看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 生活習慣病等を予防するため、厚生労働省は平成16年度「地域・職域連携推進ガイドライン」(以下GL)を策定、その後の高齢化の進展や健康経営等の社会情勢の変化、医療保険者の保健事業の変化等を踏まえ、令和元年9月GLが改訂された。新GLでは、地域保健と職域保健が連携した幅広い取組の促進、支援が不十分な層(退職者、被扶養者、小規模事業場等)への対応、協議会の効果的運営、「実行」を重視した柔軟なPDCA サイクルに基づいた事業展開等が掲げられている。また、都道府県及び二次医療圏に設置されている「地域・職域連携推進協議会」がPDCAサイクルを連携して回しながら保健事業に取り組む必要性を掲げている。
 本研究では地域・職域連携推進に関する自治体の取り組みについて実態調査をおこない、評価指標や課題の整理、具体的な対策を提案することを目的としている。
研究方法
1)地域・職域連携GLの深堀、評価指標の検討
2)地域・職域連携推進事業の実態調査、プロセスに沿った進捗管理表の作成、モデル協議会での実証
3)地域・職域の健康課題の見える化と対策につながる情報提供の在り方検討
4)小規模事業所、退職者、被扶養者などに着目した分析とアプローチ法の研究
5)以上の研究を踏まえた手引きの作成
を実施した。
結果と考察
【結果】
1)協議会の実態調査:全国の都道府県、二次医療圏の地域・職域連携推進担当者への書面調査、ワークショップ、ヒアリング等を通して、本事業の課題、協議会活動の自己評価レベル、職域へのアプローチ方法、具体的な連携状況について情報収集・整理した。庁内体制、取り組み内容の違いなどが改めて確認された。新GLを契機として担当者間で理念の確認、構成員やテーマの見直し、事務局の在り方などを検討している自治体が増えてきている状況である。
2)GLに基づく進捗チェックリスト作成:協議会運営に必要なプロセスと評価指標について、都道府県向け、二次医療圏向けの進捗チェックリストを作成した。PDCAサイクルを回しつつ、ステップアップすることを目標とした。自治体担当者から事業の企画や振り返りや関係者の役割認識に役立つと評価された。
3)小規模事業所等に着目したアプローチ:中小規模の企業に対して先駆的に健康づくり支援をしている自治体を対象にフォーカスグループインタビューを実施、体制や工夫点について聴取、推進のポイントをまとめた。
4)地域・職域の健康課題の見える化と対策につながる情報提供の在り方検討:二次医療圏協議会での活用に耐えうるよう、特定健診問診項目およびNDBレセプトデータを活用して生活習慣や健診で把握できる健康状態について二次医療圏単位で集計を行い、公表した。
5)手引き「地域・職域連携推進事業の進め方~地域特性に応じた効果的な展開のために」作成:研究成果をもとに、自治体担当者のための手引きを作成した。担当者が抱える課題に着目し、その解決策について法律や産業保健等の知識、具体的なプロセス、事例と事例からみた困難な事項に対する対応などを盛り込んだ。都道府県、二次医療圏、市区町村別に本事業の進め方を整理して示した。
【考察】
 コロナ禍の影響により、自治体訪問は困難であったが、オンラインを活用したワークショップ、ヒアリング、アンケートにより自治体の実態調査を行い、意見交換を進めることができた。
 初年度はGLの深堀と評価指標の検討、過去3年間の資料の整理の結果をもとに、進捗チェックリスト案を作成した。自治体にチェックリスト案について意見を求め、修正した。
 2年目はワークショップやヒアリング等きめ細かく実施、広く意見を聴取することができた。GLを活用して協議会の運営方針を見直し、構成員やテーマを具体的に検討しなおした自治体もあるが、事業所に関わるきっかけづくりの段階で躓いている事例も見られた。研究班で作成した進捗チェックリストは事業の整理と関係者の役割認識に役立つという意見が多かった。連携協議会の自己評価レベルを考えることで、他の事例を整理して聞くことができるなどの利点が指摘された。二次医療圏ごとのデータの可視化については、地域・職域の両者のデータが含まれるNDBの活用が有用であると考えられた。
 本事業は実施方法やテーマ、どこまで実施するのかも自治体の裁量に任されている。自治体の健康増進事業の方針、部局間での連携、地域住民・関係機関との顔の見える関係づくりの状況、担当者のスキルやモチベーション、組織全体からの理解により大きく影響を受ける。データの可視化、保険者間協力の深化、健康経営との連携により本事業の進展が可能と考えられた。
結論
 自治体に対する実態調査により地域・職域連携の在り方について課題と対策を整理し、手引き「地域・職域連携推進事業の進め方~地域特性に応じた効果的な展開のために」をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2023-07-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202109026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本公衆衛生学会、日本産業衛生学会等でのシンポジウム、講演を通じて、地域・職域連携の意義や進め方について情報提供した。
臨床的観点からの成果
進捗チェックリストや手引き、研究班の資料公開により、自治体での取り組み推進を図った。厚生労働省の地域・職域連携推進会議(令和4年3月10日)において「PDCAサイクルに基づいた 地域・職域連携推進事業の進め方」を報告した。
ガイドライン等の開発
今後の地域・職域連携推進ガイドラインの改訂に役立つ情報を収集、整理した。
その他行政的観点からの成果
厚生科学審議会 (健康日本21(第二次)推進専門委員会)において最終評価について検討中であるが、本研究を踏まえ地域・職域連携の必要性について発言した。
経済産業省健康投資WGにおいて、中小企業の健康経営を推進するために、地域・職域連携が寄与していることを研究事例を引用して紹介した。
その他のインパクト
保険者協議会、健康経営の研修、健康寿命延伸都市協議会、日本総合健診学会などの講演の中で、地域・職域連携推進事業について講演した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
講演6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
202109026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
11,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,271,218円
人件費・謝金 1,056,682円
旅費 122,840円
その他 6,299,314円
間接経費 2,250,000円
合計 11,000,054円

備考

備考
自己資金 54円

公開日・更新日

公開日
2022-12-08
更新日
-